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episode six

 そんな感じで、春休みは順調に消化されてった。

 筋肉もついてきたし。

 社会科目の勉強も終わったし。

 皇国史と世界史、それから現社をやった。


 高校生にも負けません。


 ただ、いくつか起こったことがある。


 俺な。

 指定第二都市で有名人的なものになっちまった。

 あだ名は『天使』。

 バカじゃね。

 『氷の美貌』のがマシだったわ。


 毎日の走り込みを目撃され続け、あげくには雑誌の取材がきたし。


 ビビったわ。


 芸能界からもオファー来たよ。

 だめだめ、俺が行ったら今の男性芸能人みんなカスになっちゃうぜ?


 それと同時に、女性ランナーがくっそ増えた。

 理由?

 簡単だよ。

 俺に会うため。


 ……動機が俗物すぎて素晴らしい。実に人間味があふれていると思うね。

 まあ、走ることはいいことだけどな。


 後は、レストラン名香野が俺の行きつけってことで、常時フィーバー状態に。

 裕璃がヒイヒイ言ってた。


 ランナー増加の影響で、第二都市にあるスポーツ量販店『ゼビュー』が、最高の売り上げを出したとか何とかってのも聞いたな。

 ほら、俺がウェアとか買いに行った店だよ。


 で、いっちばん驚いたことがある。

 

 何かって、俺、ぜんっぜん学校行ってなかったわ!


 よく進学できたなってレベルですよ。

 

 制服探したんだよ、中学の。

 どんなもんなのかなってさ。

 そしたらやたらピカピカな学ラン出てきたん。


 この手の服は普通、1年も着ると臀部や肘が擦れてテカテカになる。

 一切ないわ。

 マジ新品。


 暗黒の帝王時代の片鱗を感じて、慌てて通信簿探しました。

 ありました、通信簿。

 見ました。


 二年次……


 出 席 日 数 ゼ ロ ! !


 バカじゃねコイツ()

 何考えてたんだコイツ()

 理解できねえわ。


 こんなの裕璃のこと覚えてるわけないって。

 じゃあ何で裕璃は俺のこと知ってたんだろうな?

 ま、どうでもいいか。


 とにかく、これじゃ普通進学できないよね?

 俺、前世学校行ってなかったからわからんけどさ。

 無理だよね?

 

 なのにさ、教科毎の評価の欄見たんだよ。

 行ってないんだから評価出来ないじゃん?

 噂に聞く1か斜線、どっちかじゃねーかなーって思った。


 だが甘い!


 3。

 

 3でした。


 おおう……

 ここまで男は優遇されてんのか。


 ジーザス、何て言うと思ったか? まさか。

 

 ぶっちゃけ助かったわ~。

 最高この世界。


 まあ、こんなもんかな。


 あ、後、この前母さんをからかったじゃん?

 『切なくなったら――』ってやつ。


 この前、なんと、夜半に、来ました。

 俺の部屋に。

 枕抱き締めて。

 目をうるうるさせて。


 結果だけ言うとな。


 んん、まあ、うん、ヤった。


 すいませんお巡りさん、事案発生です。

 犯罪者は俺です。

 リアル近親相姦です。


 でもさ、しょうがねえじゃん?


 肉体的には親子なんだろうけどさ、俺中身別人な訳で。

 いい女にしか見えない寧ろ見えなかったら不能野郎だろ。

 ソコんとこ、どうよ?


 まあまてまて。


 確かにヤったけれども。

 

 母さん覚えてないぜ?

 

 紳士諸君、覚えておくといい。


 ベロンベロンになるまで酒を飲ませて、泥酔覚めやぬ内にヤれば人は記憶に残らない! が、犯罪、若しくはそれに抵触した行いですので、実行の際は合意の上でのご注意を。


 この世界に来て、初のエッチが母さんて。

 スペクタクルマニアックだな。

 舐めたいとかいってた人に、マニアックって言っちゃった。


 すいません、俺の方がレジェンドマニアックでした。

 反省してます。


 幸い冬華にはバレてない。

 つまり万事オッケー問題なし。


 はい、この話題おしまい。


 ま、面白かった出来事はこんなもんかな。


 

 

 追伸


 こっちでも絶倫でした。





■□■□





「じゃ、行ってくるね」


「「え?」」


「え?」


 新学年が始まる日、玄関でのやり取りです。


 どこに、え? の要素があるんだ?

