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前身・その最弱は力を求める  作者: 藍色夏希
第2章【その最強は世界を求める】
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37.【その声はとても気怠げに】

すみません、予約投稿ミスって昨日投稿できてませんでした。すいません。


「・・・こ、興都強襲作戦?」


生唾を飲み込むウルガの声が、やけに大きく響いた。

アキトの放ったとんでもない一言が沈黙を誘っていた事もあり、ウルガが感じている怖気がファルナにはしっかりと伝わった。

ウドガラド家によって作られた都市が力を広げ、周辺国家に出没した魔獣や大罪囚を撃破、退散させ、ウドガラド家を国と認めさせた。

武力によって証明された国に宣戦布告をするなど、狂っているとしか言えない。

しかし、


「大罪囚、いや、その協力者は、狂ってるんだろうな。」

「ウルガ彼はそう言っているが?」


真剣な眼差しでウルガを見て、重い息を吐くファルナ。

沈鬱な空気が蔓延し、窓の外で賑わっている町にいつ戦火が及ぶか分からない不安に目を伏せる。

ファルナに問われたウルガは、小さく唸り頷く。


「興都を襲撃するなんて計画をたてる人間は、狂っているとしか思えません。むしろ、アキトさんの話は信憑性が高い。」

「・・・。」

「興都強襲は、あり得ますよ。」


ウルガでさえも、アキトの仮説に賛同し、いよいよ雲行きが怪しくなってくる。

ウドガラド興国の最大の都市が、今、この時期に襲われるかもしれない。アキトが()()()()()このタイミングで。

それでも、ファルナは誰よりも早く立ち直り、


「ならば、対策をしようじゃないか。」

「ひとついいですか?」

「?」


言うファルナの言葉にアキトが重ねた。


「対策の中で、1回だけ俺の指令を通してほしい。」


頭を下げ、視線を下げ、ファルナに懇願する。

行う対策には、どんなものがある?

兵士の士気と武器の強化。城壁の増設。貴族の協力を取り付ける。

どれも決定打になるものがない。しかし、1人だけ、たった1人だけ、いるじゃないか。追い詰められた袋小路の状況で、あの声を聞ける人物が。あの声を利用出来る人物が。


「頭を上げなよ。君ならまともな対策もできるかもしれない。」


確実にあると決まったわけではないが、起こり得る興都襲撃を予測したのはアキトだ。アワリティア討伐という功績が乗り、頭脳的な戦力としてならアキトは期待できる。

ーーー教えてくれよ◾️◾️王。できる対策を。備えられる刃を。

カーミフス大樹林で散々語りかけ、勝利へ導いたと言っても過言ではないあの声。

願うアキトに答える。


ーーー結界の娘だ。


心底嫌そうに、いや、声という形でなく、どちらかというと脳に直接浸透している感覚のこの声から感情が読み取れるのもおかしいが、カーミフスの時と違い、その声は気怠げにアキトに告げる。

それを告げた事で何か面倒臭い事が起こるかのように。


「それじゃあ早速。アミリスタを防衛作戦に加えてほしい。俺の近くに。」

「?。結界術士のアミリスタを君の近くに?つまり、動くという事か?」

「・・・。」


確認をするファルナがアキトに問い返し、不安そうなウルガがリデアを見た。

カーミフスで死闘を共にしたリデアなら、アキトの事がわかるだろうという意図だ。実際リデアは思いついたようにあっ、と声を漏らした。

そう、それはリデアとアキトで不意打ちを仕掛けた時。レリィをあらかじめ配置して奇襲失敗を知っているかのように立ち回ったアキト。

あの時は保険で片付けられた。しかし、完全に断定したアキトの言葉に、リデアはそれを思い出した。隠せない驚愕と共に。


「わかりました。いいですね?」

「ああ。」


リデアの反応に確証を見出し、アキトの作戦をウルガが承認。ファルナもそれに続いた。

嘘やハッタリを自分じゃ考えられないような少女だ、リデアの反応は効果絶大。作戦の全容を聞かないと承認しないと言われれば、断定的な情報しか持ち合わせていないアキトに話す術は無い。

内心で安堵するアキトは、気付く。

あの謎の声が聞こえた時、言った事は本当に起こった。

カーミフスにグレンが現れ、絶対に倒す事はなく、奇襲は失敗。その後の戦闘でも地上で決着がつく事はなかった。

絶対にどちらかが没するのは大魔石の地下空間だと、そうしっかり告げていた。

つまり、あの声がしっかりアミリスタを指名した。アミリスタを使わないといけない状況がくる。

つまり、興都襲撃作戦は必ず起こる。

情報の出所がないためしっかりとは言えないが、ファルナ達に絶対くるという事を伝えないといけない。それ以前に、その大襲撃からレリィ達を守り抜き、生き残らなければならない。

アキトには、この興都に助けなければならない少女がいるのにも関わらず、大襲撃が起こる。

歯を食いしばり、状況に歯噛みする。


「・・・・・・。」


脳の中で流れるあの少女の声。助けてほしいと言った少女の声。謝罪をするかわいそうな声。

なにもかもが脳内で流れる。


「よろしくお願いします。アキトさん。」

「こちらこそ。」


起こらなかった物語の後悔は、ずっとアキトの心の中で、精神を苛み続ける。

「君はその子を頼ればいいのに。話せば楽になる事もあるしね。」


精霊王が、気怠げに云う。

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