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前身・その最弱は力を求める  作者: 藍色夏希
第3章【その血族は呪いに抗う】
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147.【完璧な監獄長】

fate/zeroを今更見ました。あんなのstay night見るしかないじゃないか。てことで、冬休みの課題を早々に済ませて、執筆に集中したいと思います。

「っ、考えてみればそうか・・・」

完全なる主観で物事を捉えていたため、自分が現在拉致されているというのに気がつかなかった。人質が誘拐犯に怒っているという意味不明な状況に陥っていたからといって、少女?の告げた言葉の意味が変わることはない。

そう、この少女は、まごうことなき阻止の道を、ミカミ・アキトの道に上書きしようとしている。

「いや、そんな事はどうでもいい。」


ーーー意見。同じ。内容、理解、可能?


「まず話せよ。」

いちいち読み取りにくく、いちいち話すのに苦労しそうな会話であるが、声のみ、姿も見えず、触れることもできず、唯一の声もどのようなものかはっきりしない。そんなあの懐かしい声に、この少女、シドの声は似ていた。といっても、その似ているからといって聞き取りやすい訳ではない。


ーーー簡単。脱獄、中止。実行不能?


言っていることは変わらない。ただただ、当たり前のことだ。しかし、それに素直に頷いて、鳥籠でおとなしく朽ちろと言われても、そんなことができるほど、アキトは意思を捨てていない。

「もちろんだ。ここからでる。その目標だけは変わらねえ。」


ーーー理解。即ち。ウドガラド、破壊?


「まぁ、だろうな。」

ここでアイリスフィニカなりアキトなりを殺してしまったとしたら、それはシドにとって本末転倒だ。

アイリスフィニカという貴重な吸血鬼を殺すわけにもいかないし、アキトだけを殺したとしてもアイリスフィニカは脱出を目指してくれるはずだ。

とすれば、アキトが従わざるを得ない条件を出してくるはず。そんな嫌な予想だけは当たってしまうという嫌な想像力に、何度目かわからない嫌気がさす。


ーーー炎竜、暴風竜、魔竜。選択、必要?


まるで辞典のように並べられる全く意味のわからない文字の羅列が、同じく理解することを阻むように脳に響く。

必死に考えて『竜』の単語を拾った。つまり、竜を遣わしてウドガラドを滅ぼしてしまおうということなのだろう。確かに、シドがバルバロスから出向くというのはあまりできない行動だろう。

「要らないな。どれが行ったところで、アミリスタ製の結界で、ろくに攻撃は入らないだろうよ。」

ウドガラドを囲む、球状の結界。それは、アキトに出会うずっと前に、アミリスタが全精力を注いで作り、やっとの事で完成させた一品。ただの竜ごときが簡単に破れるほど甘くない。


ーーー思考。選択肢変更。水竜、瀑布竜、鯨竜。


「頭まで良いってことかよ。」

そのシドという少女の優秀さに反吐がでる。

戦闘力あり、思考能力あり、建築能力あり、きっとこれだけでは収まらない多彩な才能を持ち合わせているのだろう。

アキトのようなひねくれ者でさえ、すぐには気づかなかった可能性。

その結界は、雨を防がない。

水が世界に与える祝福は大きい。それなしでは、生きられないように。だから、結界は雨を通す。

水が世界に与える破壊は大きい。それがあれば、簡単に滅んでしまうように。だから、結界は水に対して最悪の相性である。

何が言いたいのか。水を大量に作り出すことのできる竜がいるのだとしたら、その竜の起こした洪水が、ウドガラドの興都を水に沈めることになるのだろう。


ーーー選択。期限、ない。


「残念だが、諦める気は絶対にない。」

アキトには諦める意思など微塵もない。同じく、シドとて同じだろう。このままみすみすアキトを逃がすことはない。


ーーー残念。ウドガラド、崩壊。


「どうだかな、そこまで簡単に負けるメンツじゃねぇぜ。なんせ、あいつらは俺を倒したんだから。」


ーーー?


