表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前身・その最弱は力を求める  作者: 藍色夏希
第2章【その最強は世界を求める】
63/252

61.【違えた魔】

「しぃっ!」

鋼の重りを叩きつける。真紅の刃を振り下ろす。輝く力で切り裂く。

それを片手で平然と受け止めて、不敵に笑うカルバラから距離をとる。

厚い皮膚と鍛え抜かれた筋肉が刃を阻み、その一瞬で滴る血液が腕に赤を引いた。

最高の力で振られた剣の力を、たった一筋の傷に収めたのだ。それがどれだけ規格外か、それがどれだけ恐ろしいか。

「死んどけやっ!」

唖然とする騎士たちに咆哮を上げ、剛腕を振り下ろす。

「ぐぼ・・・ぁ・・・」

メキメキと音がなり、凹んだ鎧から血が噴き出す。

浴びる鮮血に心地好さそうに目を細め、構えた拳を鳴らして振るう。

ただの拳撃が鎧を貫いて衝撃を与えた。そのバカな現実に歯を食いしばり、

「ちっ、厄介なことになった。」

最期の突撃をかまそうとした騎士たちが立ち竦む。それは、戦闘態勢に入っていたカルバラが、急に方向を変えて跳躍したからだ。

まだ粉塵を巻き起こすその木の小屋に飛び乗り、後ろ髪を引かれるように騎士たちを見る。やがて諦めたように闇に消えるカルバラ。

ほっと安堵する者、取り逃がしたことに歯噛みする者、痛みに顔をしかめる者、他にも様々な表情を見せる騎士たちは、戦闘の音が聞こえなくなった小屋を恐る恐る覗く。

空いた風穴から見えたのは、血まみれで倒れる2つの幼い影、そして。

「すま・・・ない。少し無茶をした。」

苦しそうに呻いたファルナが立ち上がり、片手で頭を抑えて血を吐き出した。

「大丈夫ですか!?」

「ああ。それよりラグナを・・・」

探してくれと言おうとしたファルナの口が、動くのをやめた。

アルナが孕ませたメイドは、誰だったか。

心身に傷を負ったそのメイドは、その後姿をくらまし、居場所を皇族ですら知らない。

けれど、その血筋が、形作っていた脈動が、流れていた命の結晶が、受け継がれてきた軌跡を開花させてしまった。

「兄・・・さん。」

「!?」

「僕は、本当の弟じゃないの?僕は誰なの?城から出られなかったのも。」

奴らはラグナに何を吹き込んだのか。

これまで散々縛られていた所から解放され、新しいことだらけの世界を見渡した子供に。

どれだけ辛いことを吹き込んだのか。

「落ち着けラグナ!」

叫ぶファルナの声が届いていない。

カルバラが逃げたのも頷ける。この溢れ出る魔力を見れば。

「とんでもない物を持っていたな・・・!」

「兄さん」

儚げに呟いた弟の背から、濁った紫の魔力を纏った鎖が飛び出した。

無数の鎖の先には刃も付いていて、憔悴しきったこの救助隊にどうにかできる相手ではない。

というか、相手がラグナな時点で、ファルナには戦えない。

「兄さん・・・の・・・嘘つきっ!!」

轟音が小屋を切り裂く。はち切れんばかりに溢れ出す魔力たち、さらに絡まり合う鎖たち。そして、自我を保っていないラグナ。

収束する鎖が槍となり、騎士とファルナに飛び出した。

空気を斬り、疾風すら巻き起こす鉛の力が、容赦なく彼らを蹂躙していく。

ひしゃげる鎧とへし折れる剣。その威力はカルバラの比ではない。

「くっ、それを貸せっ!」

吹き飛んだ騎士を見て、ファルナが走る。

立ち竦む騎士の剣を掴み取り、近づく鎖たちを次々と叩き落としていく。

甲高い音が鳴り響く戦場で、深手を負った子供が刃たちを叩き落としていく。

騎士たちに当たるはずだった重槍は叩き割られ、バラバラになった鎖がラグナの背へと舞い戻る。

その間に、削れ始めた鉄剣を放り投げ、騎士の槍を受け取る。

投げられた槍を掴み取った行動には、任せたという投げかけと、任せろという力が込められている。

粉塵が舞う中で槍を回し、そのまま構える。

引きしぼる筋肉と感情の荒波を抑え込み、ラグナが蠢く鎖を放出する時に備える。

「嘘つきぃっ!!!」

さっきの2倍以上数の鎖が霧を割いて飛来する。

解放する。引きしぼる鍛え抜かれた力の奔流を、それに込められた熱い激情を、解放する。

「はぁああああ!!」

床がひしゃげる。木片が飛び散る。

銀の輝きを乗せて、きらめく刃で鎖を叩き落としていく。

時には刃で断ち切って、時には持ち手をで叩き割り、受け切れない鎖を肉を抉られながら止める。

ファルナを止めるものはいない。

止めれば成るのはただの足手まとい。それだけじゃない。ファルナのこの気持ちを、誰が抑えられよう。

堕ちてしまった弟を取り戻す兄の姿を。

守りに入っていたファルナが攻める。

騎士たちに向いていたターゲットはしっかりファルナが引き受けた。攻めない手は無い。

柱に槍を投擲して突き刺す。その槍に乗って反動で跳躍。引き抜いた槍と共に天井を駆ける。

「目ぇ覚ませ!ラグナ!」

木製天井をぶち壊し、破壊の音色と重なり合う崩落と共に飛び降りる。

ラグナの背から顕現する鎖めがけて飛び出す。

顕現する鎖を壊し続ければ、魔力をなくして倒れるはずだ。

城に縛られてきた屈辱と、外を知るための刃が一体化した顕現魔法。後に明かされる名は『パーニッシュ』。

縛られてきた弟を救うために全てを貫く皇槍、与えられた名は『エトラン・レーフ』。

2つの刃が、すれ違いを繰り返す戦いで入り混じる。

別にオタクじゃない!この前テニスの大会を見に行った時、審判のゼロツーの声にピンク髪の娘を思い出したけどオタクじゃない。友達に話したら馬鹿だろと言われました。

結論、ダリ◯ラ面白い。15話最高。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