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前身・その最弱は力を求める  作者: 藍色夏希
第3章【その血族は呪いに抗う】
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217.【雷撃の猛襲】

アイリスフィニカを包み込む輝きが、より一層強さを増し、女王の気配に狼が小さく唸る。

それは、絶対的上位にいる存在に睥睨されたことによる、本能的な恐怖だった。初めての感覚、初めての恐怖、初めての硬直。


アイリスフィニカの片足が、紅い輝きでもって狼の顔面を蹴り抜いた。


悲痛の咆哮が世界に轟き、唾液を撒き散らしながら狼の巨躯が高速で宙をかける。やがてそれが建物へと激突。煙と大音量の破壊音を撒き散らしながら建物の中へ消えていく。

『アント・ヴェンリ』によって生み出されたブーツの膂力。それは、普段の彼女の力を優に越し、視認困難な蹴りを叩き込むに至る。


バチバチと迸る電流が煙の間から漏れ、アイリスフィニカへと高速で死を運ぶ。1つや2つではない。到底数えることなどできないであろう数の幾何学的な雷の刃が、完全へと迫り、紅い輝きに蹂躙される。

たった一度の上段蹴りが、軌跡に紅い輝きをちりばめる殴打として全ての迸る雷撃を殺す。

胸に突き刺さる『アント・ヴェンリ』の輝きは、まだ残っている。戦闘継続時間は、まだ余裕がある。


電撃が小さな粒子となって落ちる中を、晴れた煙から出てきた狼が睨んでいた。


『アント・ヴェンリ』によって生み出されたブーツは、圧倒的な膂力を持っているが、総合的に攻撃へと力を突き詰めている。速さだけでいえば、まだ狼側に軍配があがるだろう。

だとするならば、攻撃こそ最大の防御。それを、実践するしかない。


搔き消えるアイリスフィニカの残像が、紅い軌跡を伴って狼へと突貫。少女がいた場所には、血液のような波動が波を作り、衝撃波を可視化させていた。

アイリスフィニカの殺意を受けた狼が吠える。全身から迸る雷が地面を這い、アイリスフィニカへと圧倒的な力を叩き込む。しかし、少女の紅の輝きは、その暴力を許さない。

身を翻して雷を避け、眼前まで迫る力に己の全ての力を叩き込み、蹴り潰された雷が粒子となって世界に溶ける。


「遅い、」


例え雷のような力でも、本物の雷ほどの速さも、力もない。それほどに強い力なら、ここまでノータイムに撃つことはできないだろう。

それを裏付けるように、雷たちの乱舞が更にアイリスフィニカへと飛来する。

ブーツの力で大きく飛翔、眼下をすり抜ける雷。そして、避けることのできない空中を狙う雷撃。しかし、数が少ない。

アイリスフィニカの蹴りが迸る雷の輝きを叩き割り、落下。着地の勢いそのままに、アイリスフィニカが弾丸のように狼へと迫る。

既に、狼に打つ手はなかった。


割れた咆哮が響き渡り、アイリスフィニカの力に蹴り上げられた狼が、とてつもない速さで打ち上げられる。


徐々に小さくなる狼へと体を向けて。小さく踏み込んだアイリスフィニカが、地面に沈む。ブーツの圧倒的な攻撃力は、アイリスフィニカを狼の元へと即行で誘った。

無防備な胴体にかかと落としを叩き込む。ほとんど時間をおかずに地面へとめり込む狼。そして、そんな狼の残した輝きが、アイリスフィニカの全身を迸る。


「がああぁぁ!!」


全身を嬲る雷の傷み。体内に流された数億の針が、肌を突き破って出てくるような、多すぎる痛みの根源。そのとてつもなく長い激痛の連鎖は、たった一度では済まない。何重にも張り巡らされた雷の連載が、再び痛覚と涙腺に爆弾を放り込む。


脳内を駆け巡る『痛い』の言葉。それを一片も残さずに搔き消す、『好き』の言葉。


「負けられない・・・!」


『アント・ヴェンリ』の輝きが先ほどよりも少なくなっていた。着々と限界時間が迫ってくる。それまでに、狼を倒さなくてはならない。

狼を叩き落としたのは、大きく開けた広場。多少暴れても問題ないはずだ。


速く、ただ速く。いまこうして空中にとどまっている時間の無駄を嘆くように、焦るように、ただただ速さを求める。速く、速く、速く。速く、駆けなければならない。その狼を屠るため、その少年を、守るため。


ーーー速く!!!


ブーツの底から血が溢れ出す。いや、血と似た何か。それは確かに、血のような色をしていた。それは、『アント・ヴェンリ』からアイリスフィニカに送られていた、光だった。放出の勢いは増し、生み出された力がアイリスフィニカを強く押す。

ジェットエンジンの如き圧倒的な力。アイリスフィニカのさらなる蹴りが、狼を貫く。

地面を走る亀裂が徐々に広がり、隆起しだすそれらが土埃とともに爆散。


「!?どこに・・・!」


確かに狼を貫いた己の足を見ると、小さな肉塊を踏みしめているだけだった。

己を雷のように変異させて電光石火で駆け抜ける。アイリスフィニカに肉を貫かれた瞬間に、なんとかそれを発動。アイリスフィニカに踏みつけられていた所以外は無事に避難したというところだろう。


『アント・ヴェンリ』に宿る輝きは、先ほどのジェットで目に見えて少なくなっていた。エネルギー供給源がなくなってしまえば、ブーツが動かなくなる。


迸る電撃が、アイリスフィニカの右腕を貫いた。


「うぐっ!!」


ごっそりと抉られた腕から血液が流れだし、思わぬ痛みに嗚咽を漏らしながら片膝をつく。

再び、魂が吠える。



『めゐろ』さんが生放送で『灯火の命題』を歌っていて狂うほど喜んだアクシデントエンペラーです。

最近は、スマホに入れたイラストアプリで絵を描いています。いつか小説に載せたいな〜と思う今日この頃です。てか、アブソリュート・デュオ面白すぎんか。

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