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前身・その最弱は力を求める  作者: 藍色夏希
第3章【その血族は呪いに抗う】
143/252

140.【図書戦宮】

第一層、282番ゲート下。通称『鳥籠』。投獄種、『上位吸血鬼』。アイリスフィニカ。

昔、こんな作戦があったという。282番ゲートから大質量の瓦礫を落として、アイリスフィニカを殺そうという計画が。それは、グレンという化け物が、腹わたを撒き散らしながらバルバロスから出てきたことに恐怖を感じていたから。

そうして落とされた数々の武器や瓦礫は、鳥籠の地面を削り続け、それを気付かないままアイリスフィニカは落ちてきたものをすべて弾き返していた。




「え?」

「あ。」

と、そんな事を考えていて気付いた。下を確認するために、小さい穴を開けようと、そういう話ではあったのだが、地面は薄くなっているわけで、地面の厚さは相当心もとないわけで。

走る亀裂を止めようとしても遅い。続く爆音が地面を砕き始め、隆起する石畳が砂埃を巻き上げる。

「やばっ」

あえなく地面は崩壊、大穴の底へと、2人は自由落下を始めた。


ーーーーー


「どうして、此処って2層の穴の下にあるの?」

『さあ?用意したのはシドの野郎ダ。そう言われてもナ。』

「そう。」

そうして、円環の魔法陣に呼応するように、所狭しと並べられた図書館の、その中に更に敷き詰められた本棚の、更にその本棚の中の数え切れないほどの本が、まるで喜びに震えるように、涙を零しながら叫ぶように、パラパラとページをめくりながらひとりでに飛び始める。

幾多の本の中で、まばらに輝き始めるそれらを見て、本を呼び出した本人である少女は、慈母の微笑みでそれらを迎えた。

そして、対する禍々しい角を左右に、額に鋭い一本。計3本の角が生えるその顔は、人間とは言えなかった。黒く、染め上げられたその輪郭は、口がひび割れ、耳にまで伸びきっている。その耳も、長く伸びている。しかし、エルフのような美しいものではない。ボロボロとも言えるような、布切れとても言えるような。そして、それを際立たせるのは切れ長の目。赤く、全てが赤い瞳からは、何も覗けない。

此処まで長々と話した特徴を、たった一つのものが一文字で凌駕される。

ーーー翼。

そう、そこには、翼があった。

同じく黒く、同じく禍々しく。そして、心の底から恐ろしく、妬ましく思う。それほど醜く、美しい。()()()()だ。

浮遊する悪魔。そして、同じく空中に佇む少女。町娘とてもいうだろうか?茶髪のその少女は、言った。

「今日こそ死んで?」

『お断りダ。」

張り詰めた空気の中、輝きの募りに募った魔法陣から、雷撃が撃ち出された。

長く鋭く大きく、連なる一つ一つの雷光は、たった一つでもアキトを1000回は殺している。だと言うのに、そんな赤く鮮やかな金の雷撃は、マシンガンのように乱れ撃たれる。

視界の確保すらできないほどの光量と、音の認知もできないような痺れる音。世界が焼けこげる臭い。そして、自身すらも喰らわれてしまうだろうという恐怖。それを諸共せず。

「ちぃっ」

雷撃のそれら全ては、自分たちから照準を大きく外し、撃ち抜くはずだった悪魔から大きく逸れて闇に吸い込まれていった。

全ての『者』に妬まれて、全ての『物』に愛される。そんな少女と。

全ての嫉妬の矛先を変えてしまう。そんな悪魔の、日常。


ここが、第3層に開いた大穴から、第4層の底にかけて作られた、全ての本が貯蔵される図書館。

監獄の中にある、戦さ場。


【図書戦宮】。

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