それがカガミのことであるとは知らず、見てくれだけは少女のシドが首を傾げる。


ーーーーー


「アキト!アキト!起きろ、大丈夫か?」

少女の声が聞こえた。それだけで、脳内に赤い色が広がった。どうやら、アイリスフィニカという少女は、思っていた以上にアキトの脳内に刻まれているらしい。

そんな少女の心配そうな声に彩られた手荒な目覚ましのアラームは、夏限定で寝起きのいいアキトには十分すぎるものだった。

「膝枕じゃないのか・・・」

「本気でしょんぼりするな!べ、別に、して欲しかったらしてあげる、し・・・。」

大幅に目を逸らしながら、そのしなやかで艶やかな指では隠せていない赤い顔に癒される。

先ほどまで世界の2トップの1人と話していたというのを忘れてしまいそうになるが、とりあえずはこの少女にまた会うことができてよかった。

あのままアキトを拷問なり監禁なりしていたら、さすがに打つ手がなくなっていた。

「それじゃあ、膝枕は後で頼むことにしよう。」

「あ・・・ああ・・・。」

「すまんが、少し急がないといけなくなった。走れるか?」

「もちろんだ。」

吸血鬼とその眷属の足取りが、速度を伴って進んで行く。それを見つめる冥界王に、表情はなかった。


ーーーーー


理想の条件は3つほど。

大罪囚なんていう化け物が、居酒屋感覚で入ってこないところ。しっかりとアキトが夢魔の力を使えるところ。そして、脱出の糸口となりうる本があるところ。

最後に至ってはないところを探す方が難しい。

好条件ではあるが見つけやすくはある場所を、予想通り早々に発見し、全力疾走の影響で乱れた息を整える。

早く移動するためと、体力を使って早く寝るため。2つの理由がこもった疾走の後で、豊かな双丘を息とともに上下させるアイリスフィニカの膝にダイブする。

「なぁ、アイリス。」

「なんだ?」

「ありがとう。絶対に、お前を連れ出すから。」

「・・・・・・うん・・・・・。」

そうして、ミカミ・アキトは、ゆっくりと眠りについた。




「こんばんは、アキトさん。」

「よう。調子はどんな感じだ?」

もう驚くことも少なくなってきた少女。レリィの愛らしさに目を細め、髪が乱れないようにそっと撫でる。

アミリスタの時とは違い、撫でるというよりも撫でさせてもらうのと同じような感覚だ。結局撫でられている方も盛大に頬を緩めているのだが、アキトの鈍感さの前にはないに等しい。

「今日はアミリスタ様の書類を手伝ってきました。」

「あいつ、職務放棄か?ったく、うちのレリィに押し付けやがって。」

ここにはいない結界娘に悪態をつき、レリィ成分を補給して手を離す。やはり、偽物だ。

「そんなことないですよ。みんな頑張ってます。」

「そうか。なら、良かった。」

自分がいなくとも順調に回っていることに、一抹の不安を覚えるわけではないのだが、このままアキトがいなくなったとて、きっと支障はないのだろうと、そんなマイナスな思考がよぎってしまうのは、仕方のないことで、それがレリィにバレるのも、仕方のないことで。

「後は、アキトさんが帰ってくるだけです。」

「っ、・・・そ、うか。」

「はい。アキトさんがいないと、家が広いです。寂しいです。」

少しだけ拗ねたように頬を膨らませて、レリィがそんなことを言う。それら全てが自分に溜まっていった疲労をぶち壊してくれていることに気づいて、笑みがこぼれる。

「レリィ、明日、会いたい奴がいる。夢魔を、そいつに渡しといてくれないか?」

「はい。ちなみに、誰か聞いてもいいですか?」

「ああ・・・。」

アキトが呼ぶ。

「アミリスタだよ。」

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