そろそろかしら・・・
来ると思って待っているとなかなか来ないもの。
物語はそろそろ6月半ば。
あれこれバダバタしてるうちに6月も半ばまで来ました。魔獣暴走は何時始まるのでしょうか。向こうの世界の動きの把握と調整をジミー君とタッちゃんが交替でやってくれてるのでずいぶん助かってます。こちら側での資材の買い出しなどはらいむちゃんとみ~ちゃんが中心になってやってくれています。僕はこっちから参加するメンバー関係の窓口と調整役みたいなことになってます。
暴走は6月末から8月初旬と見て討伐軍が招集されました。幅があるのは山の獣の動きからの予想だからです。エルフさんの記録では暴走の20~35日前には湧き出し口に変化が現れるというので、早ければもうそろそろ動きがあるはずなのですが、今のところ何も知らせがありません。念のため縞猫商会の行商馬車が数日置きに峠を通るようにしてもらってますが、峠のあたりはまだ靜かだそうです。急に来て慌てるのは困るけど、待ちすぎて疲れた頃に来られるのも怖いです。
討伐軍の人員はほとんど揃いました。本隊は谷の下の砦に留まってますが、一部は村で働いてもらってます。早くからあれこれ考えて準備して来たつもりですが、イザ迫ってくると後からあとから足りないことが出てきます。間に合う事なら、ひとつでも多くやっておきたいです。
らいむちゃんの発案で救急キットを配るようにしました。討伐軍と村で警戒線に立つ者の分に予備を加えて300セット。包帯とガーゼと止血紐や三角巾。ピンや小さなハサミなど。こちらでまとめて購入した物を、村の奥様たちに縫ってもらった布袋に入れます。応急手当の仕方を書いたらいむちゃんの「同人誌」も入ってます。
警戒線に立つ者に持たせる飲食物や携行品などを入れる鞄も用意しています。予備も含めて200個ほど要ります。背負ったまま武器を揮えるように、犬人が山仕事で使っている肩かけ鞄を簡略化して布製にしました。これも村の奥様が作ってくれてます。パンや軽食は布でくるむとして、困ったのが水筒。ペットボトルは軽くて便利なのですが、あちらで大勢に使わせるには謎すぎます。ジミー君の提案で、ワインの空き瓶を集めました。ガラスの瓶は向こうにもありますから、形が綺麗すぎるぐらいで済むはずです。
村で作業する者が増えて来て、要ることに気づいたのが食器。アルミやプラ製ら安いのですが、これもまずいです。ソウさんが各地の稲荷社の土術と火術遣いの神狐に声かけて、陶製の深皿と椀を作ってもらえたので助かりました。とにかく何であれ200人分の用意となると、けっこうな量です。ここまで来たらケチケチしてられませんが、予算が無いのはどうしようも無いです。
先日は筋肉ムキムキのごっつい男性が2人訪ねて来ました。戦争映画でジャングルで機関銃抱えて一人で殲滅戦やりそうな体格。山ノ神様の配下の、警護隊の小隊長さんと教育隊の戦技教官さんだそうです。口調は丁寧ですが迫力があります。
小代ちゃんは下の村の神社へ毎週近況報告に行ってるんですね。そこでの話が神社の田ノ神様へ伝わり、それが山ノ神様に伝わったみたいです。「田ノ神様は黒犬様の事を今でも気に掛けておられるようです。それで今回の事を山ノ神様にも話されたんでしょう。」「我らの神様も黒犬さまゆかりの村のことと、たいそう気になさっていて。」「実は昔に田ノ神の所へ遣わされた黒犬は元々は我らの神の所の者なんですよ。」「私たちの間でも黒犬様の伝説は知られているんですよ。だから去年の出雲の集会で黒犬様の話が出たあと、向こうの村を訪ねてみたいという者がいたりして。」「山ノ神様は、私たちがここ何年も休暇を取ってないことを指摘されました。1か月任務から外すので、思う存分体を動かして来いと言われました。」「この際だから、黒犬の村でも見て来たらどうかと。」「だから私たちは、ぜひちらの村へ行って、何かかさせていただないかと思っているんですよ。」
こっちの神があっちの世界に関わるのはまずいので、信頼している部下をこっそり応援に派遣しようという事みたいです。見かけはごっついけど、さすがに部隊の偉いさんです。「ああ、我らはアメリカの犬神様の所に交換派遣されていたことがあるので、英語は何とかなると思います。」だそうです。
襲って来る魔獣の予想や、防衛の準備と戦いの計画を説明し、この先の予定を伝えました。招集された奴隷兵のことに話が及ぶと、「もう兵士は砦に集結しているんですね。襲撃まで1か月ほどあるとすると、その間のメンタルが重要でしょう。兵士たちは毎日何をしていますか?」「柵越しに数多い小物と対峙するとなると、普通とは違う戦い方になりますね。そういう訓練はしているのですか?」さすがに部隊戦闘の指揮経験者です。僕たちは村の方の心配事で手一杯でした。「ただ待ってるなら、武器持って体動かす方が気持ちが落ち着くんですよ。」「ド素人でも生き残れる戦い方を教えてやりますよ。」貴族様の私兵や傭兵は何とかしているだろうけど、集められた奴隷兵たちの中には戦い方も知らない者もいますよね。




