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前身・その最弱は力を求める  作者: 藍色夏希
第3章【その血族は呪いに抗う】
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189.【アイリスフィニカの悪戯】

明るく輝き出す空。まだ完全とまではいかないが、おおよそ今の時間帯は朝と呼んでいいものだろう。

薄暗さの残るその世界の中で、アイリスフィニカがそっと目を覚ます。すでに消された焚き火と、燃えて黒く変わった木。

そして、自分の横で幸せそうに眠る少年。


「・・・っ!!??」


咄嗟に叫びそうになった口を間一髪で塞ぎ、ふぅと息を漏らす。

なんという不意打ち、とんでもない一撃。もしや夜這い?なんて想像をしたが、アキトに限ってそれはないなとその可能性を切り捨てるアイリスフィニカ。

いい評価なのだがヘタレ具合もしっかりと把握されている。


「ん・・・アキト・・・・・・起きて?」


恥ずかしさを抑えながら言うも、昨晩ほとんど眠っていないアキトに届くはずもなく、そっと肩を揺らしてみても反応はない。


「ちょっとくらいなら・・・・・・いい・・・よね?」


自分でも頰が赤くなっているのを自覚しながら、アイリスフィニカがそっと距離を詰める。目の前にある少年の唇にそっと触れ、さらに赤面する。ボッ、とオーバーヒートしたものの、アイリスフィニカの欲望もとい、可愛い願い事は尽きず、アキトにも見習ってもらいたいほどの積極性で、額を合わせたり、じっと見つめたり。

普段眠りの浅いアキトなら、そこで目ざとく起きてから飼い始める頃だが、282との雑談で疲れているアキトにはそんな余裕はなく、ギリギリまで睡眠を貫き通すと言う気概だ。

と、乙女チックなことをしているアイリスフィニカを感じ取ったのか、アキトがそっと手を動かす。


「っ!!あ、アキト、な・・・なにして・・・!?」


抱きしめられたアイリスフィニカが、抵抗しようとアキトの腕を掴む。吸血鬼の腕力をもってすれば、アキトの腕をへし折るくらいなんや難しいことではない。しかし、ふと思う。


「ちょっと・・・いい、かも・・・」


普段抱きしめられたりしたら、恥ずかしさでそれどころではなくなるが、幸いにもアキトは夢の中、羞恥心が無くなることはないが、この状況を噛み締めることはできる。

恥ずかしさに震えながらも、アイリスフィニカはそっと目を閉じた。


ーーーーー


「夢の中・・・不思議な感じだな。」


ーーーそうだね、君たちは夢じゃ意識が朦朧としているようだし、新鮮な体験じゃないかな?


虹色に輝く世界。どこになにがあり、端があるのかすらも分からない。無限に続くような、そこで終わっているかのような。そんな、不思議な世界。


ーーー昨日、君には月と説明したね?


「ああ、でも、俺の知ってる月じゃないんだろ?」


ーーーうん。君ももっているだろう?それを。


相変わらず脳内に響く声だが、不思議と分かる。その声は、言っている。


「月・・・俺の、肩書き?」


ある異能力を授かったものに与えられる称号、肩書き。しかし、何故だかアキトは能力を授からず、肩書きだけを授かってしまった。周りからしてみれば、月という能力者。ようは厄介な人間だ。狙われるのは明らか。

結局、とてつもなく理不尽なものである。


ーーー月の肩書きを持つ、ある人間の力。『全ての技術を永久保存する。』


「そこに、俺たちは迷い込んだのか?」


ーーーうん、そうだよ。エゴロスフィニカ、あの吸血鬼の子の、兄によってね。


ふっと湧き上がった怒りは、鉄仮面でも抑えるのに苦労する。



バドミントンラケットのガットが切れました、作者です。出費が…

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