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前身・その最弱は力を求める  作者: 藍色夏希
第3章【その血族は呪いに抗う】
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154.【金麗少女の懇願】

「あの日、黒竜の『意思』に触れた時、そこから、ずっと。」

「願ってたって?」

リデアの脳内でフラッシュバックする光景。

自分の体が現在切り裂かれ、血濡れている事は事実のはずなのに、その脳内再生される映像に比べれば、大したことがないように思えた。

「・・・」

己の肩に触れる硬い感触。何かが自分を変えていく感覚。その気持ち悪いほどの情報量は、どれだけ忘れようとしても忘れられず、日に日に鮮明さを増して、止まることを知らない。

そんな不安の渦に、2年間も閉じ込められて居たレリィを、アキトは救い出した。死者の影が忘れられず、心に巣食った後悔と怨念の数々が交錯していた世界から、アミリスタを救い出した。本当は助けてあげたい。だけれど、それを求めないし、あげられない。誰が悪いのかも分からないような地獄から、シャリキアを救った。

「助けてほしいよ・・・。1番長く一緒にいるのに、ずっと戦ってるのを見てたのに、私はアキトを助けられないし、助けてもらえないんだよ。」

リデアは、どこからどう見ても助けられる側。あの日、黒竜から託された。押し付けられた『意思』。それは、役立っているのだけれど、使うたびに心に不安を根強く残す。そんな閉鎖空間に、そんな世界に、そんな地獄にいるけれど、それを分かってあげられるほど、今のアキトには余裕がない。

「でも、しょうがないから。アキトは、大切な心を、落としてきちゃったんだよ。」

血まみれの体に鞭を打ち、軋む骨に呼応する肉の中から血が溢れる。

「だから、だから、私は、助けられなくても・・・いいの!」

黒聖域エルダーサンクチュアリの間合いとしては、自分を巻き込んでしまうかもしれないため主砲を使えない。つまり、アカネが持ちうる武器はキリファリカだけ。

ーーー世界再現魔法。灰燼に帰せ(オーバー・ガロン)

指し示す弱々しいしなやかな指先から、続く魔力の鼓動が走る。金閃に彩れた空気の中に、圧縮された魔力の核が外殻を打ち砕き、上級魔術師の魔法にも劣らない爆発を引き起こす。

無論、それがひとつだけなはずもない。

「自分からかい?そうやって、死ににいこうとする。」

宝石のように輝く魔力の一粒一粒が、人の命を紙屑のように吹き飛ばしてしまえるほどの物。そして、それが、大瀑布のようにアカネに降り注ぐ。

雷撃の音色が共鳴し、世界から色が消える。そのまま音までもが消えていき、己の感覚さえもが麻痺していく。存在すら忘れそうになるほどの衝撃。

「人は不安じゃ、死なないもの!」

リデアの背後に軍隊のように従えられた刀剣の数々が、容赦なくアカネに輝きを向ける。

「あら、そう?あなたは今、不安で死にそうなのではないの?」

黒く、その深いところが見えない。

全てが四肢、心臓、頭、欠損することで多大な障害を負う部位に目掛けて撃たれているそれらの数々が、アカネの持ちうる剣技に挑む。

右肩目掛けて放たれた一投目を砕き割り、そのまま頭に向けられたニ、三投目を躱す。そこを貫くようにして撃ち続けられる魔力剣を、黒聖域エルダーサンクチュアリ含めた全てで叩き割る。

「あなたはまだ、助けを求めているのではないの?」

「は・・・」

一瞬、反応したリデアに隙ができた。

消えることなく撃ち続けられていた弾幕の中に、一つの活路が見出される。即ち、アカネの刃が届く。

「安心して?死ぬことはないから。」

刹那。自身に振り下ろされる黒刀の細さとその声に、小さく歯噛みした。


ーーーーー


「っ!はぁ、はぁ、・・・私・・・。」


震える手のひら。まだ、そのアカネという存在は、リデアの中で生きながらえている。

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