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前身・その最弱は力を求める  作者: 藍色夏希
第2章【その最強は世界を求める】
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59.【おうさまのういじん】

「ラグナが自分から外に出たというのですか?」

「そのようです。置手紙が。」

差し出された不器用な字が殴り書きされている紙。

城の警備は有り余るほどにいる。この手紙がなくても、ラグナが自分から出たと考えるしかない。

ファルナは自身の浅はかは考えに歯噛みして、捜索方法を考える。

ファルナの物語に目を輝かせ、決まりをしっかりと守っていた。ラグナが勝手に出るわけがない。

「誰かに・・・誘導された?」

考えられるのは、ラグナをそそのかし、城から出した内通者の存在。

そんなことができるほどラグナに近かった者は、全員信頼できる騎士。裏切るわけがない。

置手紙には、ごめんなさい、出掛けてきます。と書かれている。

「カルバラ?」

「カルバラ・グリフィルトですか?」

執事が問い、ファルナが頷く。

カルバラは、一部の人間しか知らない犯罪者に仕立て上げられた人物。他の人間が知らないのは当たり前だ。

疑問符を浮かべる従者を見渡した後、執事に目配せする。

それを受けて、しばらく瞠目した後、小さく頷いてみせた。

「カルバラは、お父様が地下牢に投獄した者です。泥酔したお父様が勝手に牢に入れ、放置していた。」

そんな人物がいると知ったのは最近だが、父親の酒癖の悪さを知っているため、なかなか解放を言い出せないでいた。

しかし、カルバラが犯人かもしれないと分かれば、それはファルナの行動の鈍さが原因。

「カルバラという人物は、牢屋にいるのでは?」

もっともな意見だ。だが、そう簡単には進まない。

「残念ながら地下牢は使う者が少ないゆえ、警備が甘いのです。何者かの侵入を許し、牢が破壊されていました。」

虹の魔力と剣撃によってバラバラに砕かれた鉄格子、そこから脱走することは容易だ。

そして、今回の1番の問題であるラグナは、暇を持て余していたため、城中を歩き回っている。

無論、その途中でアルナへの復讐を目論むカルバラが、ラグナを連れ出す計画を立てていたとて不思議ではない。

「カルバラは確か、魔力印をつけられていたはずでは?」

「分かりました。その魔力を検索して場所を割り出します。ファルナ様は皇城に」

「断る。」

きっぱりと告げた言葉に、その場にいた全員が押し黙った。

子供だ。ただの子供で、少し魔法が使えるだけの子供だ。

戦闘に出たこともないただの子供の言葉に、皇の風格を見た従者たちは、言葉を発することができない。

「ラグナを、助けに行く。」

「な・・・ぁ・・・」

輝く翡翠の皇槍が、皇の怒りと共鳴して燃え上がる。

この少数精鋭が全員でかかれば、体術的にも体格的にも勝てるかもしれない。しかし、この溢れ出る覇気の前で動けるものが、はたして何人いるだろう?

「丁度良い。初陣だ。」

憤怒の双眸が睨むは、


ーーーーー


「ウルガ、と言ったか?」

「ああ。」

両手に持ったダガーの1つを放り、それをまた掴む。

平然と行なっているが、一歩間違えれば腕を切り落としてしまう危険な遊びだ。

それは、そのダガーの切れ味が強すぎるのと、その少年がまだ子供だから。

「どうして俺を助けた?」

「カルバラ・グリフィルトでしたっけ?あなたは強いでしょう?」

「・・・・・・」

問いに質問で返され、カルバラがおし黙る。

自分の格闘技の才覚は、あまり知られたくないことだ。そんなことを考えるカルバラに、ウルガがダガーの切っ先を向ける。

「アルナ・ウドガラド。あいつを、少しでも困らせてやりたかったんですよ。」

暗い瞳に浮かぶ負の感情を見て、同じ人種かとため息をつく。

アルナ・ウドガラドに恨みを持っている人間、殺意を押しとどめている人間。

カルバラは入り込んできた子供、ラグナの正体をすぐに暴き、それを露見させるために城の前に来るように約束を取り付けた。

そうすれば、自分が行かずとも好奇心に負けて街へ行くだろうと考えて。

しかし、カルバラはウルガに助けられ、牢から出てラグナを拉致することに成功した。

「あなたも同じと考えて、強い仲間になると考えた。それだけです。」

淡々と語る子供には、憎悪しか感情がないのかと思えるほどに表情に人間味がない。

「そうか。まぁ、この子供の話を聞くと、こいつは隠し子だ。だから」

「殺す。」

「はぁ?」

ダガーを手の内で回しながら、ウルガがポツリと呟いた。

殺してしまっては意味がない。

隠し子の存在を知らしめて、皇の座からアルナを引きずり下ろすのが目的なのに、殺してしまっては意味がない。

「幾ら何でも皇族の1人が死ねば、ウドガラドは打撃を受ける。だから、殺す。」

発想が飛躍しすぎている。

きっと、殺したいだけなのだろう。皇族を殺したいだけ。理由は後付け適当で、

「そういえば、魔力印はつけられてないだろうな?」

「魔力印?」

「魔力の出続ける印をつけられて、その魔力を辿って場所が割れる。ってお前まさか!?」

知らないのか、と言う前に、木製の扉がひしゃげ、粉塵を巻き上げながら大破した。

とっさに構えて飛来する木片を打ち払う。

圧倒的な威力の影には、たった1つの幼い影が。

知ってる名前が出てきたかもしれませんが、しっかり伏線回収ですよ?別に番外編にいい敵キャラ候補いるじゃんとか思ってませんよ?

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