表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前身・その最弱は力を求める  作者: 藍色夏希
第3章【その血族は呪いに抗う】
241/252

237.【孤独の速さ】


ーーーアキト!?なんでここにいやがる!?


視界の端に捉えた少年が、その速さと美しさに目を奪われている間、マクレアドはその瞳を見開いた。

アキトの様な最弱は、この世界の一般人よりも弱い。そんな無力な少年が、この剣撃乱れる中で生き残れるはずがない。何をしにきたのか?そんな問いと困惑が、マクレアドの動きを鈍らせる。

そして、それを見逃すイヴではない。迸る雷撃が刀身を走り、半透明な刃に溶けるように揺らめきを増やす。それに照らされる表情は、影に塗れて酷く鮮烈。しかし、美しい。

トルトゥニス・プレクラウムが、放たれた。


剣尖の音すら聞こえない。切り裂かれた空気の音すら、その雷撃の前では遅い。そんな剣撃が、マクレアドの鼻先を掠めて背後に消える。刹那、現れたとてつもない空気圧と轟音は、いとも容易くマクレアドの後ろの建物を叩き壊し、大きな瓦礫へとリフォームした。


ーーーなんで逃げやがらねえ?お前は、そんな強さなんざ、持っちゃあいねえのに!


驚愕に囚われた一瞬。そこを突くイヴのトルトゥニス・プレクラウムは回避した。針に糸を通しながら全力疾走をして、アスレチックを踏破するレベルの業を優に超える攻防。放たれるイヴの奥義に、差し出されたのは巨大な瓦礫。

幸いにも、イヴはアキトを認識していない。この戦闘に集中してくれている。だからこそ、こちらからも、アキトへとコミュニケーションが取れない。


触れる、ブレる、振れる、ユラリユラリと舞い、鋭い一撃を連ねるイヴは、さながら舞い姫。身に纏うドレスが、そのイメージをさらに際立たせる。

大きく振り切った後、次の攻撃に移る瞬き半分ほどの時間。叩き上げてきた完全なる体術で、その中距離を一気に詰める。握られずに五指を突き立てるような構えは、威力的に強さが感じられない。しかし、イヴの瞳が静かに広げられ、ゾッとするほどの闘気が、一瞬で沸き立つ。


緋色(ひいろ)ッ!」


マクレアドの手中に、ほぼゼロ距離で撃ち込まれたレールガンが着弾。迸る雷撃を伴った爆発が2人を覆い隠し、次の瞬間にマクレアドがそれを抜けて吹き飛ぶ。勢いを殺すこともできぬまま空を走り、地面へと打ち付けられながらなんとかその動きを静止させる。

そして、さらなる追撃を仕掛けようと腕を伸ばしたイヴと、殺意に塗れた視線を交換。

距離は遠い。並大抵の攻撃は届かない。


「くそったれが」


そう、並大抵の攻撃なら。

どこからともなく放射線状を描いて飛来するナイフが、ちょうどマクレアドの前に落下を始める。そして、初めて、マクレアドがその拳の形を変えた。人差し指と中指を立て、それ以外の指を握り込んだ。そして、音を、雷を置き去りにした孤独な速さの化身が、ナイフを指先二本で挟み込む。

それはさながら、銃弾のようであった。発砲音は大きく筋肉の軋む、撓む、バネのような音。そして、とてつもない回転で持って推進するナイフに切り裂かれる空気、瓦礫、砂塵の数々。

イヴの緋色をかき消して、ナイフは一瞬で彼女の眼前に現れる。


雷の女王。すなわち、そのとてつもない速さを司る、最高峰。速さというカテゴリの中では、右にも、左にも、前にも、そもそも後ろにすら人はいない。はずだったのだ。

こんな速さなど、あるはずがない。


「驕るなよメス・・・目障りだ。」


迸る緋色の雷撃を伴いながら、ナイフはイヴの側頭部をかすめる。溢れ出した赤たちは、雷だけではなかった。

左手の握力がやばい。アクシデント・エンペラーです。多分左手だけで年齢検査的な事やったら89歳。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