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前身・その最弱は力を求める  作者: 藍色夏希
第2章【その最強は世界を求める】
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42.【カーミフス大樹林の執着】


「すみません。はしたないところを見せました。」


顔をわずかに赤らめて恥じるシャリキア。

自分の理想を語れる性格は良い。

それでも、シャリキアは羞恥を覚えたらしい。


「いいさ。言霊って言って、言っとけばいいみたいな言葉があるしな。」


いろいろ適当につなぎ合わせたうろ覚えの知識を使ってシャリキアをなだめ、頭を撫でる。

それにこそばゆそうな表情をするシャリキア。しかし、直後にはその暖かさに頰を綻ばせた。

撫でられたことだって、なかったかもしれない。

劣悪な環境下でシャリキアを撫でてくれるものなど、いなかったかもしれない。


「それじゃあ作戦を立てよう。」

「は、はい。」


倒木に座るシャリキア。しかし、中の木が腐りもはや樹皮だけになっていた木は、ボロボロと崩れ落ち、シャリキアの姿を隠した。


「お、おい!大丈夫か?」


盛大に木を破壊したシャリキアに安否の声をかけ、倒木に向かって歩いていく。

樹皮の間から覗く白い髪が、美しい。


「シャリキア。その髪は元から白いのか?」


木片だらけのシャリキアに手を伸ばし、気になっていた髪色について尋ねる。

日本では、拷問され続けたり、極限状態で生死の狭間を行き来したり、栄養をしっかりと取れていない主人公が白髪になるというのは、よくあることだった。

アキトには本当にそうなるかなど分からないが、心配ではある。


「この髪ですか?元からこの色ですよ?」

「そうか。」


ほっと息をつくアキトを不思議そうにシャリキアが見つめる。

どうやら、過激な環境下に置かれていたからではなさそうだ。

手を取ったシャリキアが立ち上がり、アキトが座っていた木に腰掛ける。その横にアキトが座り作戦を練ろうと考える。

アキトのついたハッタリが本当だと信じて、シャリキアが目を輝かせている。


「あー、その言いにくいんだが、俺は実は能力を持ってない月で・・・」

「?そうなんですか?」

「え?ああ。」


落胆や軽蔑。そんな感情を全く含まずに聞くシャリキアに、思わずアキトも聞き返してしまった。

生き残るための作戦を考えるのだ、隠し事は良くないと思い打ち明けたが、多少の悪感情を受けるかと思っていた。


「私が酷い事を言うと思ったんですか?」

「あ、いや」


なんとなく気まずくなり、頭をかく。


「あんなに優しい事を言ってくれたあなたに、そんな事できません。」

「・・・・・・そ、そうか。」

「はい。」


アキトとしては落胆されると思っていたが、逆に褒められ照れくさくなる。

けれど、アキトにその点抜かりはない。何故なら、アキトに能力がないと疑われてもいいように、能力を持っていない人間でもできる力にしたのだ。能力の有無は関係ない。


「とりあえずの作戦は、お前をここから逃す事だな。」


ラグナ。シャリキアを狙っているものがいる以上、この森にいるメリットはない。

しかし、シャリキアだけを森から逃すわけにはいかない。

かといって、カーミフス村のあの状況を放っておいてアキトは森を出られない。

シャリキアには申し訳ないが、あの村の問題を解決してレリィを助ける事は、シャリキアの命と同じくらいの価値がある。


「ラグナを倒すってのは、無手の俺にはできそうか?」

「素手であの木を粉砕する人と、格闘技で勝てるなら出来ると思います。」

「オーケー無理なのは分かった。」


馬鹿みたいな茶番で確認できた事は、結局また試練に四方を囲まれたと言う事だ。

アワリティア達を倒した時の状況プラスシャリキアを助けると言う目標が追加されたのだ、難易度は上がっている。

無論、その分アキトが強くなったわけではない。

またもや突破口が見えない。


「どうしたものか。」


ーーーリデアにシャリキアをまかせる?いや、守ってもらうにしても逃してもらうにしてもアワリティア達への対抗戦力がない。


結局アキトはこの惨状に巻き込まれるのだ。何者かに仕組まれてるかのように。


「あの剣士からリデアを守って、ガルドを倒してレリィを保護。そのあとアワリティアを討伐。その間、シャリキアを守り通し、リデアと俺でラグナを倒す。」


現実的に考えてできない。

グレンに勝てる戦闘力をアキトは持っていないし、リデアなら勝てるかもしれない。

無手のアキトなら弱いガルドのバラサイカでさえも脅威だ。

その状況でレリィを保護してリデアを仲間にする交渉術も持ち合わせていない。

アワリティア討伐でさえも、困難。

ラグナ討伐は夢のまた夢だ。


「あの・・・。ラグナを倒す方法が、あるかもです。」

「ほ、本当か!?」


思わぬ救いの手にシャリキアを見ると、


「私の中に、ラグナは力を封じています。だから、その力をあなたに流すんです。」

「で、でも」


そうすれば、シャリキアは傷を負ってしまう。

アキトに力を与えて傷を負わすくらいなら、まだ作戦を立てる方がマシだ。


「私から力を抜き取る瞬間、ラグナを動揺させて鍵を外すんです。そして、あなたに力を渡す。強い魔力を持っていたら、私から力を取れると思います。」


シャリキアの中に秘められたラグナの力は、ラグナ以外に渡せないようにロックがかかっている。

だが、力を抜き取る際にラグナが精神を乱せば、ロックの合間を抜けてアキトがシャリキアから力を抜き出せる。


「だめだ。俺には強い魔力がないし、お前を傷つける選択肢は取れない。」

「そう・・・ですか。」


カーミフス大樹林は、なかなかアキトを離してはくれない。

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