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episode seven

 始業式って退屈だわ。

 これ言うのも何だけど、軍のお偉いさんの訓示も退屈だったよな。

 似たようなもんか。


 終業式が終わって、またゾロゾロと教室に戻る。

 3年の他の組の女子たちが、3組の面々を睨み付けている。

 親の仇でも見るような目だ。


 一方、3組ピーポーは涼しい顔でそれを受け流す。


 圧倒的な余裕だ。


 君たち、俺を皆の視線から隠すのをやめなさい。

 どこで訓練してきたんだ、その動きは。

 本職のSPも真っ青だよ。


 あれか?

 大きな友だち? って奴がピンクのハッピを着て踊るのと一緒か?

 感覚的に。

 奴等も強化合宿組んだのかってレベルで一糸乱れないと聞く。


 行軍パレードの儀仗隊みてえな連中だな。

 あいつらすげえよ。

 まばたきまで揃ってた気がした。


 職業柄、見晴らしの良い場所からよくお偉方の護衛と監視をしながら眺めてたことがあったけど。

 儀仗兵とか俺には無理だわ。

 特殊作戦軍の先輩達は、何回かあの行進の中に紛れて任務したことがあるってたな。


 ずぇったい無理だわ。


 今じゃそんな記憶も懐かしいって感じる。


 フハ、歳か? 


 この国にも軍隊あるし、やっぱ凄いのかな? 儀仗隊は。


 それはさておき。


 初日だし、しっかりサービスしなければ。

 

 こっちを睨んでいる女の子達に向け、天使の微笑みエンジェリックスマイルを投げ掛ける。


「「「「「「はうっ」」」」」」


 機会があれば仲よくしようね。





■□■□





 そんな感じで教室に戻ってきた。

  

 帰りのホームルームをやって放課になる。

 先生が出て行くと、再び裕璃が囲まれていた。


 俺との繋ぎを頼んでいるのか?

 SPは上手いのに、喋りかけられないのかよ。

 まあ、男性=傲慢高圧的我儘俺様みたいな認識だからな。

 いかに俺と言えども、中々話しかけられないか。


「じゃーね裕璃、それからみんなも」


 そんな彼女たちを後目に、手をヒラヒラさせながら教室を出た。

 残念だが、俺は忙しいのさ。

 主に冬華との下校で。


 優しいお兄ちゃんが迎えに行ってやるか、教室まで。

 階段を上って、冬華の教室まで歩く。

 下校の生徒達に見られまくりだ。


 冬華は2年2組って言ってたな。

 ここだ。

 ドアは空いていた。


「おーい、冬華――」


「お前、鞄をとれ。そこのやつ、肩凝ったからマッサージしてくれ。あとお前、僕の代わりに日誌を書いて届けろ。おい、聞いているのか霧桐、お前にいっているんだ。光栄だろ?」


 あ?

 何だコイツ?

 

 そこには女子達にあれこれ指図しているへのへのもへじ顔の男子生徒がいた。

 女子たちもされがさも当然のように受け入れている。


 驚きだ。


 今はそんなことはどうでもいい。

 それよりコイツ……


「え、え~ちょっと無理かな、お兄ちゃんと約束あるし。それに、それは日直の仕事だから――」


「ふざけるな! 女が僕に逆らうんじゃない!! 命令を聞けば可愛がってやるのに!!」


 その男子生徒は顔を真っ赤にして怒鳴った。

 周りの女子も冬華の発言にぎょっとしている。


 ふふ、さすが俺の妹だ。

 いい感じに育っているな、俺の影響で。

 男=俺みたいな方程式が出来上がってきているだろう。

 俺に比べれば、他の野郎共なんてオタンコナスの雑草モヤシだ。


 後は俺に任せろ。

 ぶっ殺す――ことはしないけど、誰の妹に指図しているかわからせてやる。


「――おい、ふざけてんのはどっちだ?」


 二人のやり取りに注目してた女子達は、一斉に俺を見た。

 その中には加那と七海もいる。

 俺を見てスゴく驚いているようだ。


 バガアアアアアン!!!!


