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前身・その最弱は力を求める  作者: 藍色夏希
第3章【その血族は呪いに抗う】
227/252

224.【戦神に縋ろうと】

お待たせしました。

微かな寝息を立てて眠るライラを腕に抱えて、マクレアドの待つアイリスフィニカの元へと歩みを進める。

葛藤があっただろう。恐怖が、不安が、罪悪感が、なにもかもに蝕まれた中で、少しでもそれが解消できたのだとしたら、アキトにとっては何よりも嬉しい。

ただ、それでも。まだ、気付けない。己の消耗を、精神の磨耗を、気付けない。


ーーーーー


「すまん、ありがとうマクレアド。」

「いいさいいさ。だがよぉ、こいつはちっと、まずいんじゃないか?」


鋭い瞳が、鋭い視線が、そのアイリスフィニカの腕を見る。()()()()場所を見る。

マクレアドの力は、アキトがその目で確認している。幾多の犠牲を生み出した雷狼の牙を、ただの一度も視界に収める事なく、たった一度の打撃で撃ち壊してみせた。

そんな彼だからこそ、吸血鬼という希少な種族の異変にすら気付けたのだろう。


「そうだな。」


痛みが胸を走る。絞り出して、捻り出して、かすれた息で答えた言葉は、マクレアドに聞こえていたとしても、風に掻き消されるような声。

やっと、やっと。


ーーー俺、悲しんでる?


駄目だ。鉄仮面をつけないと、強くなるための道を、切り開き続けないと。そんな自責の念が脳内を反芻されるも、身を焦がす悲しみ、それだけではない、抑えきれない何かが、胸を内から締め付けていく。

その痛々しい姿から、アイリスフィニカの元から、視線を背ける。

理解が追いついてしまったからこそ、目を背けてしまう。鉄仮面を外してしまったからこそ。


しかし、そんなアキトを許さないように、マクレアドが言う。


「再生しない。」


ハッと。全身を、殴りつけられたような衝撃が駆け巡る。知っていただろうと、やけに冷静な自分が罵倒してくる。だから必死に見ないようにしていたんだろう、と。掠れて消えそうな自我が摑みかかる。


アイリスフィニカは吸血鬼である。それも、2000年前から続く純正吸血鬼の家系であり、血操術ですらもその手中に屈服させている、いわば吸血鬼の王族。そんな彼女の再生能力は、とてつもなく速い。

まるで時間が巻き戻ったかのように元どおりになる体を、アキトも見てきた。そんな少女の腕は、叩き切られたまま、ただの一片も動こうとしない。たった少しの動きすらも、教えてくれない。


「ひとつ前の戦いで、再生力を使いすぎた。」


声をひねり出す。一緒にあふれそうな感情の濁流を抑え込みながらも、なんとか伝えきる。

先日、誘われたばかりのアキトたちを襲った刺客、いや守護者とでも呼ぶべきだろうか。その男、レイヴンの事は。

そこで少女は一度、細切れどころではなく、雫ほどにまで斬り刻まれている。結果的に再生できようと、その力を欠損した状態の少女には、現在の再生は不可能だ。


「再生力が戻れば、まだ、どうにか・・・ッ!」

「無理だ。ってことは、お前さんが1番に分かってるよな。」


あくまでも優しく、マクレアドはアキトの言葉を否定する。

再生力が完全に回復する頃には、すでに傷口はふさがり、もうそこに腕があったということすら忘れられ、再生の範疇にない生成は、行われることがない。


「アイリスの腕は、もう・・・」


求め続けても叶わない。捨てられるもの全て捨てて、しまえるものを全部しまって、贄として、糧として、戦神に力を縋っても。足りない。圧倒的に。そう教えてくれる。ご丁寧に。アイリスフィニカを巻き込んで。

握りこぶしから血が滴った。


瞳を震わせたアイリスフィニカが目を覚ます。


アキトを見て安心したような笑みを漏らした。


ーーー本当に、そういうところだ。


近々本屋さんで大量に本を買いました。

『ダンまち』とか『ベルまま』とか『徒然チルドレン』とか。ですが、そんな華やかな中で何故か『終末のワルキューレ』も新刊を買いました。佐々木小次郎かっこよすぎ、やばい。そんだけです。

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