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前身・その最弱は力を求める  作者: 藍色夏希
第3章【その血族は呪いに抗う】
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173.【キョウキ】

「前の剣の美しさが戻ったな。何があったんだ?」

「簡単なことよ?悪魔の余計な魔力浪費がなくなったの。戦いやすくてゾクゾクしちゃう。」

「あの能力はあって便利だったが、剣技が霞む。お前も悲しい女だな。才能に、努力は勝てない。」

再び、変わらない銃弾の蹂躙が、アカネの眼前に展開される。既に数え切れないほどのそれらを体内に蓄えているアカネには、オーバーキルどころの話ではない。短いながらも、その役割を示そうと斬撃を残すキリファリカ。初発から中域にかけての弾丸は切り裂くも、そこから先の銃弾を捌けない。

ぐちゃぐちゃにひねり貫かれたアカネの体を、さらに数え切れないほどの銃弾が貫いていく。

「そんな・・・もの、楽しい?」

血とともに吐かれる弱々しい問い。アカネの口から問われたその言葉に、夏希が返す。


「楽しいとも。びっくりするくらいにね。」


死んだ目の男は、その言葉だけを残して、アカネの空間から消えた。


ーーーーー


灯火は、いつだって自分を導いてくれた。

通常、吸血鬼は、吸血鬼術、血操術、それらの術に長けているため、魔法なんて使わない。そもそも、古代の種族である吸血鬼には、当時少なかった魔力を使うには、途方も無い才能と、それを引き上げる努力が必要だった。そんな効率の悪い技術を使う馬鹿は、自分くらいしかいなかった。

だからといって、己に吸血鬼術の才能がなかったわけでは無い。

妹の術、相手の血液の脈動を鈍足にして行動力を縛り付ける、氷を冠した術。それと対になる、血液の脈動を超速にして温度を熱にまで昇華させる、炎を冠した力。

どちらも、血液が絡まなければ使えない、不完全とも言える技だった。ならば、魔法を習得しよう。そんな軽い気持ちだった。

魔法適正、灯火属性。炎を生み出す、熱を生み出す、そんな単純な魔法適正ではなく、使うのにいちいち頭を使うし、大した力にもなり得ないし、面倒臭い力。

『灯火を作り出し、【代償】を焚べることで、火を昇華させる。【代償】の実体の有無によって、火の実体の有無が変わる。』

長年研究して、やれるところまでやって、行けるところまでいった。これ以上腕は上がらない。そこまでいって出た結論は、それだった。そんな、ややこしい魔法。


世界の醜さを知って、数え切れないほどの負の【代償】を、心の灯火に焚べた。少しでも感情を紛らわせようとして。心の灯火を燃やして、活力という炎に変換させた。そんな時、心の中で燃え盛っていた炎が、実体を伴い始めた。

実体のない【代償】で、実体のある炎を作り出してしまった。


消えない炎は、妹の時間というものを炭にしながら、妹の心の中で燃え盛っている。

心地いい。

あの忌まわしき妹に、自分の灯火が罪を与え続けているのならば、それは心地良い。穏やかに生きていける。

キョウキ?そうだ。これは狂気だ。それこそが、自分の狂喜だ。


ーーーーー


「忘れろ!絶対に、絶対に!」

「分かった、分かった。忘れないけど、忘れるよう努力する。」

絶賛赤面中のアイリスフィニカ。そんな涙目の彼女に、ひたすら怒られ続けるアキト。そして、その隣で退屈そうに果物を頬張るライラ。

完全にアイリスフィニカの黒歴史に認定されたのであろう出来事を引き起こした果実。それを、何の躊躇いもなく、お淑やかに全て胃に収めていく。

「それで、同盟は結んでくれるのか?」

「あなたの足の調子によって決める・・・かな?」

「俺は全然大丈夫だ。さっきの何たらで吹っ飛んだ。」

さっきのなんたら。十中十二アイリスフィニカの事である。アキトが目線を向ければ、涙目で赤面しながら、そのしなやかな掌をアキトに向けた。

「違うから!さっきのは違うから!」

「え、ちょ、何するつもりだ!?」

「ちょっとは痛い目見ろっ!」

「あがああああ!!」

アキトの体内をめぐる血流が超加速。血管を焼ききる勢いで走り、アキトの体に熱を加えていく。それによって溶けた血液が身体中から吹き出し、熱さと痛みの絶妙なコラボレーションに、アキトの叫びが森に木霊する。

命名『叫びの森』

ライラそっちのけでいちゃいちゃ?している2人を尻目に、嫉妬の少女は根源に呼びかける。

大罪悪魔、嫉妬。悪魔の体現のような姿。『レヴィアタン』を呼ぼうと、呼びかける。しかし、まるで何か外郭に遮断されているかのように、嫉妬同士を繋ぐ道が消えている。遮断されている。

そもそも、精霊王の領域の最上層から来た悪魔との経路を遮断するなど、この世界の人間には不可能だろう。戦闘能力だけ飛躍させようとした馬鹿のひとつ覚え。もしこんな事が出来るとしたら、それこそ、ユルカナミシスのような存在。

いや、もっと簡単に考えればいい。

この世界には、信仰心に隔たりがない。なぜなら、精霊王という絶対的存在が、他の神などという幻想を見せなかったからだ。

人々は、全能であり、この世界の創造主であり、全ての力の生みの親である精霊王に、全ての信仰を捧げている。

そう、簡単に考えればいい。

この世界の原祖。この世界の創造主。この世界の最強。影の世界でさえも2人目を作れない、絶対的存在。そんな精霊王の存在なら、この経路を遮断することくらい、容易なのではないだろうか?

「悪いなライラ、そんじゃ、ここを抜け出すまで、よろしくな。」

「うん。よろしく。」

思考に入るヒビ。亀裂は広がり、思考の海は割れる。

異世界の異世界から脱出する計画の同盟が、ささやかながらに結ばれた。

作者は、ネット小説読んでる時に後書き入ると嬉しい人なので、出来るだけなんか書こうと思います。

今1番きている歌い手さんは『めゐろさん』です。いま生放送聞きながら書いてました。午前零時にまた会おう、聞いてみてください。

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