表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前身・その最弱は力を求める  作者: 藍色夏希
第2章【その最強は世界を求める】
55/252

53.【託すことしか彼には出来ない】

世界再現魔法。漆黒の竜の轟咆哮。

ビリビリと震える空気と、それに乗って波紋を広げる魔力が平衡感覚を崩し、足元が暗く揺れている感覚がアキトを襲う。

近くの木に手をついて、溢れる嘔吐感をこらえて睥睨する。

アキトにできる事は、このどうしようもない状況で、目立たないように振る舞う事。

無駄に特攻でもすれば、リデアの正義感がこの森を滅ぼす。

だから、できるだけ影を薄くして、気配を消して、身を潜め、考える。

この森で、アワリティアを下す方法を。

瓦解する地面に、土埃を巻き上げる大質量の木々。そして、大罪囚アワリティア。

「っ。万策尽きたか。」

どれほど考えても、アキトの頭脳では導き出せない。

偶然に偶然を重ね、他人の力を使って使って使い潰して、その上でまだ運を積み重ね、偶然に覆われた状況が、あちらからアキトに問いかけてくれないと、そのお粗末な頭脳は使えない。

リデアの魔力の残滓が視界をよぎり、アワリティアを見ていたアキトがその金麗を見る。そして、逃げるように走る。

そして、その手に持っているのは、

「魔力を限界まで使って、やっと再現できる。」

世界再現魔法。皇槍エトラン・レーフ。

輝く黄金が槍を型取り、溢れる魔力がそれを覆った。

皇族に伝わる最強クラスの顕現魔法。槍ではない。もはや兵器。

そんな皇槍を、ほんの少しだが再現する。

「昔見た槍だ。グリムライガ、いや、エトラン・レーフか。面白い。」

それならば、と。漆黒の稲妻が空気を走り、切り裂かれる空間から悪魔の手が突き出てくる。

エトラン・レーフを持ったリデアが後退し、覚悟を決めるように息を吐く。

アワリティアに付き添うようにマモンが現れ、瘴気を放つ腕を掲げた。

「クリファリカ。」

漆黒の長刀がアワリティアの手中に収まり、降り注ぐ光を遮るように構えられる。

マモンの変化形態。クリファリカ。

空気中や魔法、ゲートで放出した魔力を取り込み、収束させる。そして、その魔力に応じた斬撃を繰り出す刃。

構える2人が睨み合い、動く。

リーチはほぼ同じ。

刃の長さもあるが、魔力を放出させる2つの武器は、ほぼリーチが同じ。

大地をぶち抜いて飛躍するアワリティアが、空気中のマナを喰らう。

収束するマナがクリファリカの中で荒れ狂い、やがて1つの力となる。

しかし、リデアとて何もしないわけではない。

空中は、回避が難しい戦闘領域。つまり、空の魔力を集めに飛翔したアワリティアを狙うのは、必然。

回したエトラン・レーフを振り切る。

空気を蹂躙して進む皇の斬撃が空を斬り、アワリティアへと迫る。

そこに続く刃が更に風切り音をたて、翡翠の刃を飛ばす。アワリティアへと向かう刃は4つ。

それぞれが長く、それぞれが鋭く、それぞれが速い。

当たれば致命傷は確実。

刃に切り裂かれ、速さに断ち切られ、大きさに蹂躙される。

と、ここまでの攻撃をさせるのが、アワリティアの作戦。リデアの意表をつくための策略。

クリファリカは、空の魔力を吸ったのではない。

空の魔力を吸うためと判断したリデアは、アワリティアが土の魔力を吸っている事を知らない。

だから、

「な・・・ぁ・・・」

クリファリカの軌跡に何重にも重なった土流の盾が、嘘のように斬撃を封殺した。

最高のタイミングを持って、決まったはずの刃が、相手には手に取るように分かっていた。

それは滑稽で、ひどく。



おぞましい。



真上から落下してくるクリファリカ。たとえ魔力の刃を作れなくとも、アワリティアの卓越した剣技があればその長刀は驚異になる。

今のように相手が油断していれば。

がしゃり、と。

ガラスを砕く音。正確には、ガラス瓶を砕く刃の音と、滴る水滴の落ちる音。

勢いよく粉砕されたガラス瓶がアワリティアへと飛来するが、それを知っていたかのように耐え、なんとか避けたリデアへと刃を振るう。

ふるった刃が何を吸ったか知らずに。

「あ、れ?」

そう。確実に決まった攻撃が、止められるはずのない斬撃が、続くはずのない命が続く、その状況を意のままに操る存在は、おぞましい。

だから、ここで1番おぞましい人間は、アキトだった。

戦闘中に姿を消し、戻ってきたアキトが、回復ポーションの瓶を投げつけたのだ。

残っていた回復の魔力の雫を吸って、収束する回復の刃がリデアを斬った。

リデアは、先ほどまで殺意の塊だった相手に、回復させられるという奇妙な状況に陥ったのだ。

「アキト!?」

空き瓶の投擲者の心当たりの名を呼んで、ターゲットを変更されるのを恐れて、若干遅いが口をつぐむリデア。

しかし、投げた目線の先に人影はなく、安堵の傍ら少しの不安を覚える。

アキトが無事かどうか。

それでも、アワリティアはそんな事を考えて勝てる相手ではない。

意識を切り替えめの前の敵を倒す。そのために、刃を構えた。



倒れた大木の中に入り、投げ込んだ回復ポーションの効果が出たことに安堵する。

アキトの策略がうまくハマり、リデアも全力で戦える。

あとは、リデアに任せるだけ。唯一使えた手札をきったのだから。もうアキトには何もできない。


蚊に刺されたら離れるまで吸わせると痒くないらしいですね。実践したら、最初は痒くても徐々に痒みが消えていって、ほぼなくなりました。本当だったんですね。

次の日めっちゃ腫れました。しない方がいいです。さっさと叩きましょう。

てことで、夏も頑張りましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