236.【輪廻に囚われる】
イヴンタァレの顕現魔法、『閃光の万能機』は、装飾された双剣の刃を奪い去ったものと表現できる。黒く染まった刀身は、金髪と緋色の雷が混ざり合うイヴの外見に綺麗に溶け込み、力だけでない美しさまでも手中に収める。
そんな化け物の武器は、簡単に言えば双剣の刃の部分が好きな形へと変化する、というユニークウェポンだ。さらには刀身はとてつもない魔力結晶へと姿を変えるため、切れ味、硬度ともに高い。薄い刃を少しだけ雷の魔力に戻してやると、己の緋色の魔力と混ざり合って神速の斬撃となる。
それが、トルトゥニス・プレクラウム。
「っ!!」
破裂する。
水を入れた風船を針で突いたように、桁違いの針がとてつもない強さの風船を突いた。流れ落ちる水は、血液である。
古今東西の最強と名高い者たち。
ジオ・グレン。アド・ドレフ。リア・イルターン。レノ・シギル。その中で、唯一命というものを失っているのが、アド・ドレフ。簡略化されていない名前を言うのなら、マクレアド・ラムドレフィ。屈縮術中最強の攻撃力を誇る、マクレアド流屈縮術の生みの親だ。
そんな最強の一角に、何度も同じ技が通用するはずがない。
マクレアドは見続けている。既に何回も、何十回も、何千回も。この輪廻に誘われた、悲しき世界で。だから、たとえそのトルトゥニス・プレクラウムの速度が目で追えずとも。
ーーー避けることは容易い。
破裂したのは、イヴの右肩だった。
「ふむ。少し腕を上げたか?戦闘狂。余は嬉しい、満足じゃ。」
「・・・」
「そんな貴様に、勝てたらな!」
イヴの体が緋色の閃光へと姿を変える。その速度は、雷狼の黄金の雷の速度とは比べ物にならない。
なぜ、今まで使うことができなかったか。それは、ひとえに、イヴが警戒していたというところが大きい。雷への生体変化は、文字通り体を変質させている。吸血鬼の血煙化と大した違いはない。
つまり、マクレアドが、雷に姿を変えたイヴを潰せば、自身を潰されたことと変わらない。速度が速くなるためには、そんなリスクも背負わなくてはならない。
しかし、既に冷静な判断など、イヴにはない。
これが、血湧き肉躍る戦場だから。対する相手が、待ち焦がれた、好敵手だから。
「っ!」
視認どころか気配すら感じることのできなかった雷が、マクレアドの背後で瓦礫を空へと羽ばたかせる。轟音を響かせて空へと旅立った瓦礫たちは、翼をもがれた天使のように落下。マクレアドへと追撃する。それらを全て叩き払い、やっと。
マクレアドは、脇腹を貫かれていることに気がついた。
内臓ごとえぐり取られているほどのとてつもない損壊ではだい。致命傷とは程遠い。そんな、大きくはない傷。それを見て、マクレアドが戦慄したのは、その速さ。
ーーー前よりも、速え。
そんなマクレアドの不利を後押しするように、何かの気配を察知する。
最弱の人類が、その戦闘を唖然とした表情で見つめていた。
口の中めちゃめちゃ怪我した。アクシデント・エンペラーです。アサシンズプライドの原作が面白すぎて過呼吸なオタクです。よろしくお願いします。