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前身・その最弱は力を求める  作者: 藍色夏希
第2章【その最強は世界を求める】
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74.【平穏な日常にさよならを】

絶対に毎日投稿しないといけないっていうプレッシャーがない方がしっかりかける真実。今回は長く書けました。一応、興都陥落作戦開始ですよ?

目を覚ました。

シャリキアの事を考えるたびに思考が疼き、もっといい方法があったと糾弾し、心が締め付けられていたこれまでとは違う。レリィがしてくれた事が、それが、ただ話を聞いてくれただけでも、肯定してくれただけでも、嬉しかった。全身を縛っていた罪悪感や後悔といった枷が、消えて、無くなった。

後悔するんじゃない。あれは、シャリキアが示してくれた、俺の最善に最も近い道。それを、シャリキアの覚悟を蔑ろにはできない。そして、あの少女に叫んだ言葉は届いていた。助けてほしいと、しっかり、はっきりと、幸せになるために、そういってくれた。そんな簡単で、難しいことに気づけたのも、その水色の少女のおかげだった。

ーーーーー


そして、アキトを支えてくれるのはそれだけじゃない。首にかかった貴鉱石は、何より信じているというメッセージ。それがこもっている。その貴鉱石。これには、ある魔法術式が注入されている。それは、マナを実体化させて武器にする魔法。リデアの再現魔法だ。

あのなかったはずの世界で、リデアはいった。貴鉱石ならば、その魔力を注げると。

リデアは簡単に承諾し、簡単に済ませた。だが、この世界で育ったわけではないアキトは、魔力を全く持っていなかった。呼吸や食事で取り込んできた魔力をカーミフス大樹林で盛大に吐き出して、叩きつけられて戻されて、分散していた魔力をアリタルカの術によってまとめた。これにより、アキトはごく少量ではあるが魔力を装填する事が可能になった。

そして、伝えられる現実。アキトは魔力刃を二本作り出したら魔力不足で倒れるらしい。リデアからはっきりと言われて落ち込んだ。だから、爆発系の刃で闘おうとしたら、それはナイフくらいのサイズを作ったら1回でゲームオーバーらしい。

「俺が何したっていうんだ。」

戦力を確認すると、アキトは残念な耐久値の刃を1本作ることしかできないのだ。今回のイベントで強くなれると踏んでいたアキトはまた戦略を練らなければならなくなった。

興都襲撃は決定。いつ来るかは不明。魔力の痕跡から大罪囚がいる。分かっているのはそれぐらいだろうか。いや、もうひとつ。アキトが組み合わせ続けた、いや、これから組み合わせ続ける戦略の中で役に立つアミリスタという存在。あの声によって受けた印象からして、今回アキトは死なない。けれど、誰かが死ぬかも知れない。だから、それを消す。

「はぁ〜、憂鬱だ。」

憂鬱って漢字難しいよね、なんてどうでもいいことを考えて現実逃避する。あれ、憂鬱ってどんな漢字だっけ、貴重な異世界知識が!と、密かに絶望する超文系特化少年の前に、麗しい。そう、例えるなら天使のような少女が、水色の明るい髪を躍らせながら現れた。

「おはようございますっ!」

今、世界で1番幸せです、なんて言い出しそうな満面の笑みで、その少女が元気に朝の挨拶をした。アキトとこの家に住み始めてからというもの、レリィはいつも嬉しそうな表情をしている。アキトと初めて会った時。まるでヴィネカルナのようだった頃とは大違いである。

それを喜ばしく思いながら、異世界産の服のポケットをまさぐる。


昨日密かに行った、アミリスタとの緊急会議。

「レリィちゃんを安全なところに匿いたい?」

「ああ。」

興都が襲撃されるなんていう危険状況に、レリィを残しておきたくなかった。使命を背負ったこの少女達と違って、レリィはそんな義務も、力もない。せっかく脱した絶望の渦に、再び身を投じ、命を落とすなんて、許さない。許せない。アキトは、なんとしてでも、どうしてでもレリィを安全な所に置いておきたかった。

