episode fifteen
「ここ、どう訳すんですか??」
「ああ、これは『~すべきだ』って訳せばいいんだよ。目上や友人には使っちゃダメだよ?」
「どうしてですか?」
「上から下に言うような言葉だからな。強制的にやれ、みたいな意味がある」
「じゃあ、~した方がいいよって、友達とかにはどう言えばいいんですか?」
「ああ、had betterじゃなくて、ん~couldを使えばいいんだよ。そうすれば同じ『すべきだ』ってなるけど、含まれる意味が優しくなるからね」
「なるほど。ありがとうございます! 冬夜さん、スゴく頭いいんですね!」
「はは、ありがとう。加那だってしっかりやれば出来るようになるって。後はどんどん使うだけだよ」
「はい!」
何をしてるかって、ご覧の通り勉強だ。
もう3時間くらいやっている。
やはりハイスペックなだけあって、授業の理解レベルとか結構高い。
冬華や加那は言わずもがな、ちょっとおバカそうな七海もかなりできている。
やっぱこの世界の女性は基礎スペックからチートだわ。
進化ってスゴい。
で、進化繋がりで生物的な話になるんだけど。
近交弱勢って現象がある。
簡単に説明すると、近親者で交わり血が濃くなっていった結果、精子やその他に奇形が増えやすくなるって話である。
ハンディを負った子が生まれやすくなってしまうのだ。
日本が近親相姦を禁止していたのは倫理的な問題もそうだが、生物学的な問題もいくつかあったからなのである。
調べた感じ、近交弱勢は高校の生物で習うと思う。
今から冬華に子作りを諦めさせる言い訳を考えております。
はい。
今は学生だから~とかでごまかせている。
避妊万歳。
「ルシf……とーやにぃ、これどうやって解くの??」
「ん? ああ、この時間をXで置き換えてごらん」
「うん……あ、解けた」
「必要なところだけピックアップして考えていくといいよ。文章題はどんな計算式を使うか突き止めるかがモノをいうからな。それさえ分かれば、後はただの計算問題だ」
「うん! ありがととーやにぃ」
「おうおう、しっかりな」
ぐしぐし頭を撫でてやると、気持ち良さそうに目を細める七海。
なんだかゴロゴロと幻聴が聞こえてくる気がする。
本当に猫っぽいよな。
■□■□
それからさらに20分ほど経って、冬華がうーんと伸びをした。
「もう疲れちゃった!」
同意。
激しく同意。
さすがにぶっ続けで三時間ちょいはキツい。
いくら美人に囲まれていようともな。
世の非リア諸君は平気なのかもしれないが、俺は前世も今世も勝ち組なんだ。
無理なもんはムリ。
バチン!!!
「痛ってえ!!」
「わ、どしたのお兄ちゃん?」
「……いや、なんか……ううん何でもない」
何か、うん、何かしらに何処かしらを叩かれた。
とても痛かった。
う~ん、まいっか。
「じゃあ、そろそろ終わりにすれば?」
「5時……そうだね、今日はこれでやめよっか」
「そうね」
「おーう」
わらわらと勉強道具を片付け始めたみんな。
俺は読んでいた歴史の教科書を閉じるだけだ。
二学期から、社会は公民になるらしい。
四人分のコップを流しに持っていき、玄関に向かった。
二人の見送りだ。
然り気無く気を使って、俺という存在を十二分にアピールする。
策士。
「それじゃ、冬華。またね。冬夜さん、お邪魔しました。お陰で不安なところが無くなりました」
「ああ、良かったよ。気を付けて」
「ばいばいとーか! とーやにぃどーもありがとうございました!」
「んん、頑張れよ」
「じゃーね、二人とも!」
二人は一緒に玄関をあけた。
だが、七海がこっちを振り返り、期待半分くらいの表情で俺を見てきた。
「あ、あのとーやにぃ! こんど、こんど泊まりに来ても、いい?」
「な、ちょ、七海ずるいわ! あ、あのじゃあ冬夜さん、私も……?」
おぉぉぉぉぉっと!
ここで冬夜選手にデザートが転がり込むチャアァアアンス!!
さあ、冬夜選手どうでる!?
「俺は別に構わないけど、後で母さんに訊いてみるね? 二人の家はいいのかい?」
冬夜選手、二人の事を逆に心配する紳士をアピールだ!
セコい、実にセコい。
小説に出てくるような男がとる態度ばかりとっているぅ!
「アタシのお母さんはいっつも仕事で居ないから! だいじょーぶです! お父さんには会ったこともありません!」
「私の家もそうです。父の名前すら知らないですね、そういえば」
カウンターが決まったぁ!!
策士、策に溺れたぁ!!
地雷を踏んだ感ありますねぇ?
以上、霧桐家玄関戦。
実況は冬夜、解説は冬夜でお送りいたしました。
「そ、そうか。じゃあ、オッケー出ると思うし、楽しみにしてるよ。な? 冬華?」
「うん!」
「「わあ! やったあ!!」」
二人を見送って玄関を閉める。
ふう、母ちゃんが忙しいってのは想定外だった。
父親の扱いは、何処の家でもあんなもんか。
俺も彼女たちの父親がブタくんとか思いたくない。
彼女たちの母親がブタくんに抱かれるとか考えたくもない。
胎に精子が入ってるの想像するだけで殺意。
「? どうしたの、お兄ちゃん」
おっと、ボケッと突っ立ったままだったな。
「ああ、いや。何でもない」
「そっか。あ、あの、じゃあ、二人とも帰ったし、お母さんはまだ帰ってこないんだよね~……?」
ちら、ちら、と俺を見てくる冬華。
目は潤み、頬はほんのり上気している。
ハハン、わかったぞ。
さてはお前、発情したな?
