表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/180

遊びに来たよ その1

太志と陽子と珠子は秋の旅行。その間の2日目の話。

≪犬人村の男の子のアム君≫


 あの狼の襲撃から季節がひとつ過ぎて、収穫の時期になりました。男手が減ったので、ぼくたち子どもも畑仕事を手伝ってます。ヨーコ様の仲間がくれたというスコップという道具はすっごく便利です。先の方が薄くて丈夫な鋼でできていて、足で蹴ると土に深く入ります。これを使うと子どもでも土の中の芋を簡単に掘り出せるのです。

「いい道具を作ることは暮らしを良くすること。」何年か前に村に立ち寄った鍛冶師がぼくに言った言葉です。向こうでは普通の道具らしいけど、これはすばらしい発明です。スコップの柄は持ちやすい形で、先は薄く尖っています。盾と斧と鉾を合わせたような感じで、不意の獣から身を守る武器にもなります。普段は臆病な女の子のニミが、とっさに突きだしたスコップで猪を撃退した時は、子どもたちみんな驚きました。


 あの時助けに来てくれたヨーコ様とタマコ様は、実はたいへん偉い方らしいです。ヨーコ様は長い間あちらの神様の護衛をしていたそうで、その恩恵でいつまでも若い姿なのだそうです。タマコ様も神殿の勤めの誘いを受けているとか。

 今日はイタチの女の子たちが遊びに来ました。5才だそうですから、ぼくの妹よりひとつ下です。タマコ様に教わっているって、だいぶぼくらの言葉を話せるようになっていました。計算もできるんだからすごいです。

 一緒に畑の芋を掘って、お昼を食べて、それからぼくたちは、収穫の終わった畑で走り回ったりして遊びました。ほんと、あの3人はすごく身軽です。まっすぐ走ればぼくらの方が速いけれど、急に止まったり曲がったり飛び跳ねたりするのは全然かないません。


 最近、村の畑のあたりに余所から流れてきた獣が居着きました。大鹿というやつで、この村には弓使いがいないのでなかなか退治できないでいます。狼のように人は襲いませんが畑を荒らします。猪のように土の中深くを掘り返すのではなく、葉や茎をたくさん食い散らかし、あちこち踏み荒らします。だからこいつらにやられると作物がたくさんだめになってしまいます。大きくて力が強くて柵も跳び越します。大人が追うと逃げますが、相手が子どもだと馬鹿にして突きかかって来ます。牙はなくても尖った角があるので追われると危いです。とにかく困ったやつなのです。


 畑で遊んでいると、あの大鹿があらわれました。群れのボスらしい大きくて性悪なやつです。ぼくたち子どもだけだと見て、平然と歩いて来ました。ぼくらも突きかかられると危ないので、じっと様子を見ていました。すると、イタチの姉妹がこいつを倒すと言うのです。どうやら、ぼくらの話を聞いたときに、絶対に退治しなきゃって思ったらしいです。狼より大きくても、3人で攻撃すれば倒せるって。

 まず「ハル」ちゃんが大鹿の前に出ました。これを見て角を下げて突進しようとするのを大きな音の出る風魔法?で押しとどめて、その隙に横から「アキ」ちゃんが風刃で斬りつけ、それに向けて首を曲げた瞬間に反対側から「ナツ」ちゃんが跳びかかって後頭部にナイフを突き刺す。3人の動きが一続きに見えました。話に聞く上級ハンターのパーティは魔獣をこうやって連携で倒すそうですが、大きくなったらハンターになるって言ってたトニ君は「あんなの、ぼくには無理だよ。でもあの半分ぐらいにはなりたいなあ。」って。


 倒した鹿は大きいので、ぼくたち皆で村まで引きずって行きました。解体にはぼくらも手伝わせてもらえました。鹿の肉は美味しくて角や皮は道具を作るのに良いのでみんな大喜びでした。ボスが倒されて鹿の群れも少しはおとなしくなるでしょうか。大きな腿肉は冬用に塩漬けにしますが、その次に良い所は活躍した3人におみやげに持って帰ってもらいました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