「確かに、レリィちゃんならアッキーと一緒に行くだろうね。」

「全く困った。俺なんかと危険なとこに行こうってんだ。」

「鈍感ヘタレ。」

「んだとっ!」

突然意味のわからない方向から叩きつけられた暴言に噛み付く。が、考えてみれば自分もラノベ主人公に散々言ってきたな、と。

「そんで、どうにかしたいんだ。」

少女の頭をゆっくり優しく撫でながら、解決策を問う。アミリスタはアキトの手を掴もうと伸ばしながら、飛び跳ね、思考する。

「よし、僕に任せておきなっ!」

と、メモを渡された。

盛大な啖呵をきったアミリスタに期待して、自室で見たメモの内容に絶望した。

「読めねぇええええ!」

完全に忘れていた。アキトはこちらの字が読めない。とんでもない絶望の中、ガルドからくすねた貨幣全てを使って本を買い、なんとか解読した。レリィにあげたつもりの報酬を少し貰おうかとも考えたが、あの少女なら全部返しそうな気がしたためやめて置いた。なんやかんやカフェや酒場(酒は飲んでいない。)で使い切ったガルドの残念な財産。村長が入れておくには少なすぎる金だった、と悪態をついた。

と、まぁ、そんな事があり、今に至る。

ーーーさて、この強敵、どう攻略しようか。

ーーー結界娘のメモを見ればいいじゃないか。たしか、絶対に出来る彼女を服従させよう!って奴。

ーーー馬鹿かっ!そんなんするかっ!ていうか彼女じゃねえ!

平静を装いながら内心息切れしそうなほどの声で突っ込む。この声はシリアスな異世界召喚モノの天のお告げかと思っていたのに、こういう結構どうでもいい時に出て来る。

ーーーまず、壁ドンをするんだよ!

ーーーするわけないだろ!

思わず本当に叫びそうになるアキトだったが、そんなアニメみたいなことはしない。

ーーーしょうがない。そーちゃんやっちゃえ!

と、なんだかばかっぽい、アミリスタに言われたらジャストフィットしそうなセリフをいう謎の声。

ーーー俺のシリアスを返せ。

ーーー君の朝ごはんは食べてないよ。

ーーーシリアルじゃねぇ!

もう何度目か分からないツッコミをした瞬間。一瞬て目の前を過ぎ去った青の閃光に目を奪われた。

背後から吹く風。もつれる足。そして、ドンッと、レリィを覆うように壁に倒れこんだ。あれ、これって壁ドンって奴じゃ、なんて思っている暇は無い。

「〜〜〜っ!!」

ボンッと音を立てて蒸気を吹き出し始めるレリィ。真っ赤に染まった少女の表情は、困惑と不安。そして、言い表せない幸福感に染まっていた。

「あっアキトさんっ!わ、わたし心の準備が、で、でも、その」

ーーーしまったああああ

圧倒的テンプレをかましてしまった自分の愚かさに嘆き、慌ててどこうとする。

「アキトさん、は、 その、」

まだ真っ赤に染まった顔で、呂律が回っていない。目がトロンととろけて、口元が盛大に緩んでいる。そんなことに気付く余裕などアキトにはなく、

「え、えいっ!」

背中に回った柔らかな感触に全神経を研ぎ澄ませた。

レリィが、熱い吐息と惚けた表情でアキトに抱きついていた。

「ちょ、とれ、レリィさん!?」

なにがなにやら分からぬまま、いい匂いと2度と離れたく無い柔らかく、暖かい感情がゆっくりとアキトに流れ込んで来る。思わぬ反応ととんでもない幸福感に敬語になってしまう。

「い、嫌、でしたか?」

「い、嫌なわけ、ないが、ど、どうして!?」

全くもって分からない。そんな表情でレリィを見る。アキトに抱きつく少女の表情は、これ以上ないほど赤く染まっていて、恥ずかしさと欲望がひしめき合っているようだった。儚いその表情で嫌かなんて問われたら、もうアキトを撃ち抜いたと言っても過言ではない。そのレリィの可愛さは、心を落としてきてしまったアキトでさえも心臓がはち切れると思うほど鼓動が高鳴ったといえば分かるだろうか。

ーーーやばい、このまま、離れたくない。画像保存してぇ。

回らない思考が変な方向に行き始めた時、

「な、なんて、ちょ、ちょっと驚かせただけでしゅよ?」

声は震えているし噛み噛みの言葉でそんなことを言った。いつも聞けば明らかに動揺してると分かったが、アキトの精神状態じゃそんな事が分かるはずもない。アキトのそれが偶然ということに気づいたレリィの機転?が、アキトへの好意を隠す事に成功した。

と、そんな事を(「好きって)少女は呟いた。(言えれば」)


ーーーーー

闇に闇を混ぜて、漆黒に放り投げた感じだろうか?

深い黒としか表現できない中で、何かが蠢いた。

「興都陥落作戦。いや、ミカミ・アキト討伐作戦。開始だ。」

稲妻が走り、

「さぁ、みんな楽しんでいこう。」



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