138.【拝啓地上から】
100pt越えを達成していました、ありがとうございます。
いつも読んでくださる皆様のおかげです。これからも暇つぶし程度に見ていただけると幸いです。
「もう大丈夫です。世話になりました。色々と。」
「まだ出られるような体じゃないんだがな・・・まぁ、良いだろう。」
「・・・」
小さく頭を下げて、ゆっくりと歩み出すはラグナ。
輝きを照らし返す美しい白髪に、皇家特有の整った顔立ち。蓄積していた披露や不安、それによって現れていた険しい表情はなくなり、ここまで回復できたのは、一重に、アキトの力であったのではないだろうか。
そして、ラグナの前に立ちはだかる少女が1人。
「体調、良くなって・・・・・・何よりです。」
皇家とは違う。透き通るような皇家の白髪とは違い、そのシャリキアの髪の色は、何者にも染まることのないような力強い白だ。母親から虚空保管とともに受け継がれたその髪が、少女の紅い目と相まって神秘的な容姿を作り出す。
「今更許してくれだとか、償いをしようとか、思わないよ。」
「それなら・・・・・・ありがたい・・・です。」
それが、その距離感が、一番だ。不干渉。互いに互いを関わらず、馴れ合わず。それが、この言葉にし難い関係の、最適解。
「私・・・見つけました。・・・アキトさんを。それだけは・・・・・・感謝します。」
「・・・。なら、良かった。」
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「また荒野に行ってるのか・・・僕は心配だよ。」
「そうね・・・スノウストだし・・・。」
山積み、とまではいかなくとも、少しだけ貧弱な辞書ぐらいの厚みの書類の束が、寸分狂わずリデアの机に置かれている。アミリスタも同様だ。その諸々の書類に目を通し、印を押すかサインを書く、それ以外といったら否の答えを書くぐらいだ。
アキトが散々やらかして崩壊させた都市と街、それによって死んだ人間も居る。アキト側から見れば、勝つための犠牲ではあった。けれど、犠牲になった身としては納得できないはずである。そんな書類達との格闘の合間。
「にしても、僕がおふざけ程度に改良したやつが効果を発揮するなんて。」
「本当に、でも、アミリスタはアキトが生きてるっていう知らせが来るまで、ホントに弱ってたもんね?」
「う、うるさいな!だって、折角勇気を出して言ったのに、初恋が、それじゃあ・・・」
「ぷっ」
「笑うなっ!」
抜け殻のようになっていたその時期のアミリスタと違い、今はリデアもともに待ち望んで居る。アキトの帰りを。
それだけのこと変化だけで、良いのではないだろうか。
「でも、なんか驚くね。バルバロスから出るなんて出来るはずないのに、アッキーだったら、」
「うん。出来そうな気がする。」
皆の総意ではある。アキトがそこまであっさりと終わるはずがないと。アキトはきっと、戦って負けたとて、美しく死のうとはしないはずだ。もう死んでも良いなんて思わないはずだ。どれだけみっともなくても、汚くても、足掻き続けるはずだ。
今回はそれを、レリィ達の大事さが上回っただけで。それでも、アキトは生きている。生きていられる。
「アッキー、早く帰ってこないかなぁ」
「きっと、ボロボロて帰って来るもの。」
「そうだね。」
ミカミ・アキトを待ち望む声は届かずとも、きっとアキトの想いは。