 こっちが、え? だよ。


「と、冬夜くん歩いていくの? さすがに学校はお母さんが送っていくわ? ね?」


「そうだよお兄ちゃん! そこらのジョギングとは訳が違うんだよ! 学校という精神が成熟しきってないすなわち自制心が最も薄くまた熱きリビドーにあふれた中学諸姉がごまんと詰め込まれたいわば天然人工の闘技場的な! それに今この町じゃお兄ちゃん有名人なんだから、気を付けなきゃ!」


「そうそう、冬夜くんの事が載ってる雑誌、会社の友達に見せられたわ! もう鼻が高くって、さすが私の愛息子ね!」


「自慢のお兄ちゃんね!」


「「ねー!」」


 ……。


 妹よ、お兄ちゃん実はもう、暴漢? 暴女? に襲われたんだ。

 早朝のランニング中にな。

 ナイフを持った、3人組の美女だった。


 おとなしくしてれば危害を加えないとか。

 おとなしくするかボケ。

 パンピーがナイフで武装しようがチョロいんだよ。

 俺からすれば、カナブンかフンコロガシかの違いみたいなもんだ。

 

 ナメクジとカタツムリでも可。


 二人を瞬殺しましたよ、ええ。

 まあ、殺しはしてないけどね。

 躊躇ったわけじゃなくて、必要がなかっただけ。

 必要なら老若男女問わず必ず殺すけど。


 で、残りの一人が意外と手練れだった。

 

 ん? どうしたかって?

 ぐっと近づいて顎を蹴り抜きました。

 容赦はしないよ。もう死にたくないし。


 なんか、元男性警護官っつーエリートだったらしい。

 聞いてもいないのにベラベラ話してきた。

 なにもしてないのに、いきなり首にされたんだと。

 その復讐で俺を選んだとか。

 で、あわよくば妊娠したいって泣きながら言ってた。

 普通に来れば相手したのに。


 皆美人だからな。

 

 ま、そんな風に、その場を切り抜けた。


 閑話休題


「いや、大丈夫だよ二人とも。皆いい人ばっかりだし、仮にヤバイ人がきてもさ。この前3人組逮捕されたじゃん? 市民の協力でとか言ってたやつ。協力したの俺だから。ね? 大丈夫でしょ――」


「「けがは!? キズは!? なにもされなかったの!?」」


 ああもうメンドクセエナ。





■□■□





 やっとの事で徒歩通学を認めさせた。

 泣き落として、抱き締めて、もう2度とゴメンだ。


 これで冬華と二人で通学できる!

 やったね。


「冬夜くん、気を付けてね? 冬華、冬夜くんをお願いね?」


「わかったよ母さん。母さんも事故とか気を付けてね」


「まかせて!」


 じゃ、行ってきまーす。

  

 冬華とならんで歩き出す。

 途中、母さんの乗る車に追い抜かれ、手を振った。

 明らかに高級車である。

 そのうち俺も免許とろ。

 来年大型2輪とれたよな?

 教習所いくか。


「お兄ちゃん!」


「何だ?」


「せ、制服似合ってるよ! 王子様みたい!」


 王子て。

 

「あ、うん、ありがと。冬華も可愛いよ?」


「え、ええええ!? 普通だよぉ!」


 とか言いつつ小さくガッツポーズしてるのは誰かな? ん?

 

 しかし、余裕を見て家を出たんだけどな。

 時間じゃなくて、人が少ないって意味で。

 だけど、結構居るわ。

 小学生、中学生、高校生。

 大学生もか?

 

 皆一様に俺を見る。  

 今は俺を見て固まるのではなく、頬を上気させアッチの世界に旅立つ人が多数だ。 


 別の意味で慣れが必要だった。


 そんな風に歩いて、学校が見えてきた。

 いつの間にか、俺たちの後ろには、恐らく学友たちであろう女子生徒が、ぞろぞろ連なっている。


 何故だ。


 冬華よ、そんな自慢そうな顔をしなさんな。

 はあ、やっぱり送ってもらった方が良かった……か?





■□■□





 昇降口に貼られているクラス表を見て、教室へと向かう。

 冬華とはここでお別れだ。

 俺は2階、冬華は3階だからな。


「ばいばいお兄ちゃん」


「おーう、じゃな」


 冬華と別れた。

 そう言えば、クラス表を見て絶望の縁にたったような顔してたやつが結構いたな。

 反対に嬉しすぎてトリップしてるやつも。

 

 何だったんだろう?


 あー、にしても。

 上履きとか初めて履いたわ。

 新鮮だ。


 3年3組、出席番号29。

 ム、から始まるから後ろの方かなって思ってたけど、ケツだったとはな。


 お、ここだ。


 ガラガラガラ


 前のドアを開けて、足を踏み出した。

 初めての青春の、大いなる一歩だ。


「「「「「……天使」」」」」


 これさえなければ、だが。


「キタキタキタ夢じゃなかった!」

「クラス表を見た瞬間確信したこれ運命だ」

「ナマ天使……」

「もう死ねる」

「一生自慢するわ」

「ヤりたい」

「嗅ぎたい」

「踏まれたい」


 等々。


 運命じゃない。

 こらこら、最後の三つ。

 心の内に留めなさい。

 踏まれたいって、前世で言うあれ?

