[1.5]
頭の中で物語は進んでるのに文字に起こしてない…何故だ……書きます……
ーーーー声が聞こえた。
どんな声音か、どんな言葉か、そんな事は何もわからないのに、自分が呼ばれている。その事を切に実感した。
嬉しそうで、悲しそうで、喜びに満ちていて、苦しみに喘いでいた。
――ずっと待っていたの――
声は俺に出会えた嬉しさを示し
――でもすぐにお別れ――
声は俺との別れの悲しさを示し
――これでセカイの願いが叶う――
声は願いが叶う希望の喜びを示し
――君の幸せを代償にして――
声は俺に代償を与えた苦しみを示した
目は開かず、それどころか身体の感覚はない。
あの静謐な命のないジャングルに飲み込まれたみたいに、全てが無で、そのくせ、とめどなく思考だけが流れていく。
思考は右から左へたれ流され、頭の中は空虚で声の言葉の意味は意識にのぼらない。
途中から語りかけるように独り言を呟くように聞こえていた声は何かを唱えるように変化していたがそれすら深く意識できなかった。
海面に体をたゆたえ午睡に微睡むように時間の感覚すらあやふやのなかで、
――ごめんね――
随分久しぶりに聞こえた声の意味に意識を巡らせるより早く、
――これは天啓――
『ソレ』はやってきた。
今まで俺が浮かんでいた、存在していた、周りを包んでいたものは、なんとなく、白だった。
今流れ落ちる滝の瀑布のような荒々しさを持って、意識の網膜を焼き尽くし、俺の身体を蹂躙する。
ただ、感じ取れたのは色だった。光だった。
俺の身体に喉はなく、衝撃に声を上げることは出来ず。
俺の身体に自由はなく、身じろぎ一つ動くことは出来ず。
ただ、ただ色と光の奔流に呑まれて、揉まれて、それが伝える感情に心が壊されるような、口から身体の中身を全て吐き出して吐き出してそれでも足りないようなこの気持ちはどう表せば良かったんだろう。
俺は色に光に蹂躙されて何も考えることなんて出来なくて、永遠にも思える長い間この空間をたゆたっていることが何度か意識の淵に引っ掛かり、光に流されていった。
聞こえたかも、気のせいかすらもわからないけれど、
どうか、心を叶えて…と
そんな言葉の残響が耳に残って、俺は消えた。