 丁度いいところにあった教卓を蹴飛ばした。

 景気よく吹き飛んで、横に倒れる。

 蹴ったところは大きく凹んだ。


 みな唖然としている。


 この世界の男は総じてモヤシ、つまりなよっちいからな。

 温室育ちの箱入りみたいなもんだ。

 俺の行動はさぞ驚愕に値するだろう。


 ズカズカとその男子生徒に近づき、ガン飛ばして睨み付ける。

 周囲は俺の通る道をさあっとあけた。

 加那と七海が誘導したようだ。

 あとでご褒美をやろう。


「てめえは何だ? 誰の妹に指図してやがる? 死にてえのか? あ?」


 殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺呪呪呪呪呪呪呪呪滅滅滅滅滅滅……


 頭の中でこのくそ野郎を滅ぼすことだけを考える。

 俺から殺気が漏れて、周囲の温度が一気に下がった。

 

「な、何だお前は! 僕は男だぞ! 何が悪い――」


「俺も男だが? 言いたいことはそれだけか? それなら早く死ね。安心しろ。未成年だ、拷問はしないでやる」


 胸ぐらを引っ付かんで、教室の中央へぶん投げる。

 ハデな音をたてて、ヤツが吹っ飛んだ。


「いいいい! 痛い痛い痛い! 死ぬう、死んじゃう!」


 うわキモ。

 泣きやがった。

 その程度で死ぬかよカス。

 元気いっぱいに泣きわめいておいてそりゃあないぜ。

 目と耳が穢れる。

 こんなウジ虫冬華と同じ空気を吸うことさえ許せねえな。

 駆除しなければ。

 

「じゃあなインキンタムシ野郎。来世でも汚物にまみれてろ」


 足を持ち上げ顔面を踏み潰す。


 その寸前、誰かに制服の裾を握られ止められた。

 冬華だ。


「お、お兄ちゃん!? もういいよ!」


 うん、そうか。

 冬華がいいなら止めよう。

 口では死ねとか言ったけど、殺すつもりは無かったからな。

 まあ、顔面整形は施してやろうとは考えていたけども。


「良かったな冬虫夏草便所コオロギ。冬華に感謝しろよ。ああ、あと余計なことしやがったらてめえを次こそ殺しに行くからな? おい、返事はどうした種無し野郎」


 未だに死ぬ死ぬ言っている男子生徒をつま先でつんつん(、、、、)蹴る。


「ぐえ! わ、わりまじだあ! ご、ごべんなざいいい!」


「冬華だけじゃなくて、他の女の子にもだぞ? いいな?」


「は、はい! ……うう、やっぱり学校なんてくるんじゃなかった……」


 ニート野郎が。

 死ぬまで出てくんな童貞が。

 ああ、この世界の童貞はあっちの処女的な扱いだったな。

 んま、コイツは不能そうだし?

 喪男のまま逝ね。

 こ奴が生殖したらもはや遺伝子汚染、バイオハザードである。


 あーあ、新学期早々問題起こしちゃったな。

 完全に怖がられたよね。

 

 と思って回りを見た。


「「「「「「はうぅ……女性を大切にしてくれる俺様系王子様……守られたい」」」」」」


 訂正。

 完全に新キャラ定着しました、の間違いでした。

 おいおい、マジかよこの世界。

 大丈夫か?

