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遊びに来たよ その2

太志と陽子と珠子は秋の旅行。その間の3日目の話。

≪らいむ≫


 昨日はちびたちだけあっちの村で遊んだんだよ。今日はアタシも行くよ。犬人村のみんなに喜んでもらえそうなお土産も用意したから。


―――――――――――――――――――――――

≪犬人村の男の子のアム君≫


 今日は、お昼前ぐらいにイタチの3つ子たちと、お姉さんが2人来ました。ライム様はヨーコ様やタマコ様の知り合いで何度かこちらへ来られている方で、斑点のある猫のような尻尾の獣人です。豹って良くわからないけど、猫の仲間の大きな獣で、素早くて力が強いそうです。でもライム様は武術使いではなく雷の魔法使いだそうです。ライム様は車輪が1つしかない変な形の荷車に荷物をたくさん積んで押していました。

 もうひとりのミヅチ様は初めて来られた方で、ちょっと面白い訛りのある話し方をされます。変化して人の姿になっているけれど、元々は蛇の魔物(魔力持ち?)で、ヨーコ様の紹介で水の神の所で修練して強い力を持つようになったそうです。今も神様の手伝いをしているというのですから、やはりすごく偉い方のようです。こないだぼくたちが『村に井戸が欲しい』って言ったのを覚えていて、ライム様が呼んでくださったそうです。水魔法で地下の水の流れを感じられるそうです。


 ライム様が持って来てくださった荷物は村のみんなへの贈り物でした。冬の服を作るようにと、ふわふわ軽くて柔らかくて綺麗な布がたくさんありました。子どものいる家から先に配分するというので、今年の冬は小さな子どもも暖かく越せるでしょう。

 冬に備えて家や柵を直したりするためにと、釘や鉄を伸ばした細い線を持って来てくれました。釘はまっすぐで表面がピカピカ綺麗で工芸品のような仕上がりで、使うのがもったいないほど、鉄の線もどうやって作ったのか太さが見事に揃っていました。向こうは鍛冶の技術がすごく進んでいるようです。

 荷物を積んで来た車も村へくださいました。畑で作物や肥料を運ぶのに便利なのだそうです。向こうでは鉄でできた物が普通らしいですが、こちらで同じような物を作れるようにと、わざわざ木製のを探してくださったそうです。村の木工職人さんと鍛冶屋さんが見て「これならこの村で作れる」「冬の間にたくさん作って、春から使えるようにする」って。これがあれば、ぼくたち子どもでも重い荷物を運べそうです。


 お昼にと言って、フライという食べ物をたくさん持って来てくださいました。鳥や猪のお肉を柔らかく調理した物で、油が贅沢に使われています。それと小麦で作られた白くて柔らかいパン。このあたりは冬が寒くて小麦が採れませんから、これもたいへん贅沢な食べ物です。ミヅチ様は、春に撒いて秋に採れる小麦があると言ってました。その種が手に入らないか調べてくださるそうです。


 お昼を食べてから、女の子たちはミヅチ様を案内して村の中を廻りました。ミヅチ様はビーズという鮮やかな色の小さな粒を集めて作った飾りを付けていました。女の子はこれに関心があったようです。根気があれば子どもでも作れるって、材料を貰う約束をしたようです。

 その間に、ぼくたち男の子はライム様を村の畑のまわりへ案内しました。昨日の大鹿の事もあるので、良さそうな方法を考えてくれるというのです。あちこち見てまわっていると、数頭の群れに出くわしました。ぼくたちも驚きましたが、鹿も驚いたのだと思います。仲間を逃がそうというのか、その中の1頭がいきなり突きかかって来ました。するとライム様は、手を伸ばして持っていた細い銀の杖を鹿の頭に向けて構えしまた。こんな細い物で突進を受け止められるのかと思ったのですが、瞬間、バチッと大きな音がして、鹿がつんのめるように前に転びました。真後で見ていたぼくはよく判らなかったですが、横の方にいたヤン君は杖の先から鹿の頭へ眩しい稲光が飛んだと言ってました。これが雷の魔法でしょう。後で見ると鹿の額に焼け焦げた穴が開いていました。近づくものを触れる前に一撃で倒す。すごい威力です。斃した鹿はみんなで村まで引きずって行きました。

 群の雄を2頭続けて倒されたので用心はするだろうけど、食べ物がある限り遠くへは行かないだろうというのがライム様の意見。そして男の子が鹿と戦えるような武器があると言われました。その武器は「投げ槍」と言う物で、普通の槍より短く先が重い物だそうです。接近して突き殺すのではなく、少し離れた所から投げつけて傷つけて撃退するんだそうです。槍の柄は村の木工職人さんが作れるって言いましたが、村の鍛冶屋さんは農具の修理ぐらいで槍の刃先は作れないと言われました。しかしこれは向こう側ではそれほど難しく無いらしく、斃した鹿の角と皮を代金がわりに刃先を作ってもらえそうです。それまでの間、ぼくたちは棒の先に錘がわりの小石を付けた物を使って投げる練習をします。