 M男がせがむ女王プレイってやつ?

 こっちだと何て言うんだろうな。

 男王プレイか?


 限りなく、いや、少しどうでもいいけどね。


 これから一年間共に過ごすわけだし、仲良くするに越したことはない。

 皆可愛い娘ばっかりだしな。


「おはよう、皆。よろしくね☆」


 爽やかな笑顔に、ウィンクを乗せて。


 この料理は、最高級のフォアグラに……ってか。

 料理名じゃなくて。

 俺の行動です。


 効果は抜群だ!


 『ズキューンッ!』


 って、音を聞いた気がした。

 皆が彫刻となり静かになった教室を悠々と席に向かった。

 ドアから一番奥の列、窓際だな。

 その列の一番後ろ。


 そこに着席して、鞄から本を出す。

 『star war』というシリーズの一作目だ。

 全部英語だが、俺にとっちゃ日本語にならんで母国語みたいなものなので普通に読める。

 

 しばらく読み進めて、本を閉じた。

 朝のホームルームまであと十分くらいか。

 ガヤガヤした雰囲気がいいな。

 俺の邪魔をしちゃならんと、みんな気を遣ってくれている気がする。

 街のセキュリティといい――例外はあるが――モラルが行き届いている。

 

 お、あれ裕璃じゃね?

 おんなじクラスか~。

 声かけてみよう。


「裕璃」


 ――シン――


 うお! 

 いきなり静かになったよ。

 なにこのクラスの一体感。

 シンクロナイズか。


「と、冬夜くん! おはようございます!」


「ああ、おはよう。おんなじクラスみたいだね。良かったよ」


「うんッ! うんッ! 夢みたいだよ! 私もクラス表の前で絶望の海に沈みゆくのかなって思ってたけど、ビックリ天国だったんだ! 桃源郷はここにあったんだって!!」


「お、おう。そうか」


 理解。

 あの絶望とトリップの正体はこれか。


「ま、一年間よろしくな。裕璃」


「こ、こちらこそ! よろしくお願いします!」


 言い終えた裕璃の手を、あの時とよろしくニギニギしてやる。

 おうおう、真っ赤になっておるわい。


 友達の輪に囲まれた裕璃。

 質問攻めにあってるみたいだな。

 

 俺は来るもの拒まずだから、みんな積極的に話しかけてくれてもいいのに。

 まだ無理か。

 みんなの知ってる男って、きっと俺とは違うんだろうな。


 同学年に男がいないから、どんなもんだかわからないのがちと気になるな。

 2年には3人男がいるらしい。


 冬華に関わったらぶっ殺す。

 スペシャルな拷問付きでな。

 フルコースだ、遠慮はするなよ?


 そいつらのところにわざわざ行くってのもな。


 1年生はしらない。

 入学式は明日だし。

 

 俺たちは今日、始業式やって入学式の会場作成と掃除だっけか?

 そんなようなことを、冬華に聞いた。


 キーンコーンカーンコーン……


 あ、チャイム。

 女子たちが一斉に席に着く。

 

 こんなに同い年に囲まれたのは初めてだ。

 すっごく感慨深いな。


 ガラガラガラ


 先生が入ってきた。

 例に漏れず美人である。

 エロい。


「はい、じゃあ……相場さん。号令をかけてくれる?」


 おお、これが教師ってやつか。

 出席番号1番の娘が、号令をかけた。


「起立 礼 着席」


 おはようございます、と皆が口にする。

 すげーすげー。

 俺にとっちゃどれもこれも新鮮だ。


「皆さん、おはようございます。この教室の担任になりました茅野 凛と申します。しってる人もいると思うけど、担当科目は英語よ? 1年間、よろしくね」


 カヤノ リン、茅野 凛ね。

 

 担任の先生まで美人とか、いいねぇ。


 そのあとも今日の流れとか説明された。

 自己紹介とかは、明日するそうだ。

 始業式をやって、掃除をしつつ会場作成。

 今日はそれで、お昼前に放課だそうな。


 給食とやらが楽しみだったんだが、仕方がないか。


 さてさて、俺の学校生活はどうなることやら。


 面白くなって――こねえな。

 

 特には。


 さて、始業式に行きますか。

 なるほど、廊下に並ぶのか。

 一番後ろだから楽でいいや。



 いい匂いしまくりで幸せっす。



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