あとがき
当初はリアル季節と平行して物語りが進むように投稿する予定でしたが、途中で推敲が滞ってしまい、すっかり遅れてしまいました。
それでも、妖たちと太志の物語は一応の完結。
見つけた端切れが集まって段ボール箱にいっぱい。色合い良くデザインして縫い合わせれば綺麗なタペストリーになって生きるのだろうれど、このままになっていればいずれはゴミとなって捨てられる。ならば端切れのまま綴り合わせて一枚の掛布にすれば、ひとときの用にはなります。
何かのついでにぽちぽちと湧いて出たお話の小ネタが溜まっていました。ちゃんと熟成してやれば、それぞれ物語になるのでしょうけど、どうやらそれは無理みたい。このまま捨ててしまうのも残念です。ちょっとでも形にしておけばしばらくは残るかもしれません。
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ヒーロー/ヒロインの物語もあります。一族一国の転遷を追う大河ドラマもあります。これらに対して、ある時ある場所に居合わせた人たちにまつわる物語をつづり合わせて創られる群像劇もあります。映画などではグランドホテル形式とも呼ばれる手法。ある時は淡々と、ある時は雪崩をうって一気に、緩急なんでもあり。いつのまにかそれらが繋がって、全員を巻き込むような事態が起こる。そして、その後はまたそれぞれ散ってゆく。
端切れのようなお話のプロットを綴り合わせてひとつの物語にする事にしました。無理は承知の上でくっつけ合わせた物語。さまざまな背景を背負った者たちが予想外の大事に巻き込まれ、それを乗り越えようと繋がってゆく、タネと仕掛けと予定調和しかないご都合主義の物語。エピソードが継ぎ接ぎだから、物語の舞台も右往左往にします。
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独身残念系失業青年とお気楽な妖怪たちを中心のキャラに据えて、1年半ほどの時間軸中にあれこれ盛り込むつもりで舞台設定してあれこれ貼り合わせたのが「猫と狐とかまいたち」のお話。
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エピソードをつづり合わせてひとつの物語にする表現の手法はいくつかあります。語り手がエピソードを繋ぐとか、ひと続きの時間でまとめた年代記ものとか、ある場所に居合わせた者たちの共通体験を描く駅馬車形式とか。グランドホテル形式の名の元になったのは映画。過去を背負った癖ものの名俳優たちのからみ合いを、大胆な編集でつづり合わせる。場面と視点の大胆な転換は映画ならではの技法です。主観視点と、(たまたま居合わせた者という)主観に近い客観視点の組み合わせ。難点は、その場に居ない者はストーリーに参加できないこと。
この継ぎ接ぎ物語は映画的な場面構成を考えて、全体を主観視点で文章化することにしました。その事態の当事者であるか、傍観者であるか。ナレーターは居ません。その場に居なかったら、誰かから聞いた伝聞。こうして、たまったプロットに役者を充てはめ、話者を選んで各話を書き始めました。
登場人物や場面が不連続に飛び、入り交じるストーリー。演劇や映画の場合は、その人物が画面に映れば『誰か』が判ります。しかし文字だけで物語を描いて、その視点がコロコロ変わる。ト書きの無い劇台本。文章を少し読み進めば話者が誰か判るように仕掛けはできますが、あらためて読み直すとどうもすっきりしません。
そこで後から遡って話者が判りにくい所には≪話者≫の注記を入れました。ちょうど朗読劇のような感じに、お好みの俳優声優さんの声を充てて読んでもらえると良いのではないかと思います。
当初の予定は120話ぐらいでしたが、派生した沸いて増えたエピソードや長くなって2分割した話も含めて5割ほど増えてしまいました。
大きな物語の流れはこれでひと区切りです。途中で蒔き散らしたまま刈り取ってないネタもありますし、できたら書きたい後日談もあります。一旦物語の『終わり』の字は入りますが、エンドロールに重なるスナップショットのように短いストーリーを入れれたらと思っています。
大筋の話はこれで一応の完結。
でもまき散らした小ネタから生えた草が残っています。
後日談を不定期に投稿するつもりですので、できればブックマークしたまま置いておいていただけると嬉しいです。