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前身・その最弱は力を求める  作者: 藍色夏希
第3章【その血族は呪いに抗う】
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177.【レイという技術】


「確かに、我らはあなた方の実力を見誤っていたのです。」

「・・・お前は。」


世界が撓む。正確には、アキトの視界の大部分を占める薄灰色のビル群。その一部が、こし出されて幾多もの糸へと変わり、それらがさらに束ねられ、1つの歪な肉体を生み出す。

現在ライラを狩っているはずであろう人物。人なのかは怪しいところではあるが、2つの肉体が存在している時点で、それらの思考は馬鹿らしいと停止するだろう。

そう、ここにいるはずのない男。


「レイ・・・。我らの名前であり、あなた方を狩る、狩人の名前なのです。」

「狩人?」

「ようこそ、我らの収束体『狩人の宝石箱』へ。」


レイの背後に佇んでいたビル群の一部。アイリスフィニカが全く同じだと言った硬度のものたち全てが、その表面を波のように撓ませながらブレる。


「アイリス!」

「うん!」


アキトたちを囲むように射出される巨大な骨弾たちが繋がり合い、1つの輪となる。それらから伸びる細い糸。それが繋がる先は、レイの人差し指である。

輪を形作る全ての骨弾たちが蠢き出し、全く同じ動作で全ての形状が変化。先端を尖らせ、それが輝いて光を反射する立派な凶器の完成である。無論、アキトたちという獲物を狩るための。

しかし、アキトを狩るには足りない。ライラよりアキトの方が特出している点は何かと問われた時、1つあげられるもの。それは、油断のなさである。

対グレン戦、アワリティア戦、ラグナ戦、イラ戦、カガミ戦、覇帝戦、ユルカナミシス戦。幾多もの戦いの中で、アキトは誰よりも無力という汚水を啜った。だからこそ、彼らの手によって自分がどれ程早く消えてしまうのかを、誰よりも知っている。だからこそ、油断ができない、不安を抱き続けなければならない。

例えば、アキトの性格の悪い戦い方。あれは、精霊王の力を借りることができるライラにとっては、使うことなど容易なゴミだ。しかし、その力を使う過程で、ライラには油断が生じる。普段なら誤差として片付けられるそれらも、誤差の範囲にとどめてくれるレヴィアタンがいない場合、完璧な隙となる。


アキトとアイリスフィニカの周りを、紅い球体が覆っていた。それがアイリスフィニカの張ったシールド、防御技術であると気付くのに、レイは少々の時間を要した。


「レ・エゴ・ロス。」


少女の髪のように美しい色の刃が、煌めく残像をもってレイに迫る。

レ・エゴ・ロス。形態変化。血液の形態変化によって生まれた美しい剣の切っ先が、レイの歪な体へと差し込まれる。


「・・・・・・」


肩口を抉り取るようにして第1刀。粉々に砕けた骨が地面にばら撒かれ、衝撃で後ずさるレイにすかさず追撃。少女の剣が胴体に風穴を開ける。

なんの反応も示さないそれを不気味に思いつつも、脇腹を切り抜く。そして、形態変化によってアイリスフィニカの血をレイの体内に分散させる。それらが急激に膨張。耐えきれなくなった骨たちが、レイの体を粉々にしながら砕け散る。

そして、とどめを刺そうと刃を振り上げるアイリスフィニカ。狙うのは、頭。


「それは、ダメなのです。」


爆竹。アキトの知っている音の中で、その音と最も近かったのは、あの馴染みの世界で聞いた、爆竹の音だった。もちろん、威力も音量も効果も全く違う。しかし、それだけに、現実離れした光景が、アキトの眼球に叩き込まれていた。

みっともなく後方で見ていただけのアキトのところにまで届くほどの威力がアイリスフィニカを押し、地面を抉りながら少女が後退した。幸いにも、防御姿勢を崩さなかった少女の英断のおかげで、それほど損傷はない。

しかし、アキトが絶句した原因は、そこにない。

地面で無残に転がっていた骨が爆発したことによるものだった。


ーーーああ、なるほど。


確信が、アキトの頭に。

週末サボりすみません。

ベッドの脇の壁に、何故か海上自衛隊の船が載ったカレンダーが飾ってあります。作者です。ちなみに自分は、『艦これ』よりも『ドールズフロントライン』が好きです。(やったこと無い。)

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