201.【絶対魔力都市】
そびえ立つ防壁に、それほどの高さはなく、圧迫感もそれほど感じることはなかった。ひとえにその建造技術の高さもあるのだろうが、こんな二階建ての家ほどの高さの城壁では、中々全てを守りきるのは難しいのではないだろうか?
「どうされました?」
「っ!!」
穏やかな声が、アキトの警戒心を一気にマックスまで引き上げた。
屈縮術を発動させながらその声の主に焦点を合わせ、引きしぼる筋肉が実行可能を告げる。もし成功するならば、アキトはその男の前に一瞬と少しで移動できる。
「旅人さん、屈縮術はタメの長さが人それぞれ。その事は、ご存知で?」
そんな過剰反応と捉えられてもなんら不思議ではないアキトの行動に、その金髪の老人は表情を一切変えない。代わりに出てきたのは、アキトの屈縮術発動を明らかに知っている発言。なんら関係性のないように思えるが、これは脅迫。
屈縮術のタメ、リロードは、本当に人それぞれ。アキトとアイリスフィニカも、そしてその男も、誰であろうと。つまり、そもそものスペックにデバフが付いていると言っても過言ではないアキトが、この男の屈縮術発動に時間で勝てるか。
答えは否だ。既に全身の筋肉をリロード完了状態にしていてもおかしくない。
両足にしか屈縮術を用いることのできないアキトには、効果のありすぎる脅迫だった。
「すまない、この世界に人がいるのに驚いてな・・・」
「・・・あぁ、そういう。そうだな、旅人さん。この街は、人含めて『技術』なんだ。」
ーーーーー
中央にそびえ立つ豪奢な塔。盛大に施された装飾は、さぞ建造するときに建築家たちの活力を削り続けただろう。そんな悲しい彼らの頑張りの成果は、今こうしてアキトたちの目を奪っている。
「あれが、この街の技術の核となる場所。そして、魔力量最大の場所、か。」
そう言ってコップに注がれた薄茶色の飲み物を喉に流し込むアキト。
それは、先ほど出会った男に聞いた事の確認であり、信じがたいこの都市のシステムの要を見た感想だった。
色々な説明を聞いて入ることができたが、この街、外からの来客は珍しくないらしく、そこまで偏見や注目はされなかった。
技術しか保管されない世界で、ここまで大きく街を繁栄させているのは珍しいのだろう。他の技術人間の出入りが激しいらしい。
「それに、絶対魔力都市か・・・」
「魔力がお金の代わり、アキトに優しくない街だな。」
「うっせ。」
この街の信じがたいシステム。現在不在の王が定めた、この街の絶対的ルール。そもそも他の街との関わりのない、隔絶されたこの街の特性にあったシステムだ。しかし、彼の口ぶりでは、王は良心的な人物であるらしく、それぞれの魔力量に応じた日刻み配給があるらしい。
正直、それぞれの魔力量が差が開きすぎないようにする為の措置なため、そもそも魔力量の多いもの達にとってはないに等しいものらしい。給料もそのように管理されている為、普通とあまり変わらないと言っても差し支えない。体でいつでも生成できる点については、金とは違うが。
「俺は市民じゃないから魔力供給もないし・・・きつ。」
そんなことをぼやきながら、大罪囚序列第2位の幼女は、とんでもない魔力量で豪遊するのだった。
なんとか復活しました。お待たせしてすみません。
それと、総合的な作者名をアクシデント・エンペラーに変えました。(ダサいとか言わないで)
理由としては、小説の作者名も伏線にすることが多かったので、総合的な名前を決めようとしたときにこれにしました。
簡単に言えば、現実の作者をアクシデント・エンペラー、それぞれの小説の作者名は伏線みたいな感じです。
これまでのあとがきで、作者ですって名乗るのは誰やねんって感じだったので、やっとその作者に名前がついた感じでした。以上、アクシデント・エンペラーでした。