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シラディーナの憂鬱 共通①

「久しいな」

彼は昔から公爵家の出であり同じ公爵家の私と親しくしてくれた。

人望のある非の打ち所のない尊敬出来る人。

わたしは、そんな彼の事が好きだ。


あとはこの伯母が余計なことをいわなければすべてうまくいく。



「いい話だとは思いますが、あまりお奨めは出来かねますわ」

この伯母は彼を自身の娘で、私の従妹に当たるゴーマリーを仕向けようとしている。


絶対に許せない。


「お恥ずかしいながらシラディーナは昔幼馴染みの平民に求婚してフラれてますのよ」


この女狐め、そんな話はない。

平民に幼馴染みなどいない。


「あらあらどうしたのシラディーナ」


「なんでもないわ伯母様ほほほ」


伯母め―――気弱なお父様の姉とは思えないほどの傲慢っぷりがにじみでているわ。


どうやって彼を勝ち取るか。

正攻法で迫るか、ゴーマリーを消すか、なにもせず更なる良縁を待つか。


常々そんな物騒な想像が頭をよぎる。

しかし、感情より理性が勝る。

邪魔だからと、そんなことをすれば、確実に足がつく。

先を考えて、穏便な生活を送るためには不用意な動きを見せてはだめだ。


―――あれから一月が経つ。


ゴーマリーが先に婚約をこぎつけたのだが自ら破談にしたという。

私が憧れの彼と結婚出来ると知りそれからというもの私はとても嬉しくなり毎日のように喜んでいた。


それから挨拶の日に、ドキドキしながら戸を叩くと客室で待っていたのは私の両親と相手方の両親。


愛しの彼の姿がない、一体どうしたのだろうか。




不思議に思っていると―――


「お前も来たね」

父が私に気がついて手招きした。

「御息女ですか、どうぞ」

私は言われた通りソファに座る。


「この度は実に申し訳なく思っております」

突然相手方のお父君、お母君は頭を下げた。


―――残念、それはどういうこと、まさか婚約はなかったことにされたの?


「わたくしは何か至らぬ点がありましたでしょうか…!?」


「息子は死にました」


顔も知らない相手と結婚、それは貴族の宿命だ。


初めは不安で仕方なく、覚悟するしかないかとも思っていたが一目で惹かれた方だった。


彼より良い殿方を見たことがないだけかもしれないが。


私は扉を開く、しかしそこに相手の男性の姿はなく、ただ頭を下げて泣いている相手方の母親と、相手の父親に頭を下げられている私の父が。

婚約相手はどうしてここにいないのか、その時の私はまだ知りもしなかった。


「え!?うそでしょ!?」


結婚が決まっていた男が崖から落ちて亡くなったらしい。


恥になるから死は隠されるとのことだ。


二つの意味で衝撃を受けた。



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