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前身・その最弱は力を求める  作者: 藍色夏希
第2章【その最強は世界を求める】
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46.【信じた世界】

「は、ハルト・シャーグリン・・・!?」

平然と言われた言葉の意味が理解できずに、もう一度名前を呼ぶ。

あの大賢者と言われた男。リデアに生きることの素晴らしさを教えてくれた男、大賢者シャーグリン。

シャーグリンに子供がいたなどという記述は、無い。

というよりも、こんな辺境にシャーグリンが訪れるはずがない。そう考えて、リデアはふと気づいた。

どことなくケルトに似た少年の言う事は、本当かもしれない。

世界の謎を解明する頭脳は、この地の大魔石を解析していたのかもしれない。

「ねぇ、大賢者って知ってる?」

「俺のじーちゃんのにーちゃんは、ケルトって言う賢者だったってのは聞いたぞ?」

「っ!」

全く知らなかったケルトの素性。

兄弟がいて、その子供までいて、この村で息づいている。

この悪辣な村で、息づいている。

どんな偶然でも、ここまでくればただの不幸。続き、流れを継いできた英傑の血は、この最悪とも言える村にあってしまった。

レリィの事もあり、リデアにはこの村を救いたいという感情が、強く脈打ち始めた。

「それで、悪い村長って?」

ガルド・カーミフスが悪い村長だと言うのは分かるが、無知な幼児にまで知れ渡る悪行をしてきたのだろうか?

募る疑問を伝えると、ハルトは拳で左の手のひらを叩き、憤怒する。

「あいつは、この村を危険な目に合わせようとしてるんだ。」

「危険?」

ガルドが危険な目にあわせる。

ガルドが暴れて村を壊すとでも言うのだろうか。

どれだけ強力な武器を持っていたとて、努力によって得た力を越すことはない。

リデアなら瞬殺。

それでも、どうにもならない怒りを貯めた瞳をみれば、そんな単純な話ではないのを察せられる。

「あいつが大魔石を使って、この村を壊すんだ!」

「大魔石で、村を?」

「ああ!白い髪の2人が連れた人が言ってたもん!」

少年の言う白髪の少女を連れた人物は知らないが、この少年の言葉には、妙な説得力。いや、納得があった。

いくら虚空保管をされたとて、精神はあの世界を覚えている。

例外としてアキトの記憶は保管しなかったが、リデア達も少しの既視感を覚える。

「それにしても、大魔石で村を壊すなんて。」

大魔石を媒介にして大魔法を放つのにも、放つ側の実力がいる。

おそらくガルドには無理。

大魔石はそこまで大きいというわけではない。大魔石を上空から落として破壊するのもない。

アワリティアと繋がるところもあるが、アワリティアは大魔石をつかった戦術など使用しない。明らかにガルドの戦術。

しかし、こちらの人間であるリデアに、それ以上の考察はできない。

アキトのように先に動くことはできない。

「それで、君は?」

「大人達に話したら、そんちょーは悪いけど、村が危ないのは信じてくれなかったんだ!だから、俺だけでなんとかする!」

村の人々も、ガルドへの悪評はあれど、非現実的な話には耳を貸さなかったらしい。

それでも、1回目の世界を知っているリデアは、湧き上がっている既視感を頼りに、救える。

黒竜討伐隊で、高い授業料を払って得た心で、リデアは救うことができるかもしれない。

「ねぇ、ハルトくん、私もそれに協力させて?」

「え?信じてくれるのか?」

唖然とするハルトが、ポツリと呟いた。

てっきり笑い飛ばされると思っていたのに真面目に返されたため、動揺するハルト。

「信じるよ。信じてた気がする。とっても大事な役割を、私は任せて信じてたから。」

覚えていないけれど、リデアが過ごした時間の中で、ガルドの刃を止める作戦や、アワリティアの討伐作戦を、リデアはアキトに任せていた。

初めてあって、裏切られて、そんな相手を信じていた。

それで得た勝利を知っているから、リデアはハルトを信じれる。


ーーーーー


「皇様の性格?」

「ああ、知っておきたいんだよ。」

シャリキアを狙うラグナから身を隠すため、あえて村へと進もうと提案したアキトに、シャリキアは快く同意した。

2回目の森の道で、邂逅するはずだった皇ファルナについて聞いてみる。

「ラグナが言っていたのは、最初に相手の沸点を図るらしいです。」

「沸点を・・・図る?」

「はい。」

健康的な笑顔つきで大きく返事をするシャリキア。

沸点を図る。ようは、どれくらい言ったら怒るか計測する的な意味合いだろう。

アキトの脳内にはそれくらいしか浮かばない。

それならば、とても面白いことになりそうだ。

あった瞬間罵倒し尽くされ、その後実はドッキリでした、という状況だ。そんなことしてよくここまで生きてこれたなウドガラド皇。

ファルナのその後のしっかりとした対応を知らないアキトは、変わった性格に苦笑する。

「沸点を測る、か。」

いつか訪れるかもしれない邂逅の時のために、アキトは小さくその特徴を刻みつける。

滑稽な皇を見てみたいというくだらない理由のために。


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