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前身・その最弱は力を求める  作者: 藍色夏希
第3章【その血族は呪いに抗う】
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174.【狩人の悪夢】

「とりあえず、ここから出るとして、ここはどこなんだろうな?」

「あの子が関係ないなら、嫉妬じゃなくてユルカナミシスの仕業、かな。それ以外にって言ったら、考えられない。」

「そうか。」

282との記録。それは、アキトを空間ごと引っ張り出して、バルバロスという縛りを無効化した上での対話であった。つまり、このバルバロスから出ない限り、282との対話は行えない。しようとしたとしても、282の力と、それを拒むバルバロスの拮抗する力で、アキトたちは弾け飛ぶ。

が、

「あいつを何回よんでも、反応がない。多分、ここはバルバロス。もしくは、もっと上の遮断能力を持った世界。」

「どこか分からない分、厄介だな。」

木々の生い茂る森林。そして、そこから先に続く山脈。連なるそれらを壁にするように、さらに高いビルのような軍団が景色を遮断する。それはまるで、こちらから情報を探ることを消すための壁のように思えた。

侵入を阻む山脈、視認を防ぐビル群。徹底している。

「でも、あれだけ厳重に情報を区切ってるってことはよ、見られたくないものがあるってこったろ?」

「アキトの発想、いつも捻くれすぎだ。」

「う、うるさいな。」

思い当たる節がありすぎるのを無視しながら、アイリスフィニカの頭を乱暴に撫でる。

頰を緩ませているのを俯いて隠す少女。しかし、アキトの視線は先を見据えている。そう、山脈を、壁を、超える。

出られる可能性。それは、ここまで徹底して遮っている先にある。そうでなければ、あそこまで隠す必要はない。

「んじゃあ、ライラに伝えてくる。変な果物食うなよ」

「食べない!!」

顔を真っ赤にして落ちている木の棒を投げつけてくるアイリスフィニカ。それを避けながら、自分から別行動を決めたライラの元へと向かう。

少しだけ森を進み、少しだけひらけた場所。その中央に佇む巨木の枝に、幹に背を預けながらライラが座っていた。

「ライラ、とりあえず、あの山を越えようって話になったんだが」

「うん。分かった。」

異論の意思は全く見せず、枝の上とは思えないほどの安定感で立ち上がり、数メートルはあるであろう高さから飛び降りる。音もなく着地し、既に驚くことも疲れたアキトに近づく。

「ねえ、苛立ったりしないの?ライラのこと。」

「っ、・・・。しないって言えば、嘘になる。けど、お前のせいじゃない。それなのに嫌うなんて、理不尽だ。」

「そう。」

それ以上は何も言わず、ライラが跳躍姿勢に入ろうとしているのを視界に捉える。

「おい、一緒に行かないのか?」

「みんながアキトみたいだったら、私はあんな所、いなかったよ。」

それが、遠回しにアイリスフィニカを指し示しているのを分かりながら、気づかないふりをする。

逸らしてしまった目を再びライラの方に向けた頃には、もうそこに少女はいなかった。きっと、樹上からアキトたちを追うのだろう。

仕方のないことだ。ずっと信用してきた兄に、あんな風に裏切られ、あんな呪いをかけられてしまったのだから。

人を信用できたくなる疑心暗鬼を、アキトも味わったばかりなのだから。

アイリスフィニカの村。エゴロスフィニカと秘密裏にあっていたのだろう、アキトに瓜二つの男。その存在に、アキトは疑心暗鬼を隠せない。

「アキト?」

「アイリス・・・。悪い、急ごう。夜になるかは分かんないけど、時間はないだろうしな。」

ユルカナミシスがバルバロスに残っているとしたら、23番貫通口。バルバロスとカーミフス周辺を結ぶそこへと、ゆっくりではあるが前進していることだろう。それが手遅れになる前に、アキトはここからバルバロス、または地上に戻らなくてはならない。

「うん。急ごう。」

アイリスフィニカの同意の元、山脈へと歩み始めた。


ーーーーー


樹上。もしアキトが落ちたとしたら、落ちている瞬間にショック死してもおかしくないほどの高さと木の密度。そんな危険なアスレチックを、恐怖心なんて知らないとでも言うように、軽い足取りで駆ける影。

町娘のような風貌で、絶世の、最高の、そんな言葉よりも、ただ可愛いと称されるくらいの、愛らしい顔立ちの少女。ライラ・クラリアス。同時に、嫉妬の大罪囚でもある。

そんな少女の行動に、特に深い意味はない。一緒に行くわけでないのなら、どうせなら偵察をくらいの気持ちである。

ただ、人間離れした身体能力で深緑を駆けるも、何かの異常も、生き物の反応も見つけられない。いや、それが異常と言うべきか。

「?」

その時、声が聞こえた。

全ての『者』に疎まれて、全ての『物』に愛される少女。人や生き物でない限り、それらは全て『物』に分別される。

たとえそれが喋らぬ物だとしても、常識に無理を言ってまでライラに言葉をかけてくれる。これは、その声だった。

「よ・・・け、ろ?」

あどけない言葉ではあった。話してきたのは、おそらくライラが乗らせてもらっている木だろう。しかし、その言葉を、ライラは誰よりも信じている。

爆裂音。世界の揺れる衝撃に、ライラはその主に視線を向ける。


「ようこそ、我が技術の結晶。『狩人の宝石箱』へ。あなた方を、歓迎しよう。我らなりの方法で。」


カタカタと。特徴的な笑い方で。

その影は言った。

シャンプーは人より少ない量ですが、ボディーソープは人より多く使います。作者です。

現在の3章が終わったら、本編更新の速度を落として、これまでの文章の加筆修正をしていきたいと思います。あくまで、表現不足の加筆と、誤字の修正、読みにくいと指摘いただいた部分(セリフと本文の区切りに空白)のつもりなので、文章が丸々変わったり、ストーリーやキャラが変わることもないです。なので、安定の読みにくさは、もう少しだけ我慢していただけるとありがたいです。

もしこのままの方がいいという方がいたら、申し訳ありません。ただでさえ少ない読者の方を失うと辛いのでたまに読んでやってください。

長々と失礼しました。後書きが邪魔だとか、不快と感じた方がいましたら、教えてくだされば控えます。

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