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もう秋だなあ

ひと山越して油断があったようです。ずいぶん長く投稿が途切れてしまいました。

でもあと残りは僅か。


妖怪狐の陽子さんが総括します。

≪妖狐の陽子≫


 ちょっと前まで暑いと言ってたのに、もうすっかり秋らしくなって来たなあ。洞窟の向こうの世界でひと騒ぎあったから、この夏はのんびり過ごす間がないうちに終わってしまった。まあ、あの蒼盾と村を守って戦うってのはひさしぶりで、案外楽しめたなからな。今想えば、あの時これほどの仲間がいて、これほどの準備と策略を施して戦えていたらそれはずいぶん違ったのだろう。昔に神の遣いで獣や魔物と戦った時は昂ぶる気持ちばかりでそういう余裕が無かった。まあ、あれもこれも過去の話だ。次があるかとうかは判らない・・・そう度々あっては困るがな。


 それにしても、大事の後に慶事有りか。まさかこれほど急展開となるとは思ってなかったな。結局一線を越える言い訳が必要だったんだな。魔獣斃して妖力を得た太志と、一時だが妖力を失った珠子。傷ついた姫を抱えて走る王子様ってか。無事に戻ったから笑い話にできるのだけどな。それでも普通は、まずゆっくりお付き合いだろうが。いきなり結婚まで進むって、やはりそういう縁だったんだよな。

 だいたいあいつら2人、不器用なんだよな。妖怪たがら、人だからって、縁があれば些細な事だろう。何かあるごとに互いに気にしあってるのに、気遣いばかりで遠慮してるんだからなぁ。珠子は己が妖怪だからと言い、太志は若輩の人間だからと言う。それにしても、向こうの神の悪戯かもしれないけどな、太志が妖のようになるというのは予想外だったな。


 しかしあの太志が強い妖気~あちら風に言うと魔力ってのだな~を持つようになるとは驚きだな。そのうえ、それをあたりに流して気配を知る技を得るとはな。

 この話をしたら、エルフのカーナがあちこち調べてくれた。集まったの古い文書を見ると、どうやらイレギュラーを倒すと、直接討伐に関わった者に何かしらの魔力がもたらされるらしい。とどめを刺した者を筆頭に、傷つけた者にはその程度によっていくらかづつ。暴竜ったっけ、今回の怪物の退治は準備も作戦も武器の用意もほとんど太志がひとりでやったような物だから、太志が貰った妖力が多いのは当然だ。あとは、閃光で目眩まししたらいむ、炭塵爆発で転ばしたスナおばばとちびたち。落とし穴を作った蒼盾とルーミって子にも妖力が渡ったみたいだな。猫又のタッちゃんは、戦いの際に皆に気力強化を施したからだろうな。蒼盾やスナおばばは元々の妖力が多いので気づかなかったようだが、タッちやんやルーミは元々の妖力が少ないので急に強くなったように感じたんだな。ちびたちは、「そう言えば草刈鎌の威力が増えてる」と言ってたが、なんかあいつららしいな。


 妖術は本人の才に加えて何かの気づきがあって発現する。鼬のちびたちは母親の鎌鼬から風遣いの才を受け継いだ。座敷童の小代のは、山村の日々で想った事が人と作物への慈愛になったのだろう。元々妖術を使えない者がいきなり妖気を得てもすぐには判らないものだ。どんな才に優っているかは人それぞれ。不本意に強い妖力を持ってしまった者がその妖力を邪心に注いで魔に落ちる事もある。まあ、太志の気性なら、だいたい闘技とか体力とか身体がらみの術は無い。ならばどのみち大した事にはならないと思ったが、それでも少しは心配だった。

 できれば早く良い神に出会って役に立つ技が発現すれば良いと思ったので、神社巡りを勧めておいた。それで夏のあいだ小代と2人で近所の神社を周ったらしい。小代の時のような神様じきじきのお声掛かりは珍しいのだが、たいていは何かの兆しがあるものだ。それにしても微妙な力を得たものだな。いったい何処の神様の御導きなんだろうか。誰か判らなければお礼のし様も無いだろうが。

 「意識を向けると、物の中とか陰の様子がぼんやり感じられるみたいなんですよね。」ってな。気を巡らして物の陰や中を見透し、その状態を感知できる力。飾り物を作る職人がそんな神力を貰った話を聞いたことがある。おそらくは機織神様の御縁の誰か、飾り物造りか道具造りだろうな。珍しい力のようだが、昂れば心眼に近づくのだろうか。


 太志の気は力強いが暖かく穏やかだ。中途半端な妖を警戒させるには十分な量と、気の良い小物は惹きつけるような柔らかさ。それで瓜蔓の精が姿を見せたんだろう。来年は瓜もたくさん植えないといけないぞ。ああいう土地憑きの精との縁は大切にしないといけないからなあ。


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