135.【閑話】
「こ・・・れは。」
「ベルフェゴールでも分からない?」
「うん・・・こんなの、というか、人間の支配下に就くなんてのが初めてだから・・・。」
黄金、はたまた翡翠、何色にも例え難いその輝きに照らされて、怠惰の2人は朝日を浴びた。
シングルベッドに腰掛けて、ベルフェゴールの右手の甲の輝きに首をかしげる。その輝きの意味、その輝きのもたらす物。それが分からない。
「やっぱり、カガミ軍が原因・・・だよね?」
「それ以外に考えられないかも。正直、魔法の効果阻害に関して、怠惰に勝つ奴はいないから。」
大罪囚としての能力。その力のある限り、その魔法阻害は無くなることがない。とはいえ、この正体不明の輝きが魔法によるものでないと分かっただけ。事実上なにも進歩していない。
2人は顔を見合わせて。
「「ま、いっか」」
実に怠惰な台詞を、寸分違わず言ったのだった。
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先日、ヴィネガルナとデートというか何やらをした後、ウルガは訓練場で双剣を構えていた。
理由は極単純。カガミのような災害級の襲撃があった場合、それに対応しきれる兵が必要だからだ。エリアスの植物シェルターのおかげでなんとかなったものの、多くの兵が死に、守れなかった市民も興都の血へと変わり果てた。
要するに、ウルガとの全力試合。それによって、兵の強化をしようということだ。
「さぁ、かかって来い。」
眼力、威圧、殺意。どれもかれもが放射状に溢れ出す。数値化されていたり、能力だったり、そんなゲームのようなものではなく、純粋に肌で感じるその気が、ウルガという男の力を悠然と示している。
それでも、撒き散らされている力は放射状。誰か1人に降り注がれているわけではない。当たり前だ。そのウルガを取り囲むように、十数人の兵士が、己の愛用の武器を手に冷や汗を垂らしているのだから。
「せぁっ!」
その中から、前衛としての身体能力が高い剣兵が、剣を片手に突っ込んだ。
「っ!」
いなす劔の音が響き、訓練場に木霊した。
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