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現地調査をしましょう (1)

魔獣暴走があるなら準備しなきゃ。戦闘部隊より後方支援が大切です。

英国狐のジミー君ががんばります。



≪灰色狐のソウ≫


 関八州の神狐筆頭様から非公式の頼み事って何かと思ったら、若い狐の護衛って。しかし詳しく訊いてみると、やはり俺が行くのが縁なんだろうな。異世界って、あの銀狐・・・今は陽子って名乗ってるんだったな・・・と関わりのある話だった。去年あいつらが化け獣と戦って守った村。それが今年は魔物の群れに襲われそうになり、それから守る策を考えようというのだ。村のあたりと魔物が襲来する道筋の地形を見て戦術を組み立てるって、それができれば失敗を減らせる。俺は前の時は情報不足で無用な被害を出してしまった。もう今度はあんな事にはさせないぞ。


 それで護衛する若いのって、筆頭様配下の外国生まれの狐だった。獣退治の一件のあと、大神の意で向こうの調査にあたったのがきっかけで銀狐たちと付き合っているらしい。魔物襲来の話を聞いて対策を手伝う約束をしたという。自身は戦う力が無いが、戦いの準備と策略で役にてる事があると思ったという。そのとおりだ。獣や魔物は災害と同じ。少数の精鋭の技だけでは防げない。知恵を絞り準備を重ね、裏側で支える者の働きが趨勢を決める。しかしその事に気づく者は多くはない。

 向こうはそろそろ雪解けなので、早目に下調べに行こうと休暇の許可を貰おうとした。そこで筆頭は、慣れない者が護衛無しで獣の出る山中へ入るのを心配して俺を呼び出したんだな。まあ、山歩きも久しぶりだから、気楽に行くとしようか。


―――――――――――――――――――――――

≪英国狐のジミー君≫


 帰り道で考えたことは、防衛拠点と阻止線の設定。それには想定エリアの地形を把握する必要があります。でも、向こうにはきちんとした地図が無いんですよね。魔獣の暴走が始まれば状況は刻々変化します。これを追って戦術を調整するには正しい距離が必要です。魔獣の進行の予測には道幅や谷の様子が変数になります。うまく使えれば魔獣の進行をコントロールできるかもしれません。

 問題は残された時間と使える人的リソース。やるならボクでしょう。きちんと測量して地図を作るのは無理だけど、谷の全体を踏査しておおまかな作戦図を作るぐらいなら、村の誰かに手伝ってもらえば1~2週間かかればできると考えました。

 上司に休暇のお願いと許可を貰いに行くと、こういった事に詳しくて腕の立つ者を護衛に付けると言われました。ありかだいけれど、やはりボクの戦闘力が低いのが気がかりなんですよね。仕方ないけど、ちょっと悲しいです。


 そして、来てくださったのがあの黒犬の神事の時にお会いした灰色狐の『ソウ』様でした。昔の陽子様の同僚で、ものすごい土術の遣い手で、筆頭様の戦技のお師匠様。ソウ様の御名前は、陽子様と一緒に信州から関東に来た頃に付けられた尊称が元だそうです。火炎で薙ぎ払う『銀槍』~陽子様ですね~と土を操って弾き返す『蒼楯』と。熊の魔物とその妖気を受けた獣の群れから村を守ったんですよね。


 どうやって地図作りするか。ドローン飛ばして谷の上空から撮影すれば簡単・・・と思ったけど、あっちはGPSが無いのでドローンを飛ばせないんですよ。やはり地道に足で歩いて距離と方位から三角測量するしか無いですね。魔獣は谷を進行しますから、まず谷の要所にポイントを設定して、山腹から観測して位置を求める。あちこち伝手を頼ってレーザー距離計の付いたトータルステーションを借りれました。パソコンにデータ送って3Dマップ作成までできる高級品ですから、壊したら大変です。(電源が無いので、向こうでパソコン使えないのが残念です。)



 山歩きの装備を背に、ソウさん(様呼びするなと言われました)と一緒に黒犬村へ行きました。村長さんに挨拶して、誰か手伝いを頼めるか相談していると、男女のエルフさんが通りがかりました。長老の用事で猫人村へ行った帰りだそうです。男性のタホンさんは火の魔術遣いで、女性のニーラさんは探索者といって山のガイドのような役だそうです。ボクが谷の立体的な地図を作ろうとしていると話すと、そのニーラさんが「上から見た様子が知りたいんだよね。それで、たしか『ムービー』って言うんだよね~動いてる場面を記録できるの、あれを谷の上に持って行けたら役に立たないかな?」と言ってくれました。エルフ村には大きな鳥を使役している方が居るのだそうです。ニーラさんが明日その方を連れて来てくれるというので、甘えることにしました。


 その日は犬人村近くの谷と街道のあたりを測量することにしました。防衛計画では、この黒犬村と対岸の大犬村の間の広い河原が殲滅戦闘の予定地のひとつです。

 冬の間に作業したのでしょう。黒犬村と川沿いの低地との間に土塁ができていました。土塁の下が溝になっているのを見たソウさんは「谷の奥からここまで傾斜はどのぐらいかなあ。溝を拡げて水を流せないかな。」と。見通しのよい位置に機械を据えて、距離と方位と俯仰を方眼紙にプロット。上流側の白牙村のすぐ下を通って黒犬村の下まで、やや緩く流れるぐらいの勾配で水路が作れそうです。「ならば、谷の奥に堰を造って水をこっちに回せば獣除けになる。川の水が少なくなれば河原を通る獣が増えるだろうし。簡単な水路なら俺がやればすぐ造れるさ。」 さっそく村長さんに話して許可を貰いました。ボクが測量して溝の深さを指示しながらソウさんが土術で土を凹ませて固めて。話に聞いていたよりも遙かにすごい妖術です。ユンボよりずっと速いです。昼食と午後のお茶に休憩したほかは黙々と作業して、日が傾く頃には立派な幅1.5mぐらいの水路ができてしまいました。


やはりエルフさんが出演すると話が長くなるみたい・・・

2部に分けました。内容はひと続きです。


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