―――――――――――――――――――――――

≪らいむ≫


 特売のフリースの生地はピンクと水色がひと巻づつ。これだけあれば、子どもたちの服にしても余るよね。100均で買った縫い針と糸は奥様たちに大好評。滑らかで穴の綺麗な針、太さが揃った糸。今の日本では当たり前だけど、機械工業がないと難しい製品だよね。釘もそうだね。1本づつ手作業で鉄を打って作っていたら、太さも不揃いで値段も高くなるよね。いちばん驚かれたのが針金。縛ったり巻き付けて補強にしたりして使ってもらうつもりだったんだけど、こんな綺麗な物をそんな使い方したら~もったいない~。細工師さんは飾り物を作りたいって。今度は真鍮か何か細工に合った物を持って来て、小物でも作ってもらおうかしら。ネットオクとかフリマとかで売れないかな。みゃは。

 で、大物の手押し一輪車 (ネコ車)。ひっくり返して村の職人さんが熱心に観察。木工の部分は、村や近辺にある材料使って春までに2ダースは作れそうって。車軸の部分は、時間をければ作れるけど材料の鉄が厳しいって。このあたり、太志クンの手助けが要るかな。


 昨日は街の神社にミヅチさんを訪ねました。いやぁ、ミヅチってクセのある人が多いって聞いてたけど、ずいぶん軽いノリの人だね。見かけの歳はアタシよりちょっと上で、『あたしのこと、み~ちゃん、って呼んでねっ。ライムちゃんって呼んでいいかなぁ』って。で、さっそく今日一緒に来てくれました。どうやら珠子ちゃんから話聞いて興味があったみたいです。あ、み~ちゃんの英語はだいぶ崩れたアメリカンね。

 女の子たちと一緒に村じゅう歩き回って調べてくれて、なんと中央の広場の横あたりがいちばん水量が多くて浅いって。ここに井戸があるとみんな便利だよね。でも、水面まで5m。つるべで汲むにはしんどい深さだね。何かポンプか揚水機が欲しいね。それとどうやって掘るか。ゆっくり検討だね。

 お昼にみんなで食べたパンのこと。子どもたちがすごく喜んでいたので聞いたらしいけど、この村は冬が寒くてライ麦しか採れなくて白いパンは珍しいからなんだって。み~ちゃんは春蒔き小麦なら育つんじやないかって。学校では小麦は秋蒔きと春蒔きがあるって習ったけど、あれって品種の違いなのかな?


 村の大人たちと雑談の中で、ちょっと物騒な話が出て来ました。夏前には大狼の群れが来てこの秋には大鹿の群れ。隣の谷には猪の群れが出ているそうです。こんな具合に山のたくさん獣が降りてくる年の翌年か翌々年には『スタンピード』があるというのです。これはだいたい20年ぐらいの間隔で起こる災厄で、普段は見られない凶暴な獣や化け物が流れのように押し寄せるだって。つまりファンタジーの定番のひとつ、「魔獣暴走」だね。山の獣対策と合わせて魔獣暴走対策も考えておかなきゃいけないみたいだね。


 で、帰ってから陽子さんと相談するため、アタシは村の周囲を調査。男の子たちと畑の周りの茂みのあたりを歩いていたら、例の大鹿が出て来たよ。その中の1頭の雄が果敢にもこっちに向かって来たんで、これは好都合、アタシは新しい武器の試し撃ち。

 一昨日買ったウォーキングのストック。魔法の杖-電撃特化型だよ。アルミ製で軽くて電気が流れやすくて先が尖ってる。体に電荷を貯めておいて、ストックの先を相手に向けて構える。相手が一定距離まで近づくと絶縁破壊して放電が飛ぶ。攻撃距離は電位で、威力は電荷の量で威嚇から即死まで調節できる。照準もトリガも不要の、電気使いらしい技でしょ。

 で、初の相手が大鹿。威力が判らないので、電位はやや高目で電荷は多目。相手が頭から突っ込んで来たので、額を貫通して脳を直撃して即死となったけど、運動エネルギーを忘れていたね。死んでも勢いで突っ込んで来て、ちょっとヤバかったねえ。はははは。でも問題は魔法の(ストック)の耐久性。放電の際に先端が焼け飛んじゃったよ。やっぱ、アルミじゃ耐えられないね。ステンは電気抵抗が大きいから、銅系の合金か。う~ん。


 魔物のこともあるので、子どもたちにも離れて攻撃できる武器があった方がいいよね。まずは大鹿対策として投げ槍はどうかな。柄は村の職人が作れるようだから、刃先だけ太志クンに作ってもらえば・・・・炭素鋼の板で作れるじゃないかな。


次の大イベントが予告されましたが・・・・ それまでまだしばらく、ゆっくり進みます。

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