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前身・その最弱は力を求める  作者: 藍色夏希
第2章【その最強は世界を求める】
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36.【ノールックアナルシス】


「私も出てきていいですかね。」

「すまない少し時間をかけすぎたよ。」

「初めまして。興皇側近のウルガと申します。」


青い髪を切り揃えた美丈夫の長身が、礼儀正しく自己紹介。

この国の上層部にはイケメンしかいないのか、と心のなかで悪態をつき、ウルガの目元に隈があるのを発見する。


「あの・・・さっきのはどういう・・・」


遠慮がちなレリィが小さく手をあげて、笑みを交換していたアキトとファルナを交互に見る。

張り詰めた空気でアキトを侮辱され、憤怒に任せ刃を突き立てた事は忘れがたい。


「アキトさんを試験したんですよ。アワリティア討伐に、真っ向から戦う人は成功しない。それを知っていたから、アキトさんがどのような人間なのかを知りたかったんです。」


レリィにはよく分からない。しかし、アワリティアやアケディアのような化け物達が居るこの世界で、ここまで国を作り上げた者に、一般人の考えは通用しないだろう。

特定の能力など無い。だからと言って強力な武器を持っているわけでは無い。

使ったのはリデアからの借り物と狡猾な頭脳だけ、アキトがアワリティアを倒したのは、その弱さのせいでもある。


「さて、話を戻すよ。報酬の件だけど、興都の魔術士達には言っておくから、安心してもらってくれ。」

「・・・いいのか。」

「形式的にはレリィさんの報酬に君のを上乗せする形だね。」


結局アキトは報酬がもらえる事になり、レリィの世話になる事もなくなった。

アキトはその事を喜んでいるが、せっかく掴み取った同居の権利を、レリィは簡単には手放さない。どう説得しようか考えるレリィを置いて、話は進んで行く。


「皇城の中にある預金庫からいつでも取り出せるようにしておくけど、いいかい?」


了承を取ろうとレリィを見るアキトだが、真剣に思考している彼女には聞こえていないと、断念。

もらえる大金を自分たちで保管するのは、場所的にも守備力的にも危険すぎる。充分な戦闘能力を誇るファルナ達に預けていれば、とられる心配もないだろう。


「ああ、よろしくお願いします。」


話がひと段落ついたところで、アキトは問う。

ウルガにあった時から気になっていた事。


「興都で、何か起こっているんですか?」


世界の揺れる感覚と、空気を叩く大爆音の咆哮が鳴り響いた事は記憶に新しい。

それに関係しているかは分からないが、ウルガの忙しそうな口調と目元の隈がそれを強く主張していた気がしたのだ。

アキトの憶測を聞いて、ファルナとウルガが顔を見合わせる。


「君なら話しても良さそうだ。」

「そうですね、あなたなら何か分かるかもしれない。」

「ファルナ様、アキトは」


疑問に応えようとしたファルナ達にリデアが口を挟んだ。

アキトの消耗を心配して、新たな事件に巻き込ませたくないのだろう。リデアの優しさをありがたく思いつつ、アキトはそれでも聞きたい。


「彼が疲弊しているのは知っている。しかし、」

「俺は自分たちがいる町が危険に晒されるのは、嫌だよ。」


ファルナの言葉を継いで、アキトがリデアの瞳を見つめる。

自分たちとは言ったものの、戦う力が無いレリィが住まう町に危険が及ぶのが、アキトはただただ嫌だった。

その事に敏感になっていたからこそ、興都の雰囲気に気付いたわけだが、


「魔獣の脱走が多発している。」

「それだけでは無いですよね。」

「アケディアが脱走した時期と、魔獣の脱走の時期が一致している。しかも、アケディアの好色刃と思われる魔力を感知した。」

「・・・・・・。」


最早答えを言っているのと同じだ。

カーミフスでもあった。証拠がありすぎて、重なりすぎて、答えを生み出している。

脱走したアケディアが、どういうわけか興都の魔獣を脱走させている。

わざわざ脱走したのに、自分から捕まるかもしれない行動をとるだろうか。大罪囚の中では弱い部類に入るアケディアが、そんな事をするだろうか。


「パトロンがいるな。」

「なに?」


アケディアがそんな行動をする理由が分からない。出来るわけが分からない。つまり、出来る手段がある。

出来る、人員が、出来る、仲間がいる。


「アケディアと誰かが、協力してなんかをしているかもしれない。」

「大罪囚と・・・協力?」


異世界人のアキトならできた突飛な発想に、ウルガが首を捻った。

大罪囚ほどの実力があるものが協力者など作る必要も、理由も分からないからだ。


「大罪囚をもってしても困難な作戦。何か思いつきますか?」


常識に疎いアキトには、あまり分からないが、大罪囚でも行う事が難しい行動は、あるはずだ。

そのアキトの予想は正解だ。


「バルバロスの解放、精霊大戦の終結、あまり身近なものでは無いが、こんなところか。」


大罪囚を封じているバルバロスの解放。充分な警備と天上の星紋による行動制限があるため、難しいだろう。

各地で度々起こる巨大な戦闘の傷跡、それが似ている事から、同じもの達が各地で争っていると考えられている精霊大戦の終結。

争っているもの達全員を下して、勝者とならなければいけない。大罪囚でも難しそうだ。

しかし、もっと身近にもあるだろう。


「魔獣達の脱走と結びつけるんだ。そう、例えば。」


考えていた事を言ってみる。それが、的を得ているとも知らずに。


「興都強襲作戦とか。」

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