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前身・その最弱は力を求める  作者: 藍色夏希
第3章【その血族は呪いに抗う】
153/252

150.番外編【その最弱のゆるい休日】

次回がシリアスっぽくなりそうだったので、秘密のR城を見ながら緩く書きました。こんなのもあったんだな〜ぐらいに見ていただけると幸いです。オロナイン・・・。

「アキトさん、もう退院しても大丈夫なんですか?」

「医者?治癒術師?が、大丈夫だけどまだ居た方がいいって言ってたな。」

「駄目じゃないですか!」

「患者は俺のせいで多いからな。悪役が早く居なくなった方がいいだろうよ。」

「ぅ・・・。」

いつかの興都でレリィがそんな事を言っていたから反論しづらいだろう。

そんな興都決戦から数日経って、ヴィネガルナとウルガの雰囲気が少しずつ怪しくなってきたのを見届けながら、怠惰に胃を締め付けられ、無理して退院した数分後だ。

アキトはかろうじて病室に入れてもらったが、応急処置だけして継続的な治療が受けられていない人間も多いと聞く。アキトがいなくなった分をそこに使っていただきたい。

「にしても、驚くぐらい平常運転だな・・・」

レリィとともに家への帰路につき、歩く街並みを眺めるも、アキトのような素人目でもあまり変わっていないようにみえる。

「ファルナ様が無理なさったと聞きました。」

「あ〜言ってたな。ひと段落ついてからぶっ倒れて、3日ぐらい起きなかったとか・・・」

ウルガにファルナの容体を聞いてそれを聞き、吹き出してヴィネガルナにしばかれたのは記憶に新しい。

アキトだって、徹夜でゲームをしてぶっ倒れて、金曜夜から月曜朝まで寝たことはあった。

「でも、すごいです。こんなに早く普通に戻るなんて。」

「ふ〜ん、そうかい。」

「え、えと、拗ねてます・・・?」

レリィとは友達というわけでもないし、かといって恋人なんてことはないのだけれど、レリィが他の男を褒めているのに嫉妬はせども、それをオープンに出来ないヘタレがアキトである。それに気付かないレリィも鈍感では?なんていう疑惑がアミリスタから広がっている事はまだ知らない。

「いいさ、俺はアミリスタが褒めてくれるし・・・」

「うっ・・・わ、私も褒めますよ?」

バツの悪そうに顔を背けるレリィの反応を見る限り、ファルナへの羨望はあるのだろう。なにせ、カーミフス村にいた頃のレリィはそのような執務をこなしていた。その苦労と大変さは2年で血に刻まれているだろう。

しかし、そこで尊敬と恋情を感じわけられるほどの精神がアキトにあるかと言われると、回答はいつもと変わらない。

疑わしげにレリィを見るアキト。

「う・・・あぅ・・・」

アキトに見つめられる事に未だ慣れないレリィは、顔を真っ赤にして視線を外す。

と、そんなウブなバカップルみたいな事をしているが、断じて2人は付き合っていない。公道で迷惑な事である。

「お〜い!アッキー、レリィちゃん!」

それが片方美少女のレリィのため、非常に視線を集めているのだが、アキトの後方から竜伐という有名人の登場で、さすがにそれは霞んだようであった。

「んで、褒められないまま俺はアミリスタと合流か・・・」

「え、えと・・・練習しときます・・・・・・」

練習しとく、というのは割と傷つくという事に気付かないレリィの無意識の打撃を鉄の心で受け止めて、クリティカルヒットに嗚咽を漏らす。

「何の話してたんだい?」

「何でもねぇよ。じゃあ行くか。ありがとなレリィ。」

「いいえ。まだアキトさんは病人ですから。」

そう言って笑うレリィに救われて、隣の花がアミリスタへと変わったのだった。


ーーーーー


治療院から退院して、そのまま久しぶりにアミリスタと共に遊びに行こうとしたのだが、合流するまで絶対離れないというレリィの固い意志のもと、先ほどの状況へとなったのだった。

レリィも誘ってはいたのだが、少し寂しそうに断っていた。心は痛むがアミリスタとの時間は大切にしたい。

「はぁ〜レリィのあの寂しそうな顔が・・・」

「なんで自分を好きな女の前でそういう事言うかな。」

頰を膨らませてむくれる少女の可愛さにドキリとはしてしまうが、きっとしょうがないだろう。

それでも、レリィの遠慮を追及せずにここまで来たのは、ひとえにアミリスタとのためだ。

「レリィも大事だけどよ、お前だって大事だ。」

「あっ・・・う・・・・・・」

アキトの無意識の言葉にもそうして真っ赤になるところを見てみれば、普段の男勝りな性格もなんだか見る影もない。

こちらもバカップルのような会話を繰り広げているのだが、アキトも意識しているがアミリスタは告白までしている。進んでいるのはこちら側なのだろう。

「・・・ちっ」

「おいアッキーなんで今舌打ちした!」

照れているのを誤魔化すように叫ぶアミリスタの声も、興都の中心にほど近いこの喧騒に呑まれて消えて行く。

「ちょっと可愛いと思ってしまったのがイラっと・・・」

「なんだよ!可愛いって思えばいいじゃん!」

めちゃくちゃ可愛いと思ってしまったことを隠そうとするも溢れてしまった。

「はいはい可愛いよ」

「ボクも愛してるよアッキー」

互いに恥ずかしがりながらもそんな事を言っているが、存外悪い組み合わせではない。それを分かっていて、それでいてこんな馬鹿な会話が楽しいから、恥ずかしいから、友達っぽい恋人という距離感を胸に、今日限定で居酒屋へと変貌しているつづりの店へと進んだ。


ーーーーー


「お前、貴族的な場所じゃ飲まねぇくせに・・・」

「ふふん。ボクは一応成人しているからね。アッキーこそもう17は超えてるでしょ?飲めば?」

「俺の国では20からなんだよ。あれ、来年から25に上がるんだったっけか?」

現実にいた頃の事は、こちらのことが濃すぎて細かく覚えていないのだが、アキトが召喚された1月11日時点で、そんな法律が作られていた気がする。まだまだ少しだけ見せていたくらいの情報ではあったが。

だから、アキトは飲む事に多少以上に抵抗がある。

「うまいか?その酒、になるのか?」

「うん。アッキーも飲んで見たら?ほらボクと間接キスだよ?」

「あ、じゃあ遠慮なく。」

「ふ・・・ぇ?ちょ!」

冗談のつもりで言ったのだろうか。そんな事を気にせずに、好奇心が勝ったアキトの手がジョッキをさらい、なんだか酒とは違ういい匂いがして意識しながら少量飲んだ。

「あ、アッキーの・・・ばか・・・」

「飲んで見ろって言ったのはお前だしな。にしても、うまいな」

ビールの泡を少しだけ口に含んだ事はあったのだが、その苦味の後に甘いアルコールの味が舌に伝わり、きっとこちら特有の味は、非常に好みだった。

ほんの少しのただの遠慮と、多大なる好奇心が拮抗するはずもなく。

「つづりさん!この酒一杯!」

「あいよ」

アキトのアミリスタとの酒場巡りに、ほんの少しだけの飲酒が追加された。


ーーーーー



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