7/24 特異物(イレギュラー)
谷間の村に襲来した普通の魔獣はすべて退治しましたが、今回はイレギュラー回です。
まだ終わりません。
暴走の魔獣の第三陣が出てからちょうど4日目。イレギュラーが出るならもう出る頃と思っていたら、やはり出ました。昼近くになって第一観測所から連絡がありました。
各地で出たイレギュラーについては、縞猫商会が資料を集めていました。2足で歩き太く長い尾があり、歯の並んだ大きな口のある巨大な動物。この特徴と合致するのは、100年ほど前に南の方で出た『暴竜』か150年ほど前に東の国で出た『走竜』があります。時々前脚を使いながら足を交互に出して尾を振って歩くというので、どうやら『暴竜』というヤツらしいです。
湧き出し口から峠道へ降りた魔獣は街道を下ります。前々回はこちら側、前回は皇国側へ下りました。交互というのでは無いので、今回も皇国側へは行けば楽だと思ったのですが、そう都合良くは行かず、こちらへ街道を進み出したという連絡が入りました。引き続き監視してもらい、僕たちは対策を考えることにしました。
今の状態で、今年の村の収穫は例年の7割程度は確保できる見通しです。昨年秋からの備蓄分があるので、今年の冬から来年春までは問題ありません。魔獣の血が流れた一帯は土が傷んでいるので、今年のライ麦の植え付けは見送って来春に豆を植えることにするそうです。来年はその分が不足しますが、備蓄の残りなどで補えそうです。ただ、これはイレギュラーによる被害を考えない場合です。畑地が酷く踏み荒らされたりすると数年にわたって影響が残ることになります。村の家屋が酷く壊されたり生活用品が失われれば冬の備えに支障することになります。3000匹の魔獣については、当初の想定よりずっと少ない影響で済んだのですが、イレギュラー1匹で逆転されることもあり得ます。戦闘で死者を出さずに済んでも、餓死や病死を出したんじゃ意味がないです。
カイトさんの大鷲による航空写真で見ると、どうやら映画に出てた肉食の大型恐竜みたいです。ただ体長が30mほどあるらしいですから、恐竜よりずっと大きいです。その分体重が重いのでしょうか、進行は人間より少し速い程度の速さです。この魔獣も夜間は休止するらしいので、白牙村の付近まで来るのは明日の朝でしょう。
暴龍については100年前の時の詳しい記録がありました。暴竜だとすると、皮膚はかなり硬くて普通の剣は通らず騎士の槍で傷がつく程度、視力は良いが耳は良くない、攻撃は前脚の爪と大きな顎での噛みつきと大きな後脚の踏みつけと蹴り。記録には書かれていませんが、おそらく尾で打ち払う攻撃もあるでしょう。
南で100年前に出た時の記録には、『邪魔しなければ悠々と道を進み、下手に挑発すると激しく暴れ、戦おうとしても手強い反撃に合う』とあります。その出現の時は、崖下の狭い所を通る時に上から山を崩し埋めて斃したようです。火は恐れないとありますから、前回・前々回のように火で焼き殺すのは無理そうです。そして体から約10フィート以内では魔法が消されるとあります。『消される』という表現から見ると、魔法が通じないというより無効化のようです。そうなると妖術も打ち消されると考えた方が良いでしょう。しかし土砂で埋めることができたというのですから、間接的に妖術を使う物理攻撃なら使えると思いますが、らいむちゃんのコイルガンとかちびたちの炭塵爆発とか、どの程度効くかは判りません。
記録にあった『邪魔しなければ・・・』というのを信じて、まずそっと見守って静かに村のあたりを通り抜けるのを期待し、もし進路を逸れるようなら誘導を試み、暴れるようなら無理無い程度に討伐を試みる。ダメなら逃げる。そんな感じで対処するしか無さそうです。
さあ、暴竜も退治してみんなで祝宴だ。
・・・・ってねフラグじゃないですよね。
まだしばらく日常には戻れません。




