45.【清き賢者の物語】
説明回みたいな感じです。短いです。最近、ストーリーと忙しさが相まって短いのが増えてます。すいません。
ケルト・シャーグリン。
剣1つなら最強と言われた剣士とその冒険をして、この世界の叡智を後世に語り継ごうとした人物。
魔法適正が高すぎて、精霊王からそれ以外の才能を奪われた賢者シャーグリンは、魔法だけでなく、高速思考を可能にする頭脳も持っていた。
そんな賢者に最強の剣士が付いている。最早、大罪囚ですらやる気の失せるコンビに、他国も手を出せず、順調にウドガラドは建国されていった。
ある意味建国に貢献していた彼らの目的は、世界に隠された魔法、技術、禁術など、語られることのなかったものを探すことだ。
遠い昔、陰謀や戦争、災害などで消え失せたものを後世へ語り継ぎ、豊かにしたいと考えていた。
内乱で滅んだ希少種族の存在や、その生き残り。世界を作った英雄と剣の存在否定。危険と判断されて封じられた禁術、魔術。数えていけばきりがないほど、彼らの活躍でウドガラド、いや、世界は発展してきた。
そんな彼らでも、たどり着けなかった謎がある。
その謎は、精霊大戦について。
何十年かに1回。時には数年に1回。完全にランダムな周期と場所で、国を1人で滅ぼせるような力が闘っている。
遠目に目撃したものや、戦闘の傷跡から、だいたいの検討はついていた。
12個の能力が、入り乱れていたのだ。
戦闘で被害を受けた大地には、12個の能力が猛威を振るい、これを人は精霊大戦と呼んだ。
ただそれだけなら妙な事で片付いた。
それで片付かなかったのには、理由があった。
まず、何百年か前にも、同じようなことが起こっていたのだ。
ランダムな周期と場所で発生し、世界を震え上がらせた大戦が。
そして、毎回12人が闘っているわけではないのだ。
時には10人、時には2人。そこさえランダムな大戦は、原因究明が難しい。
そして、1番おかしい点。それは、数十年前の被害を最後に、ある1人の力が全くなくなったのだ。
これまでは12人が闘っていたが、突然11人になってしまった。
1人が死んでしまった可能性もあったが、戦闘跡にそんな様子はなかった。
世界中の研究家を悩ませ続ける精霊大戦は、その名称の理由さえ分かっておらず、いまもまだ続いている。
なぜなら、もうその謎に1番近かった人物がいないから。
賢者と剣士の2人は、次代国王アルナ・ウドガラドに捕縛され、バルバロスに投獄された。
シャーグリンは途中で連れ去られ、黒竜討伐隊へと組み込まれた。疲弊した状態で。
その直後、アルナの死によって皇位はファルナへと変わった。
ファルナの懸命な捜索により、スノウスト平原からシャーグリンと思われる死体が見つかった。
あっけない最後だったという。
黒竜の漆黒の炎に焼かれ、降り注ぐ結晶の刃にバラバラにされた。
シャーグリンだと分かった理由は、その特徴的な緑の服と、手首に巻かれた天上の星紋。これだけだった。
アルナの力不足により、天上の星紋を外せなかったのだ。
そうして息絶えたシャーグリンの相方。バルバロスへ投獄された剣士の話は、またいつか。