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前身・その最弱は力を求める  作者: 藍色夏希
第3章【その血族は呪いに抗う】
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151.【曇天】

「これで、良い筈だ。アミリスタ、リデアが安全なところにいるように、どうにかしといてくれ。」

「っ、そりゃ、ボクだって危険だって分かってるよ。だけど、リデアは黒竜だって倒したんだよ?ちょっとは、」

「駄目だ。黒竜如きを倒してたって。今度のは、冥界王の殺意が、確実に乗ってる敵なんだ。人間兵器1人が立ち向かえるような相手じゃない。」

必死に訴えるアミリスタの言葉に厳しく否定を重ね、強く握った拳を壁に叩きつける。

どうして気付いてくれないのか。どうして聞いてくれないのか。どうして、自分を大切にしないのか。

リデア達が大事だ。もっと、自分達を大切にして欲しいのに。どうして彼女らはそんな簡単な事に気付いてくれないんだ。

苛立ちが混ざり合う感情の濁流は、その八つ当たりで消えるはずもなく。

「今日はありがとう、アミリスタ。」

「ちょっと!待って!」

聞こえるアミリスタの制止の声を無視して夢魔から抜け出す。自分の体がそこにあるという感覚の喪失。

「2人とも、何でそんなに辛そうなのに・・・」

互いを大事に思っているからこそ、互いを尊重しすぎているからこそ、その仲違い、すれ違い、勘違いが起こってしまう。

どうしようもなくめんどくさい。それでいて、目を背けたくなるほど輝く。そんな全てが嫌になって、アミリスタはゆっくりとベッドをなぞる。


「メンドクセーな。ニンゲンってのは。」


普段からは考えられないようなドスの効いた声で、そう言ったのだった。


ーーーーー


「!アキト、どうしたんだよ、そんな元気なさそうな顔して・・・」

「ああ、いや、何でもない。それより、膝枕ありがとう。」

「っ、仕方なくだ!仕方なく!もうしないぞ!」

「主張が変わりすぎだな。」

そっと起き上がる。いつもなら名残惜しい膝枕も、今だけはそこまで何かを感じない。まるで、心の中の容量を、全部何かが圧迫してしまっているような。何かに対する余裕が、足りないような。

胸を焦がす痛み。どうして、自分はこんなにも悲しんでいるのだろう。

「アイリス、また特訓を頼む。」

「あ、ああ。」

揺れ動く少女の瞳。心配そうな表情をしながらも、アイリスは立ち上がった。



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