「そうだな~……ちょっと外走ってこようかな」
だがあえて気づかない振りをする!
あくまで受け身だ。
常に受け身を心がける。
酒に酔ったときのみ、アクティブになるのだ! という設定。
「あ、あの! お兄ちゃん……シても、いい?」
俺の裾をつまんで、そう告げる冬華。
チョロい。
題するなら、『俺の妹がこんなにチョロいワケがない。』ってか?
だがしかし、事実。
嗚呼、何て甘美なる哉。
素晴らしい。
素敵な妹をもって幸せだよ。
心も体もな!
「……ああ、いいよ」
真顔のまま顔を近づけ、耳元にこそっと告げる。
あーはよヤりて。
■□■□
そんなこんなで、晩ごはん。
俺は男性警護官の話を出してみた。
「……ってわけで、やっぱり一人雇ってほしいな~って」
「そう! やっと決めてくれたのね! 冬夜くん、いつも一人で出掛けるから心配だったのよ」
「警護官の人なら信用できるなね! 私も警護官目指そうかな~……そしたら1日中お兄ちゃんと一緒にいられるね!」
あっさりオッケー出ました。
妹よ、目指すのであれば、お兄ちゃんが手伝ってやろう。
要人警護のイロハと戦闘技術、それから殺人技を叩き込んでやるよ?
体に直接な。
響きがエロいよね、体に直接って。
「ありがと、母さん。冬華、一緒にいるだけじゃ仕事にならないぞ?」
ハハハ、と優しく笑いながら、内心は体に直接叩き込む妄想をしている。
あ、やべ股間が。
「んん、ところで母さん。今日冬華の友達が来てたんだけど……」
そこで切って、冬華の方へ顔を向ける。
うん、どうやら伝わったみたい。
「あ! そうそうそれでね、加那ちゃんと七海ちゃんっていうんだけど、二人が今度泊まりに来たいって言ってたんだけど、いい?」
「ええ、お母さんは別に構わないわよ?」
「やった! ありがとお母さん! 二人とももうお兄ちゃんにメロメロでね~。二人ともいい子だから、信用もできるし!」
「ふふ、さすが冬夜くんね! 会社でも、冬夜くんのお話聞きたい子がいっぱいいるのよ!」
「すごいねお兄ちゃん!」
「買いかぶりすぎだって、みんな。俺はそんな大層な人間じゃないぜ?」
被ってる被ってる被ってるよぉ俺! 猫被ってんだよお!
「そんな所がもうほんと……自慢のお兄ちゃん!!」
「うふふ、またみんなに自慢することが増えたわ」
よし、これで加那&七海は確保した。
さらにすっとぼけて謙虚ぶりをアピール。
銘柄、霧桐冬夜の株価は急上昇。
いいぞ母さん、もっと話せ。
俺を金持ちの会社役員たちに知らしめろ。
いすれ直接会ってやろう。
金持ちの知り合いは居て損はない。
どうせ美人だ、仲良くしてえよ。
ベッドの上で。
身も心も、ついでにお財布もウハウハになることだろう。
金もあって困ることはねえからな!
あーほんとこっちの人生ベリーイージーマジ感謝。
50年後には俺の子孫で世界を掌握したい。
いや、やりようによってはイケるかも?
文字通り、ヤりようによっては。
野望はでっかく持つのがベスト!
夢は見るだけタダだからな。
「そんな大袈裟な……それじゃあ、母さん。今度役所に申請出して、警護官派遣センターに行こうね」
「わかったわ。なるべく早く、休みを貰うわね」
「私も行く!」
イッただろ、さっき。
ベッドの上で3回も。
なんちって。
「冬華も連れていくって……それじゃ、宜しくね母さん。ごちそうさま」
苦笑いを浮かべながら、食器を片付ける。
例のごとく、俺の頭の中はさっきの濡れ場を思い出していが。
冬華の具合は最高なんだ。
ほんと思い出すだけで……おっとマズい。
はは、落ち着けって。
自室に向かって、今度は明日の事を考える。
明日は裕璃の家、つまりレストラン名香野で昼食をとって、そのまま勉強会なのだ。
参加者は裕璃を含んだクラスメイト10人くらい。
きっと俺を交えて11Pになるんだろう。
てか、なってほしい。
寧ろなるように持っていく。
クラスメイトたちとは、定期的にエッチをしている。
向こうからお願いしてくるのだが、けっしてがっついては来ない。
攻め3割、受身7割的な感じ。
理想のセフレだわ。
最近この発想クズだ~って思うけど止められない止まらない。
俺男だし?
男の中の男、トゥルー男。
そんなんだからしょうがないよね。
クラスのみんな、あの大乱交パーティーから健気で献身的で可愛くてしょうがない。
つまりみんなが悪い。
俺悪くない、OK?
JCの盛り合わせとか最高かよ。
この世界の女性の性欲は元の世界の男並みだからな。
乱れっぷりがグレート。
明日が待ち遠しいぜ。




