戻ってくる日常 (2)
長さの都合で2部になってしまいましたが、前話と同じイレギュラーの翌々日の話。
(ジミー君視点です)
魔獣暴走に合わせてあわただしく進んだお話もこれで一段落です。
向こうに帰っていたタッちゃんが戻って来ました。珠子さんは無事に元に戻ったそうです。怪我の後遺症も無く、妖力も回復して変化できるようになったんですね。さっそく村のみんなに伝えました。村の人たち、猫になった姿を見てて、『竜の呪を受けた』と思って心配してましたから。
しかし太志さんが強い妖気を持つようになっているというのは驚きです。太志さんは暴竜に止めを刺したドライゴンスレイヤーですから、その関係でしょうか。そういえば、ルーミちゃんも魔法のに力が急に強くなったと言ってましたから、ドラゴン討伐に功績のあった者にはいくらか恩恵があるというパターンかもしれません。らいむちゃんやソウさんは何も言ってませんが、元々の妖力が多いので少しぐらい増えても誤差のうちなのでしょうか。ボクは・・・見てただけで何もしてませんから、魔力も神力も全然増えてないのは当然ですよね。ハルちゃんたちはどうなのでしょうか。
しっかし、ドラゴンは大きかったです。切り分けて大きな穴に埋めましたが、昨日も一日後始末にかかりました。発生する瘴気が自然に分解されて薄れるのに1年ほどかかるというのですから、村から離れた所にしっかり埋めるしか無いですよね。魔獣と合わせて100トンほどになりましたが、ソウさんの土術が無ければ穴を掘るだけでも大変でした。次の時は、先に穴を掘っておいて、穴の中で殺す方法を考えた方が良いでしょうね。次って40年後でしょうけど。
今日からは魔獣が踏みつけた農地を耕し起こして畑にしてます。今年は魔獣に荒らされるのを考えて土地利用の順番を崩しましたが、来年には元に戻したいです。今年は低い畑はすべてポット苗に作っておいた豆を植えます。半分は生育の早い種類で、これを収穫してから来年のライ麦を蒔けるはずです。残りは来年は芋ですから、秋遅くまでかかる種類でも大丈夫です。幸い猫人村の畑は踏まれていませんが、こちらも同じようにやりくりして順番を戻すようにします。今年の秋の訪れがどうなるか判りませんが、早く寒さが来るかもしれないので、豆の植え付けは早いに越したことはありません。白牙村の志願兵さんたちに声をかけました。街の出が多いのですが、苗運びなど面倒な力仕事を引き受けてくれています。元々農民の方もいて、村人たちと一緒に支柱を立てたりしています。
猫人村では、疎開していた人たちはほとんど元の村に戻りました。灰白村に建てた避難小屋は倉庫に使う2つを残して解体を始めています。犬人村は、疎開していた人はだいたい元の村に戻りました。避難小屋は山仕事の資材置き場にもなるので、しばらくそのまま置いておくらしいです。
雉白村の第一駐屯地。正規兵と傭兵さんたちは、明日には全員下の砦に戻ります。志願兵さんたちは一旦白牙村の第二駐屯地に移動してもらっています。雉白村の片付けはまだもう少しかかりそうです。
志願兵さんたちの帰郷の事は、だいたいこちらの提案が通りそうです。砦の輸送用馬車のほか、領主様からも馬車が出るらしく、兵士のほか、領都までなら志願兵もいくらか運んでもらえる事になりました。急いで帰りたい者から順に割り当てることになるでしょう。それ以外の人には、帰郷の交通費が出るのを待つことになりますが、おそらく来週頃には届けられるでしょう。
昨日、峠の向こうの皇国側でも魔獣の掃討が完了したという知らせが届きました。今日は峠下の宿場と関所の人たちが登って行きました。下の砦では明日から旅人を通すらしいので、街道の交通が元に戻るのはもうじきでしょう。イレギュラーを誘導するため、街道が川と交差する所の土手を崩してしまいましたが、この部分は「南の森の樵」というあの犬人たちが、堰に使っていた木材など使ってきちんとした木橋を架けています。このあと、黒犬村と大犬村の間にも馬車が通れる大きさの木橋を架けると言ってます。これができると村の交通が便利になります。
駐屯地にいる志願兵の人たちが志願して来た動機はさまざまです。すぐに帰りたい人もいるでしょうし、帰るアテの無い人もいるでしょう。村を離れる人は行き先によって都合の良い移動の手配を考えなければなりません。行き先によっては小麦の買い入れと合わせて馬車で運ぶと、縞猫商会が言ってくれています。タッちゃんが戻ったので、さっそくこの先の希望を調べてもらっています。
村に残りたい人がいれば、それぞれ受け入れ先になる所と調整しなければなりません。すでに元々農家という犬人が数人、空いている畑があれば借りれないかと言って来てます。南の森の樵さんのうちの何人かも、山の仕事を手伝わせてもらいたいと言っているそうです。
住むというのではなく、しばらく村に置いておいて欲しいという人もいます。菓子職人さん、武器職人さんたちなど、まだしばらくやりたい事があるのだそうです。村の料理を覚えたいと言ってる人もいますが、おそらく街で飲食関係の仕事に就くつもりなのでしょう。
逆に村人の中から「あの人に残ってもらいたい」という話がいくつか届いています。猫人村の木工師さんからは、働いている若者は腕が良いので村に残るよう説得して欲しいと言われました。1人の猫人さんは白牙村の近くに養蜂箱を置いたそうですが、村には巣箱を使った蜂蜜の採り方を知る者がいないらしいです。犬人の樽造り職人さんは、本人もここで仕事をしたいと言っているらしいです。そして、村の人と結婚するという話も3つほど。うち1組はあの樵さんで、相手は白牙村の若い未亡人だとか。お針子さんの猫人2人には、猫人のおばさまたちがお見合いを用意しているみたいです。
ルーミちゃんは、きっとお母さんを探しに行くのでしょうね。何か手伝ってあげられると良いのですが。