106.【証明】
「地下迷宮に1人で!?」
「うん、僕は伝言を頼まれて来たんだ。」
ラグナとヴィネガルナの奮戦と、それをサポートするリデアの技術のお陰で、イラを戦場に押さえつけるという無理ができている。
白金の翼が大きく羽ばたき、空を駆けるラグナの翼から魔力が射出される。100を超える魔法攻撃の雨を前にして、イラは手を掲げることで迎え撃つ。重なった2つの腕が点滅し降り注ぐ魔力が見えない力に撃ち落とされる。魔力のそれぞれの壊れ方はバラバラで、砕け散っているものもあれば、半分に絶たれているものもある。おそらくダリアたちに使った範囲内無差別攻撃。
キラキラと舞い落ちる魔力に紛れるラグナへと、容赦のない炎の槍が射出される。巨大な槍に見合わない速度でラグナに突き進むそれを、白金の翼が防いだ。ギリギリと勢いを削るラグナの翼、その防御力は、細くしなやかな翼とはかけ離れている。
「寝返りやがったな!」
炎が徐々に弱まり、消え去ったその重圧が灰となり、また燃え上がった|。まるで不死鳥のように再び紅く輝く炎は、いとも容易くラグナを呑み込んだ。
「私を忘れるなっ!!」
抜刀術のような構えで剣を構え、それが叫ぶ声とともに搔き消える。現れたのはイラの眼前。明らかに認識速度を超えた一撃に、炎球を打ち込む。
「きゃっ」
破裂する炎がヴィネガルナへと迫り、そこに半透明の結界が割り込んだ。散り散りになる炎が目先を走る。
「地下都市か、丁度いい!」
アミリスタの伝言は、イラの耳にしっかりと入っていた。
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貴鉱石をポケットに入れ、それでも見惚れてしまいそうになる輝きに苦笑しながら、地下迷宮から一刻も早く脱出しようと走る。貴鉱石の輝きで道が明るいのと、こちらから入った場合の罠のない道を聞いたからだ。アンナは意外と体力があり、正直アキトが置いていかれそうになる。ただ、それでも走り方が子供っぽい。
「お客様はあれを倒す作戦は、組み上がっているのですか?」
「作戦って言っていいのか知らんが、なんとかな。」
アンナが平気そうに質問をして、意地を張るアキトが息切れを隠しながら答える。イラを倒すまでいけるかは、ヴィネガルナたち次第。アキトも、リデアの魔法を使えれば参戦できる。
「お前はさ、俺に招待状を送っただろ?あれは、この展開を予測してたのか?」
「受け継がれて来たことに従ったまで、別に、気に病むことはありません。」
さりげなく聞いたつもりが、簡単に見抜かれ気遣われてしまった。顔をしかめながらただ走る。
やっと、終わらせられる。この戦いを。
次回が長くなるので短いです、すいません。