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前身・その最弱は力を求める  作者: 藍色夏希
第2章【その最強は世界を求める】
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30.【憤怒の刃】


「それじゃあカガミ。俺やアケディアに協力を求める意味を教えてもらおうか。」

「意味?」

「何をやらかす気なんだと聞いている。この戦力で。」


ラグナが両手で指し示す。

好色の刃で怠惰な死槍を振るうアケディアと、その対応悪魔ベルフェゴール。

瞳の深淵に闇を覗かせる影の住人。カガミ・アキト。

そして、大罪囚と並ぶほどの実力を秘めたウドガラド・ラグナ。その従者のシャリキア。

過剰すぎる戦力が、今この場に集まっている。見つかれば、ここは国など関係の無い大討伐が行われるだろう。


「ああ、戦力なら、君達だけじゃ無い。」

「は?」


何を言っている。

世界の厄災とまで呼ばれる集団に、これ以上何を入れるのかと。どこまで秩序を狂わせるのかと。

声も出ないラグナに、カガミが小さく息をはく。


「もう1人の戦力は、彼だよ。」


魔力が瞬きそれに刃が重なった。入り乱れる極光が爆発音を響かせ、怒気に全身を震わせる男。


「怒りは、美しい。錆びた刃を磨ぎすまし、屈強な力を生み出す。だから、怒りは、憤怒は、憤慨は、美しい。まるで刃のように。美しい。憤怒は、美しい。」


唖然とする。

ラグナでは決して敵わない。その天上の相手が、いとも簡単に顕現した。


「憤怒の大罪囚。イラ・ダルカと、対応悪魔サタン。怒りの刃で敵を切る彼と、神に反逆した堕天使。」


大罪囚が2人、その2人を従えさせるほどの力を持つカガミ、そして、ラグナ。


「おい、俺は協力するなんて言ってねぇ。」


カガミに刃を受け止められ、次の算段を立てていたイラが声をあげた。

カガミであっても、言葉1つでこの暴君を従えさせる事は出来ない。憤怒の大罪囚は、おとなしく捕まっている傲慢に比べると、気性が荒すぎる。それを踏まえれば、大罪囚で1番危険なのはイラだ。


「スペルビアにも断られたし、君に拒否権はない。」

「あぁ?」


剣呑な雰囲気が、立ち込め始めた。

強い強制力を感じるカガミの言葉にも、イラは耳を貸さない。


「そうだな・・・俺が勝ったら従ってもらう。君が勝ったら俺を好きにしろ。ってのはどうだ?」

「っは、おもしれぇ」


決闘を提案するカガミに、イラが速攻で乗っかった。その判断に、ラグナは耳を疑う。

おかしい。この実力を測れない相手に簡単に勝負を決めるなど、実力と勇気がなければ到底出来ない。できるとしてもそれはただの馬鹿だ。


「バーサーク。」


紅く血濡れた鮮やかな剣が、顕現した。

サタンの変化形態。そう、あの男の持つ顕現魔法に酷似した、悪魔の武器。それを、軽く握りカガミに突き出す。

殺意の乗った攻撃宣言に苦笑して、カガミも口を動かす。


「顕現魔法『その最強は世界を求める』」


顕現したのは、弱々しい魔力光を放つ小さい魔方陣のみ。微弱な顕現魔法に鼻を鳴らし、イラが地面を軽く蹴る。

爆炎が、吹き荒れた。叩きつけられる暴風と、それに乗って飛んでくる瓦礫。


「死ねぇああああああ!!」


バチリと魔力が瞬いて、輝く刃が紅を増す。その刃を片手で担ぎ、力の限り振り下ろす。

ボコリとくぐもった爆音が溢れ、一帯の地面が消えた。否、押し潰された。

重力に耐えきれずに潰れた地面がクレーターを作ったが、目的のカガミの死体は作れていない。


「屈縮。」


屈縮術の膂力で吹き飛ぶカガミ。そのまま空中で向きを変え、拳を振り上げた。

靴底に魔方陣が敷かれ、爆炎によりカガミが加速する。空気を斬り、風を受け、弾丸のように加速する。


「何をぉ!!」


バーサークを構える隙もなく、カガミが迫り拳に重ねられた魔方陣を振り下ろす。

カッと瞬いた魔方陣が破壊の波動をもたらし、真上からの大重力がイラを押し潰す。破潰が迫りくる中でイラが笑った。

放った重力の反動で、カガミが落下を止めた。背に抱えた魔方陣が再び煌めき、爆炎の連鎖が続きカガミの肢体を押す。

今度はカガミの拳がイラを捉える。

触れる感触がすぐさま溢れる破壊の魔力に掻き消され、大地を削りながらイラが落下してしていく。


「死烈!」


バーサークを振り上げ、頭上の敵に紅い鮮血の刃が焔を纏って駆け上がる。

たった1つの斬撃が大穴を削り、空を紅く染め上げた。しかし、それはカガミが死烈を避けたという事だ。

カガミの有している能力は、検討がつかない。

爆発を操るのなら、火力で押し切るはずだが、重力の大瀑布を引き起こす魔法を使えるはずがない。

だからと言って魔力をみても、使っているのは顕現魔法だけ。イラには弱点が見つけられない。


「考えてる暇ぁねぇなっ!!」


白熱した地面を叩き潰し、浮いた瓦礫をバーサークでかちあげる。空気を斬る音すら置き去りに、カガミに死の岩塊が迫る。

イラの脳裏に驚愕し、絶望するカガミの顔がよぎる。きっと今カガミはそんな顔をしている。

想像に口角を歪め、


「な・・・!?」


カガミの魔方陣から打ち出される瞬光が、カガミの笑うその顔が、


「おもしれぇ!!」


イラの闘志に火をつけた。

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