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前身・その最弱は力を求める  作者: 藍色夏希
第3章【その血族は呪いに抗う】
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247.【時時】

脈打つ心臓の鼓動が、血液に乗って、骨の髄からの振動によって、己の荒々しい呼吸によって。そして、なにより、目の前の少女の名前と、自分の理解によって、爆音で脳内に轟いた。

召喚者。

自分をそんな風に思ったことはなかった。何故か?自分だけの事例で、わざわざカテゴリを分ける必要なんて感じていなかったから。

この世界にいるという召喚者について、知らなさすぎたから。アキトは、自分に縁のない召喚者を知らない。だからこそ、この顔も名前も知らなかった少女の発言に、殴られたのでは、と錯覚するほどの衝撃を受けている。


「時間がない。ついてきて。」


驚きに硬直するアキトを視界の端へと追いやり、都合がいいとでも言うようにそう告げる。

未だに喉の乾きが収まらず、その硬直姿勢を崩さないアキトを、アイリスフィニカが心配そうに覗き込む。それに大丈夫という視線を込めて歩き出す。

視線の先、ムクロは先の曲がり角でアキトたちの方を向いて立っている。

そこにアキトたちが追いつけば、その白髪を翻して前進を始める。


アキトの脳内で蠢く疑問の数々は、その多さによって口から漏れてることすら許されず、だからと言って落ち着いているわけでもない。

こつり、こつりと。アキトの脳に入ってくる情報の数は増えていき、頭痛が増す。

そのまま、ただ歩くだけの時間が過ぎると思われた。しかし、そを壊したのは、この状況を作り出した本人、ムクロであった。


「そこまで緊張しなくても、ここでは試練は起こらない。」

「え?」

「貴方はまだ、本当の世界でこの試練を突破できていない。だから、この世界で試練を見せてもらわなくてもいい。だから、この世界はただの牢獄。」


変わらない闇の中語られる言葉。同時に、アキトの疑問も変わることはない。


「え・・・と、つまりは?」

「貴方達を、バルバロスに返す。」

「・・・!本当か!?」

「嘘をつく意味がない。なにより、私は嘘と争いが嫌い。」

「そ、そうか。」


思わず声をあげて喜び混じりの確認をしたが、そのクールフェイスは変わらずに現実を叩きつける。その現実主義は、きっと期待も予想もない。ただ、その事実のみを伝える。そんなものなのだろう。だが、今だけは、この世界の脱出を決行することができるという事実を、絶対的な確信として伝えてくれるわけであって、ありがたさしかない。


その後、少しの時間を歩くと。


「これを。」

「?」


ひらけた円形の部屋で、ムクロが振り返る。そして、アキトになにかを手渡す。

暗闇では視認しにくいが、キラリと輝くそれには、微かな冷たさがある。まるで、金属のようである。


「まて、これって!?」

「銃。それ以外になにがある?」


アキトの手の上で鎮座していたのは、銃だった。

そこに銃があるという現実は変わることはなく。そして、その銃をアキトが受け取ったという事実も変わらない。

ほんの少し前はただの学生だったアキトが、銃なんてものを触る機会があるはずもなく、その重みに戦々恐々しながらムクロの顔を見る。平常運転のクールビューティ。それによって少し落ち着きを取り戻す。


「期待に添えないようで残念だけど、それはただの銃でもないし、1発しか撃てない。」


ただの銃ではない。その言葉は、アキトの厨二心をとてつもなくくすぐる上に、1発しか撃つことのできないという制限付きの力、それは、無条件に強いという証拠なのではないだろうか?期待どころか期待以上の兵器。

それを自覚してから視線を落とすと、やっと形状を把握できるくらいには目が慣れていた。

デザートイーグルに似ている形状。しかし、良くフィクションに入り乱れる銀ではなく、黒に塗られたフォルム。近未来感のあるレッドラインもあしらわれてはいない、無骨な銃。


「それは、金が。そして、これは、黒が残したもの。」


銃に見入っていたアキトに、ムクロが再びなにかを差し出す。

それは、短刀ほどのサイズの剣だった。長さ的には、明らかに短刀。しかし、形状は両手剣を模している。そして、金に彩られている。

そして、刃の根元には魔方陣が数個。縦に並んでいる。合致しない点もあるが、それはまるで。


「あの、金の剣?」


迷宮上層。図書戦宮に消えて行った剣。あの都市に眠っていた、幾年もの時を超えて受け継がれてきた、剣。それに酷似していた。


「忘れないように。その道具の効果は・・・」


アキトに耳打ちされる言葉。ムクロの口の動きと、アキトの表情の動きが連動する。それは、驚き。


「開くゲートの広さは15cm。どう使うかは、貴方次第。」


そんなムクロとアキトの会話。アイリスフィニカ達にはなに1つ理解することのできない話。しかし、アキトのその表情には、突破口を見つけたかのような、ずる賢そうな笑み。


「ありがとう。色々聞きたいことはあるけど、時間がないって言ってたよな?」

「あと数分。」

「わかった。それじゃ、聞きたいことはもう一回来た時に聞くことにする。」

「もう一回来た時?」


まるでバカを見るような目で、ムクロがアキトを射抜く。

それは、ムクロが今この瞬間までの時間の中で一番の感情の起伏で、何故だか勝ったような気になる。


「ああ。今度は俺1人で。また呼んでくれよ。」

「・・・物好き?ここにもう一度来たいなんて言った人間は、貴方が初めて。」

「そうか。でも、貴重な同郷の人間だし、もっと話したいからよ。頼めるか?」

「・・・考えて・・・おく」

「そうか。」


淡い光が、アキト達を包み始める。きっとそれが、時間制限なのだろう。


「最後に少しだけ。貴方をこの世界に誘った奴について。」

「お前じゃないのか?」

「違う。」


レイヴン・レイクロス。イヴンタァレ。数々の人間に、魔獣に、化け物に形作られるこの世界に、誰がアキト達を呼んだ?


「奴の名前は、・・・・・・エゴロスフィニカ。」


魔王城が難攻不落ってる小説が近くのTSUTAYAに売ってない。アクシデント・エンペラーです。許せねえよなぁ?最近は、貯金をする時に推しになにかを買ってあげてるという想定で貯金してます。頑張ります。以上、アクシデント・エンペラーでした。

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