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情報分析


 魔獣暴走の記録を整理してパソコンに入れて分析しました。エルフさんからいただいた400年間の湧き出し口の記録と谷の中程での魔獣の動きの記録。それと、最近の3回についての犬人の村の記録。縞猫商会が入手してくれた領主の軍の報告書が最近の5回分。そのほか、イレギュラーに関する伝承のようなものもありました。


 まず、エルフさんによる湧き出し口の記録が41回分。同じ人が同じ場所で観察した記録なので、比較の確度は高いです。期間中に2回のイレギュラーがありました。いちばん残念な事は、記録者が50年ほど前に亡くなられていて直近2回の記録が無いことです。谷の途中の記録はすべてこの41回と突き合わせができました。


 湧き出しは3日間、すべて早朝から昼過ぎの時間です。初日は比較的足の遅い小型の魔獣がほとんど、2日目は小型と中型で統括個体が含まれていて、3日目は中型と大型が主で小型で足の速い物が少し。魔獣の種類によって移動の速さがかなり違うので、谷の途中のあたりで3つのグループが合体し、進行が乱れて入り交じった状態となるようです。谷の中程の記録にはこのあたりの動きが書かれていました。

 魔獣の種類と数をグラフ化してみると、イレギュラーの回と直前の回は通常回と比べて明らかな違いがありました。直前の回は、2日目の中型はやや多くなるかわりに統括個体がほとんど無し、3日目は中型がほとんど無く大型が目立って増えてます。トータルでは、中型の統括個体が目立って減るかわり大型が約2倍に増えてます。イレギュラー回は、2日目にも大型個体が出現するかわり、3日目は大型がほとんど無し。トータルでは大型が半減しています。つまり、統括個体が少なく大型の多い回の次はイレギュラーの可能性が高く、大型が少ない回はイレギュラーが出るというような感じです。


 魔獣は大中小入り交じって犬人村を2日間ほどかけて通過しています。まる2日間、進行の具合によっては2回夜が入りますから、この間じゅう警戒と戦闘を続けるのは厳しいです。何とかしてこれを短縮する方法を考えたいです。

 谷の中程の記録の2回目には、面白い動きが記録されていました。魔獣が下る直前に山に強い雨が降り、谷の屈曲部で溢れて河原一帯が洪水状態になっていました。ちょうどここへ下ってきた小型のうち水を嫌う物が逆流を始め、他の小型もこれにつられて進行を乱して停滞。その後に到着した中型がこれを押しのけて進行して通路を開くと、それを追うように小型が進み出す。停滞は翌日まで残ったが、到着した大型が蹴散らした・・・

 やはり予想どおり、川の水を利用して魔獣の進行をコントロールができそうです。河原を狭めて進行を阻害するつもりで、谷の途中に堤を作っているのですが、これをもっと拡張して河原を氾濫させれば、半日から1日、防衛戦の時間を短縮できそうです。また、統括個体が小型を統率して進行させているのは確かなようですから、適当な時点でこれを除去できれば、数が多くて目面倒な小型個体を烏合の衆にできそうです。


 犬人村の記録はあまり詳細ではなく、魔獣を体型でおおまかに分け、見えた範囲の数と主な行動だけです。それでも他の資料と照らし合わせるといろんな事が判りました。いちばん古い回はエルフさんの記録の最後と重なります。比較すると、大型と中型については割合もだいたい似ています。小型がやや少ないのは、見落としが多いのかもしれませんし、途中である程度脱落しているのかもしれません。

 犬人の村を通過中に川沿いから逸れて拡がって来る個体があり、戦ってこれを押し戻しています。小型はバラバラで来る場合と、集団で襲来する場合があり、後者はかならず背後に中型が追従して来ています。おそらく統率個体でしょう。小型でも一度に多数で来られると対処が難しいですから集団行動を取らせない工夫が要りそうです。

 大型は小型中型との連携は無さそうです。むしろ、途中で弱った個体を踏み殺したり、停滞する個体を攻撃して排除するような行動があるようです。大型は、高速で攻撃力が高いが持久力の無い種と、動きは遅いが防御力の高い種。どこでどのようにして大型個体に対処するか、不安定要素を無くす意味では前者は早いうちに削っておくべきでしょう。


 犬人村の記録では、前回分はその前2回と魔獣の割合が大きく異なっていました。大型が多くて中型が少ないです。小型は大型に追い立てられるように進み、小型が集団で村を襲う行動が見られなかったようです。その結果、犬人村の被害は少なかったかわり、あまり削られないまま進行して猫人村で暴れて大被害を出したのでしょう。

 問題はこの魔獣の割合の違い。どうやら、今回は懸念のイレギュラーが起こりそうです。イレギュラー回には『ラスボス』が登場するみたいですが、何が出るかシークレットというのが困ります。不確かな記録ばかりですが、こちらで言えば恐竜か怪獣サイズで、暴れ方も耐久力も怪獣並のようです。特撮怪獣のように火を吐いたり魔法技は使わないかわり、魔術攻撃は効かないみたいです。


 前々回は310年前で、体長25ヤードの猫?がこちら側へ来ました。これについては、猫人の里に昔話がありました。巨大な猫の魔獣は、谷の口の砦を破壊し、街道に築いた柵を突破して領都の手前まで進行。最後の防衛線として積み上げた麦藁に突っ込んで留まったところに火魔法を打ち込んだら焼け死んだと。

 前回のイレギュラーは175年前で、体長30ヤードの鱗の4足獣が峠の向こうの皇国側へ下りました。資料のイラストはアルマジロっぽいです。皇国の道沿いの村に伝承がありました。村の先の川を渡るところで、木橋を踏み抜いて川に落ち、都合良く裏返しになったので起き上がれないように兵士が大勢で囲んで槍で攻め続けるうちに溺れ死んだというのです。

 つまり、魔法攻撃は効かなくても物理攻撃は効くみたいです。火に弱いのかどうかは判りませんが、たくさん物を燃やせば酸欠になりますし、一酸化炭素中毒とかもあるでしょう。何が来るにしても、獣であれば呼吸はするでしょう。問題はどこでどうやれば足止めできるかです。


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