表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
173/180

再出発

お話は8月半ば頃。魔獣騒ぎが終わってひと息ついたところ。



 谷の獣人の村の暮らしはほとんど元に戻りました。貴族様たちと兵士たちは全員砦を離れました。志願兵たちも半分以上が村を離れました。白牙村の駐屯地はすっかり静かになっています。


 志願兵たちにはいろいろなものが配られました。討伐戦に向けて配られた救急用品の袋、小雨ぐらい防げる折りたたみ帽子、肩かけの布鞄、これらは皆が持ち帰りました。砦から貰ったボロの護身剣でも欲しいという人もいました。そのほか、余り物も欲しいという人に持ち帰ってもらいました。水筒がわりに用意したワインの空き瓶は人気でした。たくさん用意した煎餅や携帯食も、残りを配りました。護身剣に付けてた柄を持ち帰った人も多いです。村で働いた者たちは、村人からいろんな物が贈られました。そして形の無いものを持ち帰った人たちも。

 短期間の訓練だけど短槍や棒を使えるようになった事、あるいは少しだけど文字が読めるようになった事、これらを生かして仕事を探すと言う者がいました。武器で自衛ができて読み書きができれば、人足仕事でも配達や文書運びといった割の良い仕事に就けます。今も何人かは子どもたちと一緒に計算などの勉強をしています。計算ができれば店の手伝いなどの仕事もあるでしょう。せっかく生き残ったのだから、元のような生活には戻りたくないでしょう。


 菓子職人さんは、領都近くの縞猫商会の出店で旅人相手に菓子を売ることになり、南部煎餅の焼き型を抱えて商会の馬車に乗りました。

 南の海辺の村から来た犬人の若者は、村へ帰って海藻を干して集めて縞猫商会へ卸す仕事をすると言っています。そのまま煮て料理の増量にしていた海藻が、干したらスープの味付けに使えるとは知らなかったそうです。商会はスープの味付けに昆布を使うのを広めようとしています。すでにエルフ村では昆布スープは人気らしいです。もうじき昆布が安定して入手できるようになるでしょう。


 峠が通れるようになったので、皇国の工房から一輪車の部品を運んで来ました。今回の200台は全部村の外へ売ります。街道から逸れた山沿いの村へ帰る若者が4人、帰郷資金を使ってこの一輪車を買い、自分の荷物と食料を積んで徒歩で出発しました。馬車が通れない近道を帰るのだそうです。村へ帰ったら一輪車で荷物運びの仕事をする事を考えているみたいです。


 猫人村の豆乳料理が気に入ったという元娼婦の兎人さんは、数日前まで宿場の調理場にいました。街へ戻ったら、軽食を出す屋台を始めたいと言ってましたが、たぶん将来は料理屋になるでしょう。

 領主様の奴隷だったという老婦人も、領主様に食べていただくと、宿場で料理を教わっていました。膝と腰が悪くなっていたのを小代ちゃんが治してしまったみたいです。猫人の鋳物師さん特製の浅い鉄鍋と味噌をひと塊貰って帰って行きました。

 エルフさんの味噌作りは順調に進んでいて、定期的に宿場に運ばれて来ています。領都でも売れるようになるとエルフ村もだいぶ豊かになるでしょう。


 鍛冶と木工の武器職人さんたち。犬人村で使っているスコップが気に入ったようで、これを元に『探索者のスコップ』という物を造っています。エルフのニーラさんが試しに使ってアドバイスを入れてます。ニーラさん曰く「これは山へ入る探索者が命を預けられる道具になる。」と。

 村の鍛冶師さんは、普段の暮らしには多すぎる槍を打ち直して鎌にしています。一部は護身剣にして、これは来年年長組に入る子どもに渡すそうです。年長になると剣を貰うというのは、この谷の風習になるかもしれません。


 山羊人の鞄職人見習いさん。このまましばらく猫人村の工房で働いて腕を磨くと言ってます。親方はひととおり技術が身についたら山羊人村の工房に紹介すると言っています。

 花の絵を描くと言ってた絵描きさんは、魔獣討伐の物語を絵本に描いています。この人、実は肖像画家だったそうです。戦争の時に出陣する兵士の絵を描きすぎたからだとか。伝えて残すなら、悲しい思い出じゃなく勇気と希望だろうと言ってました。どんな本になるのでしょうか。


 獺人の娘さんたちは溜め池の管理をすることになりました。池で鱒や山女魚などの養殖をする準備を始めています。犬人村の男衆が谷奥の避難小屋のひとつを解体して溜め池の近くに家を建てました。もうじき街にいる家族が来るそうです。


 南の山の樵集団は、黒犬村の奥の避難小屋を冬も寝泊まりできるように改築して、ここを拠点に山仕事をすることになりました。白牙村の娘さんと結婚したザイラさんほか3名が残って周囲に柵を作っています。他は一旦街へ戻りました。おそらく秋までに4家族か5家族がこちらへ移って来るでしょう。黒犬谷の奥の山には良い大木がたくさんあるらしいです。


 エルフさんたちは時々村へ来ています。ファラさんは菓子の試作品を持って来ました。カーナさんの服の襟に青い線が入りました。昔の記録を発掘して検証したことで正規の記録者と認められたそうです。


 狐人の女の子のルーミちゃん。なんと稲荷神様の許しが貰えたとかで、白菊さんの所で幻術の修行をする事になりました。ルーミちゃんはジミー君と同じ神様に仕えることができると喜んでますし、ジミー君はまたルーミちゃんと会えるってはしゃいでます。傍から見てるとあきらかにラブラブなのですが、なんともまだるっこしい2人です。


しばらく続いた魔獣がらみの話は一応これで終わりです。


途中でばら蒔いた小ネタの実を広いながら、お話はもう少し緩々と続きます。

あとしばらくお付き合いくださいませ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