43.【いつか知った運命】
すいません。2周目という事でどうしても話が短くなりました!ループものを面白く書ける人はすごいですね。
暗い。その女の瞳は、暗い。
見つめられればゾッとするほどの暗い感情を宿した女は、黒いローブから顔を覗かせ小さく呟いた。
「この大魔石は、いつか陥没を引き起こすぞ?」
「まだ使えるのなら、それでいい。」
男の言うことには、危うさが感じられる。
後先考えずに行動するその性格により、父親を意図も容易く殺し、村長へと成り上がり、この交渉にも応じている。
この村には、今問題は無い。
あるとすれば、大罪囚アワリティアに魔石の交渉を求められていることだろうか。
なんにせよ、自分が全てを支配した世界で、反抗する者などいない。
そう。ガルド・カーミフスが治めるこの村に、問題なんて1つもない。
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「まぁいい。どうやらファルナは私の魔力を読み取ったらしい。竜伐の、この魔力は確か、リデアと言ったか?」
「!?まさか、竜伐がこの村に来ると?」
積み上げてきた悪の計画。それが、竜伐によって成されないかもしれない、そんな考えが脳をよぎった。
ガルドが考えていた作戦が、策略が、潰されるかもしれない。
大魔石の存在を悟られない事が前提の作戦だ、黒竜のことで大魔石に敏感な竜伐は、招き入れるにはいささか難儀な相手だった。
「この樹林に、グレンの存在を確認した。」
「生きていたのか!?」
「ああ。」
突然の言葉に目を剥き、同時に未知への恐怖が湧き上がって来る。
このタイミングでその話をしたのなら、作戦に大きく関わってくるだろう。
それは、絶対に避けたいことだった。
「どうやら奴は、私を狙っているらしい。」
「お前をか?ってことはつまり・・・」
「ああ、大規模な戦闘が起こるだろうな。妨害する者がいなければ、明日にでも。」
妨害する者。
グレンをどこかに縛り付け、アワリティアとの邂逅を遅らせる人物。そんな都合のいいように役割を遂行する人間は、いるだろうか?
今、この時間軸には、決してそんな人物は存在しない。前はいたかもしれないけれど。
「そこで、おそらく私はこの樹林を深く傷つける。次の日に陥没するくらいに。だから、その時に面倒な村を切り捨てて、魔石を割かつ。」
「分かった。」
陥没からガルドを助け、その時に大魔石の交渉をするのだろう。
大魔石の半分を失ってしまうが、面倒な住民を捨てられるいいチャンスだ。
利点の多さにニヤリと笑い、ガルドが思考する。それは、夢であること。大魔石を売り払い、莫大な財産を得る。
さらに、興都に屋敷を設け生活する。
ガルドが何を投げ打ってでも成功させたい理想だ。
相場の高い大魔石は半分でも十分金になるし、魔力の補充も出来る。
「もしかするとリデアが計画を破綻させるかもしれん。」
「あの小娘が?大罪囚と大陥没があるのだぞ?」
「そうだな。しかし、私は知っている気がするんだ。リデアでなくても、何者かに状況がひっくり返される世界を、知っている気がするんだ。」
頭の中で流れ続ける既視感。
アワリティアは知っている。アキトに敗北した世界を。しかし、時を遡り薄れてしまった記憶では、アキトのことなど思い出せない。
あるのはほんの少しのデジャブ、既視感。そこからわかることなどない。
「なんだ・・・それは。」
真っ向からガルドが意見を否定しないのは、単純に怖さもある。それでも、心の中にあるのだ。
憎悪を顕現させた世界で敗北した結果を、どこかでガルドは知っているのだ。
「とりあえず、作戦はその通りだ。」
「ああ。頼んだ。」
違和感を脳の端へ押しのけ、会議を終わらせる。
心に妙なしこりがある事を、2人とも気付いている。