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春に向かって

 寒いです。それでもこのへんで寒さも底でしょう。陽射しがだいぶ強くなってきましたから、暖かさが戻ってくるのもあと少し。戻ってきた小代ちゃんも一緒に春へ向かって行動開始です。家の前の畑のエンドウ豆も蔓が伸び上がって来ています。


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 戻って来た小代ちゃん。律儀そうな性格はそのまま、けっこう積極的に行動するようになりました。あれこれ自信が付いたのでしょう。昨日はらいむちゃんと電話でなにやら相談して、その後は一緒に街へ。ファミレスで食事して服など買ってもらったようです。出費かけてすみません。

 今日は僕が足になりました。書類上の母親にあたる人のお墓へ挨拶。それから少し離れた街の病院へ。なんでも、神様の所で一緒に修行していた子が難病でそこに入院しているんだそうです。意識不明になっている間、魂が抜け出して神様のところへ行ってて、修行が終わって魂は体に戻ったというんですが。本当に死んだら神様の所で勤めるという約束だから、その子が生きているうちに会いたいって言うんです。でも、小代ちゃんはずっと昔に死んでるんだから、これって何か変なんじやないかしら。


 加工屋さんの仕事はだいぶ慣れました。工場の仕事は昔からの繋がりで銅系の旋盤加工が多いですが、薄くて直径の大きな環とか、僕にはまだ難しいです。ナイフ作りで鍛えた?から、ステンレスのフライス加工なら自信がありますが、注文はやはり真鍮やアルミが多いです。

 ネットで広告している小口の加工もぼちぼち依頼が来ています。既存の物に合わせて作る物や複製もありますが、試作品とか特注機器の部品とかも。元から大量生産する物ならCADで図面引いてNCで加工とか金型で一発とかなのでしょうけど、そんなに作らないor作っても売れない物もありますからね。

 個人も企業も、クライアントと打ち合わせて加工法や細部の構造を詰めなければならない物も来ます。どちらかと言うとダメ元みたいな依頼で、納期や価格はほぼこちらの言い値で通ります。そのかわり担当さんは熱心です。大奥様(元会長夫人)はお茶を出しながら「太志くん、なんとか工夫して作ってあげなよ。」ってプレッシャーかけて来ます。そんなんで、先日のステンレスの棒みたいに「やるだけやって見ますけど。できなくても材料費と経費は払ってください」っていう感じになります。


 少し前から、陽子さんとちびたちは時々犬人の村へ行ってます。「冬の間、こっちではたいしてする事が無いし、寒い時期だからこそ体を動かさなきゃ。」って。あっちでは、村の子どもたちと実戦訓練みたいな事をやっているようです。はぐれ猪が数頭山から下りて来たらしいですが、子どもたちが投げ槍で仕留めたとか。

 村の皆は元気に冬を越せそうです。完成した一輪車を使って、雪の中でできるところから春の準備と魔獣対策を進めているとか。鍛冶職人さんからは、もっと鉄材をわけてもらえないかと。冬の間に作れる物は作っておきたいらしいです。廃車の解体部品は鉄材として利用しやすいみたいです。あわせて、仕事で出た端材も試しに渡しました。


 猫人の宿場での「料理研究会」のあと、エルフさんたちから銅剣の製作の相談がありました。護身用の小さい懐剣と普通サイズの小剣と。その詳細デザインなど指示書が黒犬村へ届けられました。

 懐剣は、こないだ作った物より少し細くて小さな物。長さ7インチが向こうで多いサイズだそうです。小剣は標準サイズの10インチですが、幅はやや細身で刀身は厚目。魔法を纏わせて使うのが主でしょうが、武器としては斬りつけるよりも叩く感じで使うのだそうです。刀身には飾り石を2個埋めて、飾り模様の彫り込み。希望の模様のデザインもありました。葡萄と百合ですね。グリップは向こうで木材で仕上げるという事です。あと、長老さんも魔法の杖が欲しいそうです。かなり高齢だそうですから、突いて歩けるような形が良いかもしれません。


 秋葉橋の武器屋さん。ステンレスのナイフはぼちぼち売れています。確保していた素材がだんだん減ってきているのですが、材を変えると他の作者さんとの差別化が難しくなります。不思議と高価で売れる銅の謎剣にシフトするつもりです。こないだみたいに、鞘やベルトを向こうの職人さんに作ってもらえば、その分付加価値が上がります。エルフさんの剣と一緒にまとめて作るとして、いくらで売れるかしら。


 陽子さんの一言「やっぱり正月がこの時期ってのはおかしい。梅が咲き出す頃でなきゃだめだ。」がもとで、うちは2度目のお正月です。

 珠子さんも「お正月って、やっぱり、そろそろ春が来るかなぁって時期なんだよ。」と。「お正月って、寒いのが終わってこれから暖かくなるよって、そういう雰囲気ですよね。」と小代ちゃんも同調。「2回やったっていいんじゃない。」とちびたち。結局、旧暦で正月の日は宴会をしました。どこでその話を聞いたのか、夜にはみ~ちゃんが『炭酸水』を下げて遊びに来ました。あちらの神社は、(新暦の)正月は忙しかったそうです。「まあ、この時期はこの時期で節分と近いから忙しいんだけどね。」って。英国狐のジミー君はどんな感じなんでしょうか。


例によって小ネタ回です。

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