246.【召喚者】
堅牢。己の指先を阻むその存在に、そっと触れれば。鉄の冷たさがダイレクトに伝わってくる。
まさか、ここまで自分が視界を狭めていたとは思わなかった。とてもではないが、目の前の不安と美貌によって忘れていたとなれば、許されない。
そして、依然無言を貫く白髪の少女は、長いポニーテールを揺らしてしゃがみこむ。そして、そっと牢屋を形作る鉄格子に触れる。さすれば、指先の硬い感触はそっと消えていき、アキトたちのいる牢屋を部屋へと塗り替えた。
「私の名前は白。」
少女は小さくそう言った。
声に感情がこもっていない。とても、平坦な声。しかし、透き通るような美声は暗闇に反響し、それでいて響き渡るような音色。
感情を露わにする声ではない。むしろ、感情を、情欲を、露わにさせられる声。とでもいうべきか。
「あなたは?」
「!」
一瞬、その美貌と美声に我を忘れるも、警戒全開の臨戦態勢にはいる。幸いも、アイリスフィニカにはただ咄嗟の質問に驚いただけと取られたらしい。特にお咎めはなかった。感謝。
そして、すぐに声を吐く。
「ミカミ・アキト・・・」
「アイリスフィニカだ。」
「ら、ライラ・・・です!」
三者三様。声色態度戦闘力、全てにおいて違う彼らではあるが、全員がその少女、ムクロに名前を明かす。
すると、ムクロは視線を上にあげ、何かを考えるように瞳を閉じた。アキトと同じくらいの身長の彼女には、なぜか年上、という印象を受ける。
クールビューティというか、落ち着き払ったお姉さん感というか。そんなムクロの思考は、そのまま額縁に飾っておきたいほどに美しく、もはや神話的ですらある。そんな姿に見惚れていたアキトたちに、完成された絵は瞳を開き、額縁を叩き壊した。
「ミカミ・アキト。そう、貴方が。」
そして、ムクロはアキトの名前を復唱した。それは、なにかを懐かしむような、アキトを通じて違うものを見ているかのような。つまりは、過去を見ていた。
「・・・お前は、誰・・・いや、何者なんだ・・・?」
どう問うのが正解か。分からないながらも問いかける。依然表情の読み取れない少女は、白い髪を翻してアキトの眼前に顔を近づける。
「っ!!」
突然近付けられた美貌に、慄きそうになるも、鉄仮面は幸いに働いているようで、すこし肩を揺らす程度で済んだ。
なんの意図があるのか、緊張に震えながらムクロを見つめ返せば、感情の読み取れない双眸が、まっすぐにアキトの両目を射抜く。ただそれを認識するだけで心臓が跳ね、動悸が早まる。
冷や汗が背筋を一筋流れ落ちる頃。ムクロがやっと口を開いた。
「分からない?私の顔を見て。」
「?」
無機質な声で問われれば、ムクロの顔の距離がぐっと縮まる。しかし、アイリスフィニカがそっとアキトの背中を引っ張ることによってプラスマイナスゼロ。エマージェーシーフィニカである。
そんな馬鹿なことを考えていても、その表情の読めない顔に対する評価が上がり続けるだけで、ムクロの思想はやはり読み取れない。
「私が、説明不足だった。・・・霞代白。私の、本当の名前。」
少しうな垂れたように見えたムクロ。その垣間見えた感情に感想を抱く前に、そんな衝撃すらも忘れそうになってしまうほどの『それ』が、アキトを射抜いた。そう、それは、絶対魔力都市でも味わった、あの感覚だ。己を形作った世界の、己を写した世界の、この世界にかすかに残っているそれらの残滓を、その鈍い嗅覚が捉えた時の、ぶん殴られたような衝撃、鼓動。
アイリスフィニカは、何故漢字を知っていた?その問いは、いまでもまだ確定で分かっていることは少ない。では、この少女の問題はどうだ?
至って簡単だ。何故なら。
「お前、その名前・・・!」
分かり易すぎる。
カスミシロ・ムクロ。
「どうして、召喚者が自分だけだと思った?」
彼女は、召喚者だった。
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タラチオさんの『走れ』が好きすぎる。アクシデント・エンペラーです。
Mr.FanTastiCがエロゲの歌を歌ってるのを最近知りました。エロゲしててあのレベルのカッコいい歌流れたら、最高すぎか。
でも、1番気になるのは、そのエロゲにてもみぃできる貧乳がいるかですね。以上、アクシデント・エンペラーでした。
もう一本いけたらいきます。