 ただの傷害事件だぜ、これ。


 さすがに加那と七海は――


「普段は天然天使みたいなのに……ギャップが堪らないわ……♡」


「やっぱり本物のルシファー様じゃん……あの暗い笑顔……いいなぁとーか……」


 ――ダメでした。

 周りの女子より酷いです。

 イっちゃってる。


 天然て。

 むしろ人工ですが。

 クールな顔してチョロすぎだろ。


 なあ、やっぱりって何やっぱりって。

 しかもルシファー居るのね。

 驚きだよ、共通点ありすぎだろこっちの世界。


「はあ……さ、帰ろう冬華。加那、七海。戻っておいで。この際だから、一緒に帰る?」


 一刻も早く逃げ出したい、この空気。





 その後、俺は特にお咎めは無かった。

 しかし案の定、2年生の女子からは王子様って呼ばれるようになったのは言うまでも無い。


 レベル的には少年院送りだけどね。

 ホントに大丈夫かこの世界の法律は。

 助かったけどな。





■□■□





~裕璃~


「裕璃! 冬夜くんと親しいってほんと!?」

「名香野さん! 冬夜くんはどんな人なんですか!? 噂通りの人ですか!?」

「連絡先知ってるのってホント!?」

「ヤった? もうヤったの!?」


 冬夜くんが帰ってすぐ。

 朝の続きで、クラスの皆から質問攻めにあっている。


「お、落ち着いてよ! 順番に話すから!」


「「「おなしゃす!!」」」


 みんなに囲まれたまま、私は今までの事を話した。




「……ってわけなんだ」


 みんなは羨ましそうに私の話を聞いていた。


「ホントだったんだね、天使様」


「うんうん、つくづく同じクラスになれてよかったよ!」


「ホント。勝ち組だよね、アタシたち」


 みんなは口々に冬夜くんを讃える。

 なんだか私まで誇らしくなってきちゃった。

 

「それで、どうかな? 誘ったらOK貰えると思う?」


「裕璃が誘えばOK出るんじゃない? 帰るときも名指しで挨拶されてたしぃ????」

 

「「「そうね……名指しだしぃ?」」」


 うう……何で責められてるの、私。

 

「た、多分誰が誘ってもOKくれると思うよ? 皆で行くってわけだから……多分だけど」


 そうなのだ。

 私たちは、冬夜くんをあることに誘うって流れになった。


 それは、親睦会!! という名目の、『冬夜くんとのお食事会! 出来ればそのまま頂きたい、本人も』、というもの。


 朝の緊急会議で、満場一致の採決を得た。

 何としてでも成功させたい。

 

 会場は色々候補が出た。


 カラオケ、バイキング、お好み焼き、鉄板焼き、焼き肉、うどん、懐石、すし、海鮮、海の見えるラブホテル、夜景が素敵なラブホテル、プールの付いてるラブホテル、ご飯がおいしいラブホテル、ベッドが豪華なラブホテル等々。


「やっぱり、難しいわね」


「男の子一人だもんねぇ……」


 そうなのだ。

 狼の群れが、一匹の子ヤギを食事会に誘うようなもの。

 ついていったら、子ヤギがメインディッシュになる未来は確定だ。


 果たしてこの誘いにのる子ヤギ、もとい冬夜くんはいるのだろうか? いや、いてほしい。

 

「あ。なんだ、一番可能性の高い場所があるじゃん」


 一人の娘が、ある場所を告げた。


「「「「「「ああ、そこね」」」」」」


 なるほど……

 確かにそこならかなり確実だよね……


 盲点だったよ。


「どう? いけるかな、裕璃」


「うん……うん! いけるよ! わかった、私に任せて!! 絶対にOKもらって見せるから!」


 うおおおお! なんかみなぎってきたよおお!!


「名香野 裕璃特攻隊長! これより出撃するであります! 各員、朗報をもちかえるから期待するように!!」


「「「「「「はっ! 隊長、ご武運を!!」」」」」」





 待っててね、みんな!

 

 必ず冬夜くんにOKを貰ってみせる!!


 決戦の地は、レストラン名香野(私の家)!!





■□■□





 そんな話は露知らず。


 俺は家族3人で、夕食(ゆうげ)の食卓を囲っていた、


「それでねお母さん! お兄ちゃんがドーンてきて! 無茶苦茶カッコよかったんだよ!」


「冬夜くん……まるで小説の主人公みたいね~。お母さんも見たかったわ!」


「もうね、みんなウットリしてたよ! 明日の学校楽しみだなぁ♡」


 まるで、私を巡って男同士で争ってたみたい……などとほざきやがる冬華。

 まあまあ、素敵ね? お母さんも私のために争われたいわ……などど便乗しやがる母さん。


 冬華……眼球は無事か?

