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前身・その最弱は力を求める  作者: 藍色夏希
第2章【その最強は世界を求める】
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67.【最弱少年の強がり】

「てめぇ・・・何しやがった!?」

ラグナがどれだけ必死に思考しようと、アキトの戦術を理解出来るはずがない。ラグナの力を掠め取り、ただでさえ強い力をアキトの頭脳で更に強化しているのだ。簡単には見破れない。

刃を撓む鎖に預け、軽い柄だけを振ってみせる。まるでそこに刃があるように。

「自分の能力ぐらい把握しろよ。()()()()()なんつうチートを持ってんだからよ。」

「なに・・・?」

アキトの言葉に目を見開き、驚愕に声を震わせるラグナ。預けていた力の中に、そんな能力はなかった。もちろんない。これは、アキトが顕現させることによってやっとできた戦術なんだから。

見えない剣に見せかけた剣。

ラグナの力を10としたら、今ラグナが持っているのは2、アキトが8だ。そして、たりない実戦経験を、狡猾な頭脳と壊れた心で補う。歪な戦術イかれた戦い方。そんなの承知している。あの2人のために戦おうと決めたのに、シャリキアがもらえなかったその当たり前を、アキトは与えたいと思ってしまった。だから、こうして命を張っている。イかれた戦い方でなんとか立っている。

「いくぜッ!」

預けていたのは魔法だけではない。鍛え上げられた身体能力も。

破裂する地面と景色を置き去りにして、叩きつけられる風圧のなかで必死に目を見開いて、背の魔力口から伸びる鎖を一瞥して。進む力で叩きつけた。鎖に最大の魔力を流し、灼熱に燃える鎖、雷鳴を轟かせる鎖、絶対零度の鎖、作れるだけ作って全ての力で全力で叩きつける。

「っ!!」

とっさに幾多の鎖を絡ませ、一点防御の拳で鎖の先を器用に弾く。しかし、アキトの手数の方が多い。

焔の舌が胴体を舐り、落雷が全身を蹂躙して走り、全てを凍てつかせる痛みが鋭く輝く。ラグナが展開していた鎖の防御は全て崩され、残る鎖はほんの少しの壊れかけの鎖。そして、それに向かって刃のない剣を振り下ろす。ラグナは残った鎖を張り巡らせ、アキトの見えることのない刃を弾こうと・・・しても、意味がない。

アキトは刃を転送して見えない刃に思わせているだけ。つまり、今アキトは剣に刃を転送させていない。鎖を張り巡らせたところで、無い刃が鎖に阻まれるわけがない。

すり抜けるしょぼい剣撃。されど、その剣には一瞬金色がやどる。ほんの一瞬転送した見えない刃に見せかけた剣が、真紅の血液を刃に塗った。

「ぐぅああっ」

脳髄を砕かれ、痛覚が麻痺し始める。視界が真っ赤に染まり、抜け落ちていく感覚の代わりに自分の鼓動が随分大きく聞こえる。見えるのは最弱だと思っていた男。蓋を開けてみれば小賢しい戦略と嫌らしい手で戦う策士。

嗚呼、ナツカシイ。

どうにもならない感情が、あの日、決別の日の感覚が、戻ってくる。

『お前は俺の◼️◼️◼️◼️◼️で◼️◼️◼️◼️が、◼️◼️◼️本当の』

「ホントウの兄弟ナンカジャなイ。」

ウルガから紡がれる言葉の数々が、幼い精神を打ちのめし、叩き割り、ぶち壊し、耐え難い痛みが、堪え難い苦痛が、そしてその全てを忘れるために、顕現魔法をも生み出す精神は、暴走という形で全てを忘れさせようとする。

どうしたらいい。このどうしようもない状況に精神が壊れそうに、ひび割れそうに、考えたくもない気持ちが。

「うがぁぁああああああああ!!」

膨張するように爆発的に膨れ上がる鉄塊。圧倒的有利だった。見えない刃という戦術に困惑し、ラグナを追い詰めていたはずだった。実際追い詰めていた。だから、破裂する精神の爆発が、アキトを吹き飛ばした。

「な、なにが!?」

ーーー防衛本能さ。人間のリミッターを外すために自我を飛ばしたんだ。

「自我を飛ばして・・・」

ーーー理由はそれだけじゃないと思うけどね。

「くっそ」

脳内に響く声に慣れ、会話によって情報を得る。何故かは知らないが、この声は色々な事を知っている。

「もういっそ攻略法を教えろよ!」

ーーーそれはダメだ!つまらないじゃないか。

なんだか仕草まで見えてきそうな声を無視して、迫ってきた鎖に全身を打たれる。

「ぐっあ!」

超人的な身体能力で空中回転し、着地。その動作には傷を感じさせない。黄金に輝く剣を握りしめ、細かい文様と美しい造形に目を落とした。託していた刃を転送。歪だった剣が形を成し、そこに『剣』として顕現した。顕現魔法である鎖を仕舞う。ラグナの方の2にあるのだろうか。アキトは顕現魔法と他の能力を同時に使う力を奪っていなかった。だから、顕現魔法の鎖を消し、容量を最大限に引き上げる。残した剣と能力。

「コロし、てヤトせ・・・れい・・・う、あい・・・・・き」

「あんじゃねぇか、すげえ力。」

ーーー超空間振動か、鎖を用いるラグナにとっては鎖の運用に邪魔だから使わなかったんだろうね。

「なるほど。」

使うことのないと思っていたのだろう。ラグナの力の1番奥でひっそりと眠っていた。ラグナの魔法適正。それは風。皇族の血に代々受け継がれる風の力。それが皮肉にも受け継がれた。けれど、切断するほどの風を使うファルナと違い、ラグナの風は空間を揺らす。否、爆発させる。相性最悪。けれど、今は良かった。

自我のない人間に騙し討ちなど通じない。鎖より、力がいる。

圧倒的な力が。

膝が震えている。怖いのだろうか。心が壊れていなかったらこれぐらいじゃ済まなかっただろう。

笑った。

屈することはないと。

最弱少年は、強がって笑った。

ホワイトハ○スダウン見てたら遅れました。すいません。おもろかったです。小説家の武器のペンは強いらしいです。

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