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猫又の事情



≪猫又の珠子視点≫


 母屋の部屋の片付けをちょっとやって、あとは古雑誌を見たり新聞を読んだり。ひよろ志が使ってない時はパソコンをいじったり。そればっかりじゃ体に良くないね。人に見つかると困るから外に出るなと言われているけど、引きこもっているのも退屈。猫の姿なら問題無いよね。

 まず家の周囲を確認。家の前の畑はひょろ志が豆とか野菜を植えてる。『農業してないと税金が怖い』からだって。虫はいるけど鼠はいないね。そして村の猫たちと挨拶。といっても、あたしはあまり馴れ合うの好きじゃないし、向こうもこっちが唯の猫でないのはすぐに気づくから、ひととおり軽い挨拶ですれ違い。

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 私は街の野良猫の子として生まれた。母猫は私と同じ三毛。父親は知らないが、おそらく町の親分猫。4匹生まれたうち乳離れするまで育ったのは私ともう1匹だけだった。母親も鼠を捕るのが上手かったが、私もいつのまにか狩りを覚えた。そして成猫になり、町内の有力猫の子を身籠もった。野良猫の一生は短い。成猫になればすぐに子を産んで育てる。運が良ければこれを何度か繰り返し、病気か怪我をすればそれで終わり。

 私は若くて体もまだ小さかった。3匹の子を孕んだけれど、それらを産んで育てあげる力は無かった。お腹が大きくなると体の動きが悪くなる。じゅうぶんに餌を獲れなくて仔に栄養がまわらなかった。なんとか産んだものの、すべて死産だった。私も力が尽きてそのまま意識を失った。


 気づくと若い女の胸に抱かれていた。どうやら私はこの家の縁側の下で倒れていたらしい。生きられなかった私の仔を葬り、弱った私を介抱してくれたのはこの商家の娘。なんとはなしに語る話によると、あるお武家の所に奉公に行き、そこでお手つきになって男子を産んだと。しかし難産のすえに産んだ子はその武家に取られ、この娘だけ家に帰された。人と猫の違いはあっても、産んだ子を育てられなかった者として、なんとなく通じるものがあったのだろう。気落ちして臥せっていた娘も私も少しづつ元気になって行った。娘は店に出て商売に励み、私は店や倉で鼠を追った。ここは雑穀も扱う店だったので、私は鼠捕りが上手い猫と大事にされた。

 店の主人はすでに高齢でじきに世を去った。長男夫婦が跡を継ぎ、商いは滞りなく続いた。しかしこの夫婦には子ができなかったので、火事で家を失った遠縁の娘を養子にした。この娘は幼かったが聡明で、私はこの子の遊び相手としてあてがわれた。しかし私はすでに猫としてはかなり高齢であり、じきに重い病にかかってしまった。死を悟って家の床下へ入ったところ、不思議な声が聞こえた。それによると、私の母方の血筋のひとつは「繭神様の眷属」の神猫だとか。その話は「鼠捕りが上手いから眷属にならないか」という誘いだった。しかし私は幼い娘と暮らすことを望んだ。

 老猫が行方不明になった翌日にあらわれた同じ三毛の子猫は、生まれかわりとして家に受け入れてもらえた。私は幼い娘が成長するあいだずっと一緒に過ごし、その後も代々この家の子どもと暮らした。そして年経て私は猫又になっていた。

 銀狐の妖と出会ったのはその頃。変化して人として暮らすすべを教えてくれた。妖狐様の(悪)知恵を借りて、人の姿でお店のお嬢さんの友達となり、一緒に女学校へも通った。けっこう楽しかったけど、これ、猫として働きすぎじゃない??

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 村の猫たちの情報網を甘く見ていたようね。今日、繭神様からのお使いという茶虎猫があわられたのはびっくり。山向こうの町の神社は繭神様も奉られているからってお誘い。でもね、いまさら神使で宮勤めなんてめんどいよね。


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