 母さん……脳は詰まってるか?


 何の出来事を話しているんだ?

 俺と同じ時間軸を歩んでいたよな、あの時。

 

 美化し過ぎじゃね?

 

 あと、なんか俺とヤツが如何にも対等に喧嘩しました、みたいなに言ってるけど。

 

 違うからね?

 俺の一方的な勝利だからな?

 理不尽な暴力だからな?

 ある種、虐殺に近いよ。

 

 あの場面俺の過剰暴力、ただのやりすぎだよ。

 裁判したら、俺有罪(ギルティ)


 こんな感じで、話題はずっとあの処刑について。

 そんなに話すの? まだ話すの? ってレベルで話してる。

 もう喧しい姦しい。


 『女3人寄ればかしまし』なんてよくいったものだがな、二人でもかしましいわ。


 はあ、もう筋トレしよ。


「ごちそーさまー」


 語り合う二人を尻目に、食器を片して自室に向かう。

 

「ういー……」


 ベッドに体をぶん投げて、仰向けに天井を仰いだ。


「何だかんだあったけど、学校ってのは新鮮だな~」


 ぼやきながら脚上げ腹筋をする。

 おっと、前に柔軟をしなければ。

 効率が下がる。



 ~♪~♪


 あ、電話だ。


 誰だ、裕璃だ。


「はい」


『冬夜くん? 裕璃だけど……』


「うん、どうしたん?」


『あのね、あの~実はクラスでこんな話が上がってるんだけど……』


 そんな風に、俺にクラス会の話を伝えてきた。





『って事なんだけど。と、冬夜きゅんもきましゅか!?』


「あ、噛んだ。あ、ごめん、つい声が(笑)。うんうん、いいよいいよ、参加する。今週の日曜の夜で、裕璃んちだね? 参加費はいくらぐらい? 20万?」


 ついぽろっと出ちまった。

 許せ。


『~ッ! っしゃあぁ!! はっ! そうだよ!! あ、あと冬夜くんの参加費は要らないからダイジョブ!! お金とるなんて滅相もない! 不敬罪で死刑だよそんなの! じゃ、そういうことで、みんなに伝えるね! また連絡するから! ばいばい!!』


 ねえねえ、突っ込んでよ20万にさ。

 参加費じゃなくてさ、金額にさ。

 突っ込みを入れてほしかったよ、俺は。


「はい、じゃ明日学校でね。おやすみ」


『お、おおおおお!? お、お休みなさい!!』


 ふう。

 しかし参加費とらねえとか。

 下心丸出しのナンパ野郎みたいだな。

 そんなに俺に来てほしかったのか。

 この世界の女性は面白いな。


 

 さて、続きをしますか。

 

 汗かいたら、さっさと風呂はいって寝よ。

 今日は疲れたよ。


 色々とな。



 あ、冬華のベッドに潜り込も。

 あいつも満更でもなさそうだし、ハアハアしてるから別に拒まれないでしょ。


 WinーWinってやつだな。


 うん、日曜日が楽しみだ。




















 


 


■□■□





~その日の夜 冬華~


「はあ……ん、あ……はぁ、お兄……ちゃあん……♡」


 ガチャ


「ッ!?!!!??!?!?」


 誰って、ええええええええええ、おに、お兄ちゃん!?


 不味い不味い不味い! 不味いよ!!

 ど、どどどどどどどーしよ!

 あ、あああ入ってきた!

 バレませんようにバレませんようにバレませんように!


 不潔な目で見られたくないいよぅ…… 


 モゾモゾ


 うう、寝惚けてんのかなぁ?

 ここ一階だよぅ。

 あ、寝ちゃった。


 ……おっきな手、まつげながぁい。


「……夢、みたい♡」


 吐息が甘くてくすぐったい……


 あ、、、余計濡れてきちゃった……


 お、お兄ちゃんの手……


 起きない、よね?

 寝てる、よね?

 

 ちょっとだけ、ちょっとだけだから……


「……あ……」






 このあと5回より先は数えきれなかった……


 

 もうっ、お兄ちゃんのバカ……♡







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