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前身・その最弱は力を求める  作者: 藍色夏希
第3章【その血族は呪いに抗う】
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227.【いぎょう】

少女のドレスが風に舞う。

空中で身を翻し、ドレスが風に叩かれ激しく揺れる。


少し先に通る一本道の大通りで、その少女の空中飛行を目の当たりにしたのなら、たとえ彼女の力を知っていようと、誰もがその光景に息を呑むはずだ。


降下し始めるアンナの動きは、清流のように流れるドレスと合わさり、天から落ちてくる天使のようにみえる。しかし、その緩やかな降下は、次第に勢いを増していき、天使の緩やかな現界から、獲物に目をつけた悪魔の鉄槌へと姿を変える。


追われていることすら知らないであろう間抜けな背中に向けて、アンナの牙が音を切り裂き光る。


「さぁ、餌の時間ですわよ。」


驚くほど静かに、音がなくなってしまったかのような静寂で、沈黙で、少女は着地した。

ただの1つの傷すらつかず、ただの1つの足音すらたてず、音という概念すらも、アンナの前では無くなったような気がした。

ただの、一点を残して。


「ごああああぁぁぉああ!!??」


突然の出来事。

たった1つの音すらたてずに己の背後、遥か中空に躍り出た幼女が、どこから出てきたのか、何かの力で足を切り裂いたのだ。

バターのように美しい断面を、惜しげもなくさらしながら、それを彩る血の中で、烈火の痛みに断末魔をあげる。

そんな男の背後で、血の嵐に巻き込まれないように距離を取って幼女がひとり。


「あたくし、武器は持たない主義ですのよ。」


痛みが脳に焼き付き、堪えがたい激痛に溺れる男は、場違いなほどに冷静なアンナを一瞥し、その瞳の冷たさに硬直する。


己を刻んだ忌々しい武器はアンナの腕になく、鋭い痛みを産み出した何かの正体がわからない。そんな奇妙な状況で、男の耳に何かの音が流れ込む。

空耳か?と疑うも、その音は徐々に大きさを増していき、


「ぇ・・・?」


右耳を触った硬い感触に、痛覚を忘れて疑問符を浮かべた。

硬い、硬い。何かの甲殻類のような、なにかの節足動物のような。まるで、触覚のような。


「ムカデ、知っていますか?」

「ぇ・・・あ?」

「魔獣あれど、悪魔あれど、あたくし達の世界のなかで、唯一の存在。それが、ムカデですの。」


酷く楽しそうに、先ほどまでの暗い瞳が、嘘だったかのように。アンナの瞳が輝き出す。


魔獣が蔓延るこの世界で、悪魔の跋扈する外界で、生物しかり、生者しかり、それを超越した何かしかり。魔獣のような特殊性、悪魔のような悪辣さ、そんな化け物揃いの種の中で、ただの生物であるムカデが、唯一成し遂げたこと。

唯一と言えること。


「誰も、成し遂げることの出来ない。世界史で唯一、」


キキキという、鳴き声が聞こえる。


「毒牙をその身に宿した存在ですの。」


元来、生物の定型となりうる物の変質は、負荷、重責、のしかかる試練によって起こりうる。その中で、己の足を毒牙へと変質させるまでの進化は、ムカデ以外に例はない。


「彼らの異形の姿は、あたくしたちにも、他の何者にもなし得ない、とてつもない進化の成果。」


世界史で最小の変質。しかし、その異形には秘められている。世界史最大の進化が。


「彼らの進化は偉業。まさしく、偉業を成した異形なのですの。」

「は?」

「ねぇ、もう、見えていますわよね?」


カタカタと震え出す男。震える歯の音が、くぐもった音が響く。


「あああああ!!!」


それこそ、アンナが最強の長と呼ばれる由縁であり、タッグとして恐れられる───である。

男子バレー、勝ちましたね。テレビの前で大熱狂してました。アクシデント・エンペラーです。

最近は、猫アレルギーさんの曲にはまってます。neverが1番好きです。是非是非聞いてみてください。以上、アクシデント・エンペラーでした。

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