表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前身・その最弱は力を求める  作者: 藍色夏希
第3章【その血族は呪いに抗う】
170/252

167.【続・聖剣乱舞】

置いていかれてしまう。

暖かくて、ずっとそこに居たくなるような、そんな存在が、居なくなってしまう。

初めてだったのに、そうやって、1人じゃないから、幸せを見せてやるから、そんな言葉をかけてもらったのは、初めてだったから。

暖かかった。ずっと、そこに居たくなった。心が、熱くなった。

「いかない・・・で、アキト・・・」

「大丈夫。どこにもいかない。安心しろ。」

「っ!アキト、アキト!」

まだ意識が朦朧としていたのだろうか、上半身を起こしてアキトの存在を探す少女は、体勢を崩して倒れこむ。それをすかさず抱きとめ、美しい赤髪を撫でた。

金髪ロリではないけれど、その少女は立派に吸血鬼で、立派に人間より上の存在として君臨していて。なによりも、人間らしかった。

「落ち着け、好きなだけそうしとけ。俺なんかでよければな。」

「んっ、ん!」

依然、爆音と波打つ水流の音がひしめき合っているものの、ここには邪魔は入るまい。

今はただ一心に、少女をなだめるアキトだった。


ーーーーー


水飛沫が舞い散り、さながらミサイルのようにライラを滅さんと迫る。一見ただの水。しかし、そこには宝剣もびっくりの斬れ味と、ミサイルなど問題にならない破壊力が宿っている。現代兵器が泣いて逃げ出すレベルである。

そんな乱舞の中を、たった一条の隙間に潜り込み、無き道を切り開くように水流を叩き割り、暗い未来を照らそうとチスニプリウムを輝かせる。それに応ずるように更に打ち上げられた水柱。それらは一斉に方向を捻じ曲げ、同じく死を運ぶ槍としてライラに迫った。

四方、ライラの全身を滅多刺しにするように進む刃たちを視認。空気を走らせる刀身の輝き。

「エウロノア・ペイルダム。」

小さく呟く声。自分でも、どうしてそんな言葉を言ったのか分からなかった。しかし、それが完成形でないこと、何かの技であること。なにより、自分が今使える中で、最強の一撃であることは、簡単に理解した。

精霊聖剣『チスニプリウム』の誇る絶対的斬れ味、そして、精霊王からの力の拝借。精霊が行き来する剣には、必然的に霊力が大きくまとわれる。つまり、聖剣は、最強の斬れ味を顕現させる。その太刀筋に最も近い伝説の技が何かと問われた時、誰もが答えるだろう。その最強の刺突の名前を。

エウロノア・ペイルダムの名を。

突き出された刃から瞬きが増幅。一帯を覆い尽くしていた鬱陶しい水を、根こそぎ消し去った。

すすむ刃の先には、あったはずの水が無くなっており、半円柱型にえぐり取られたその場所にやっと気づいたように、その他の水がそこへと移動を始める。

『このままやっていても終わらないナ』

「水が尽きる前にライラたちが霊力ぎれで負ける!」

『ナニ、月から剣技を引き出したんダ、その剣にはもっととんでもない力があるんじゃないカ?』

エウロノア・ペイルダム。伝説の技と称されるそれは、精霊によるものではない。聖剣に降りてくるはずのないものだ。

『精霊の中には、力を最大まで引き上げる奴がいるそうじゃないカ。』

「この剣の、本当の力?」

ヴィネガルナの能力に酷似しているものの、どちらが強力なのかはいうまでもない。その強すぎる精霊の力によって、強すぎる剣が強化されたのだとしたら。

『全ての保管庫となる月から、何カをおろす力。それガ』

「チスニプリウムの、力?」

『可能性はあるだろうナ』

「・・・・・・・・・。」

握りしめた剣。真価を未だ発揮していないのだろうか、その剣は。ずっと戦ってきたのは、自身に危害を加えることのない相手、レヴィアタンだった。しかし、今回の相手のユルカナミシスは、本気でライラを殺そうとしている。覚醒とでもいうのだろうか。今まで殺すためだけだった刃を、守るためにも使わないといけない。それが、ここで拮抗している現状を生み出しているのではないか。

いつの間にか周囲には見慣れた水が溢れており、再びその刃をライラへと向けていた。

「っ!」

そして、とうとう業を煮やしたのだろうか。ユルカナミシスの月界『海龍月界(ユルカナム・アイオラ)』とは別の、その龍の力。無限水流。その大質量が、ライラの上で落下してきていた。

いつか見た戦術ではあるが、今回は前と同じようにはいかない。ただ消滅させただけならば、月界からの攻撃を受ける隙を作ってしまう。しかし、このまま防御に徹していれば、上からの質量に揉まれ、月界の暴力に内側から壊される。

「害獣!そんな姑息なこと!」

徐々に迫る大瀑布。手を緩めない死雨と水槍。

刹那、何かが動いた。

今更の話ですが、『バーチャルさんは見ている』の次回予告に尊様が出てるのを見て感激しました。最推しです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